「ご機嫌斜めな風見鶏」(草稿)

冷めかけたコーヒーから微かに煙る白霞、先代に捧げた線香との連想
醒めかけた幼児の夢のまにまに、大画面を乱す無数の走査線が安寧な睡眠を破壊する
幾つかの白い筋が中空を漂い、季節の風は大草原に広がる
ふと私ではない誰かのためらい顔が窓越しに映るのを目にする
時代の境目に舞い降りた預言者が激動の現生に押し流される
空の裂け目から送り届けられる閃光が今きらり、一瞬のシャッターチャンス
涙目の老婆の心に染みる岩雫、頑なな思いは誰の妨害も受けない
実像ではなくて虚像、そんな聞き飽きた古ぼけた言葉が腐り果てる今日
誰かの心にだけ響く永遠の孤独を歌う声が街を埋め尽くす
衆人は何事もなかったように安酒に身を任せ酔狂する
クルリと身を反転させ、人間世界にサヨナラを告げるのも無理はない
二人語り合った明日を先回りして未来を少しだけ透視してみる
昨日の敗北は景色をモノクロームに彩る、一面の銀世界が広がる
過ちたるものを過ぎ去った過去と処理した証、誰もが身に覚えのあること
もう一度半島の先端に立つ少女のまぶしい姿と重ね合わせて問い直してみないか
千本木が渦を巻くように屹立する林の中で天空に思いを馳せる
今日が明日が未来に溶け込んでいく間に蒸発した成分はあるべき場所に戻っただけだった
銀の皿を回し、金の盃を頭上高くに掲げては
今まで生きてきた自分を無理やり肯定して明日来るはずの闇を薄明りに変える
それが人の人生、私もあなたも
複雑を単純化し今日を永遠に続けゆく友よ、君が帰る場所は自らの足元しかないのだよ
空の声が地に届き、雲の足音が軽やかに響き渡る今日の空中散歩
自分の愚かさになど気づくには幼すぎ、自分の醜さになど気づくには年老いすぎた今日この頃
風が薫る

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