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天体観測

多くの葉をまとった大樹よ
しなびた花びらを手放したまえ
忘れてしまえ、季節を外れた色なんて
すべてが地面へ向かう秋だから
緑から赤、黄へと色を変えて
落としてゆけばよいのだよ

紅く色づく大樹の葉
わたしのふるえる指先が
あなたの枝先に振れたとき
涙が止まらなかったのはなぜだろう

目に見えない悲しみが
先端から伝わって
わたしの心を凍らせたから?

あなたの頂部が差す先にある
あの星の大地は限りなく広いこと
私は知っている、そして
この星のいのちが残り少ないこと
誰もが気づいている

企てている、誰もが脱出を
行くべきか、残るべきか
いずれが正しいかもわからず
今日もまた日が暮れる

私はずっとこの星で暮らしてきた
こうやってひっそり年老いて
いつかひとりっきりになったら
あの星が廃れゆくさまを
見届けることになるのだろうなぁ
この星が安泰である限り

水が流れるがごとく
あの星に人があふれて
光が差すほうに誰もがもがいて
その暖かなぬくもりの中で
微笑みながら消えていく

それでよいのかもしれない

大樹は勇壮に立って
この星に300年間
どこへも行かず
この大地を踏みしめる
私は大樹と一体になって
いつか動かぬ化石となって
この星の最後の住人になるのだろう

今、目の前をまた別の星が
昨日までの隣人を乗せて流れていった
空を舞う鳥達は鳴く
さみしや、さみしや
私の心も連れだって泣く
さみしや、さみしや
大樹が私のちっぽけな体躯をつよく抱きしめた
このまま大樹が私を取り込んで
私はその一部になってしまえばいい

包み込む外気が呪文をかけ
私たちはひとつになった
そうして、
いつまでもあの星をともに指差す
今やたくさんの人がにぎわうあの星は
この星を離れられない私たちの憧れなのかもしれない

目を凝らせば
あの星で生きる我が子たちの姿が見える
それだけで十分だ、それだけで
大樹と化した私はこの星の最後の住人
何も求めず、毎日ただただ星空を見上げるのだ

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