「だんだん」

行き交う人々の笑顔を数えてみたり、吹き込む風の色を感じてみたり。いま時は流れて、風は私という物体を避けるから、逆に私のほうから風に身をさらしてみよう。

ああ、やわらかな空気の流れ、連なり

そして目を凝らすと空の遥か彼方に鳥達が未来を描く。私はあんな風に自由になりたいなどと戯言を重ねては、まだ見ぬ季節の訪れを待ちわびる。足元でざわめく落葉の一枚一枚。丁寧に拾い上げてふっと息を吹きかけ空に飛ばす。数秒間の空中飛行。

ああ、ゆるやかな時の流れ、重なり

路上に映る黒影が伸びてゆく。だんだんと私が見えてきた。だんだん、だんだん。


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