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すり抜けた光の尾

立木の緑葉が両瞼を閉じた
しなる幹、うとうと枝振り
頬をくすぐる微かな光の粒
視線の主を探すも空の彼方
夜空さえまぶしさに彩られ
揺れながら、彷徨いながら
輝く漆黒の海に木精は漂う

星々が目に映らぬ速度で
碧の夜空をゆるりと回り
その位置を大きく変えて
もはや目に見えない境に
身を置いたはずの太陽が
巡り巡りて我らのもとへ

そしてひぐらしが鳴く頃
うっすらと、うっとりと
降り注ぎはじめる陽光は
舞い踊るようなリズムで
幾千通りの旋律を奏でる

皆の者、目覚め、目覚めよ

訪れる朝、そして光
手のひらの上でたたずむ朝日
数え切れぬ光の粒を握り潰し
すり抜けた筋が尾を伸ばして
無限かつ永遠の時の海を泳ぐ

木精は大樹の陰に身を隠して
不都合な情景から目を逸らし
暖かな陽だまりに身を埋める
そして、
誰もがこの暁に遭遇して抱く既視感
何度も巡りくる朝
年輪に深く刻むも
忘れ去りし幼少期
木精は、
失われた記憶を新たに紡ぎ
わかりはじめた未来を拓く

そんな風にして生きてきた
そんな風に生きていきたい

光の粒が舞う
光の筋が差す
光の尾が伸びる
光と影が揺れる
光の色を描こうと
光線が指し示す先へ
からだを差し出し
時を追い越せぬものかと
愚かな思案をして
木精は
彼方の太陽を眩しく見上げる

手をかざし
すり抜けた光の尾
私は
視線の先に
遥かなる永遠を見たのだ

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