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夜を一緒に過ごす人

こんばんは。今日もお疲れさまでした。

彼は奥さんを1年前に亡くした人でした。

「実家に帰って来たから、そろそろ恋がしたくて」

彼とは昼間のビアバーで会いました。マッチングアプリで、ビールを飲む約束をしたのです。奥さんを亡くした事は知りませんでしたが、過去に結婚していた事は知っていました。まだとても小さいお子さんは、彼の両親がみてくれているのです。

結婚を望んでいる訳でも、セフレを探している訳でもない事は、彼と話していてよく分かりました。いつも誰かと付き合う時は、こんな感じに気が合うポイントをいくつも見つけて、居心地の良い場所だと確認をするのです。

しかし、私の求めているものは違いました。誰かと付き合うことも探してはいましたが、それは光るような恋の予感が必要でした。

彼の手を今握れば、彼は私の手を恥ずかしそうに握り返してくれるでしょう。そして、付き合って、何度かデートをして、恐る恐るキスを試みるのです。それは、私の求めている愛の形ではありませんでした。

今すぐ愛をくれて、それを私が受け入れるかを、私が自分で見極めたいのです。居心地の良い場所より、吊り橋の上でもキスができるかの方が私には大切でした。

「まだこれから会う人がいるの。だから、あなたと今日付き合う事はできないわ」

「僕はあなたに今日決めても良いのだけど」

「たくさんの人に会ってから、私を決めて」

彼の左指には、もう指輪も指輪の跡もありませんでした。でも、彼の奥さんは私をきっと認めないでしょう。私には彼を受け入れる手を持っていませんでした。

彼は2度と私に連絡を寄越しませんでした。きっと、ちゃんと誰かを見極められたのでしょう。

彼の夜は彼のものです。彼はお子さんと夜を過ごさないと言っていました。それは、その小さな体が奥さんを思い出すからでしょうか?

私の夜は私のものです。私の夜は、私の小さな恋人と過ごすと決めているのです。今夜も私の小さな恋人は私の腕の中にいます。彼と夜を過ごす事はできないのです。おやすみなさい。





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