銀座の女性と過ごす夜

こんばんは。今日もお疲れさまでした。

その女の子は、銀座のクラブでキャストをしていると言いました。モデルのような美しいプロポーションと、綺麗な顔をした女の子でした。私はその頃バニーガールをしていました。昼間の仕事で彼女と出会い、その約束をしたのです。

彼女のお客さんたちと、彼らの経営するお店でご飯を食べる約束をしました。お客さんは二人いるから、数合わせで呼ばれたのです。

彼女は、ブランドものの靴や鞄やアクセサリーを身につけていて、それが実によく似合いました。私は、そういったものは持っていないので、自分の中でそれなりの格好をして行きました。

彼女のお客さんたちは紳士的で、話の面白い方々でした。ゲスな下ネタを言うわけでもなく、難しすぎる話をするわけでもなく、私たちを楽しませようと色々な話題を振ってくれました。

彼女は淀みなく、嫌味もなく、全てを卒なくこなす素敵な女の子でした。私はその横でただ微笑むのがいっぱいいっぱいでした。

食事が終わり、銀座の会員制のミュージックバーに連れて行ってくれました。薄暗い店内はそれほど広くなく、男性と女性のペアでシートに座ったのですが、お互いの太腿が触れるほどの距離でした。

狼狽る私が、彼女をみると背筋を伸ばし、男性に肩を抱かれながらも、顔を赤くすることもなく楽しそうに笑っていました。きっとシンガーについて、色々質問しているようでした。所在なく、ピーナツの数を数えている私と、堂々と振舞う彼女とは、全く違う世界で生きているのだと心の底から思ったのです。

男性たちはそれぞれのペアで、ハイヤーを呼んでくれました。車の後部座席に二人で乗り込みます。彼は運転席の後ろ、私は助手席の後ろに座っていました。他愛ない話をしながらも、私はウサギのように怯えていました。男性はそれを見越したように笑いながら「とって食べたりしないから安心して」と言っていました。

恥ずかしいと思いながらも、彼女はきっと今も、男性の横にピタリとうまく座っているんだろうと想像しました。

次の朝、仕事に行くと、彼女はすでに席に座っていました。「おはよう」とにこりと笑っていました。でも、すぐに私はあの夜を失敗したのだと分かりました。彼女はそれからいつも言っていた言葉を言うのです。

「そんなんじゃいい女にならないよ」

あの街の女性たちは、きっと彼女のように綺麗な人ばかりなのでしょう。どう振る舞えばいいか分かっていて、それを卒なくこなすのです。

今ならピーナツの数を数えなくても、ハイヤーに二人で乗ったとしても、指で彼らの腕に触れるくらいのことはできそうです。でも、銀座の女性にはまだなれそうにはありません。あのゾクゾクとする色気はあの街でしか身につかないのでしょう。

夜の銀座にはしばらく行っていません。私が彼らの年齢に近くなったら、またあんなミュージックバーへ足を運んでみたいものです。おやすみなさい。

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