悪い夜と奇跡を起こす人
こんばんは。今日もお疲れさまでした。
最初、彼女が何を言っているのかよく理解できませんでした。彼女は、専門学校の同級生で色白ですべすべの肌を持ったふくよかな女性でした。少女漫画が好きで、誰かと恋におちることを夢見ていました。
彼女に好きな男性ができたというので、20歳前後だった私たち仲良しグループは盛り上がりました。彼女の好きな人はバイト先で出会った、同じ年の男性でした。でも、彼にはガールフレンドがいました。
話を聞いていると、彼は、ガールフレンドがいるにも関わらず、私の友人の彼女にちょっかいを出しているように思われました。「好き」などの愛の言葉を彼女に伝えないのに、彼女の部屋に来てキスをして体を重ねました。それは彼女の初めての経験でした。
その翌朝、彼女は彼に朝ごはんを作って送り出しました。それからも彼女は、彼がお腹が空いていると言えばご飯を作り、服を洗濯し、家に何度も泊めてあげていました。彼女は、昭和の妻のようなその献身的な行動を喜んでいるようでした。
彼女が喜んでいるなら、まあいいかと思っていましたが、事件が起こりました。彼がガールフレンドと一緒に彼女の家に転がり込んできたのです。何か複雑な事情があったのでしょう。私なら、どんな理由があれ、そんな男性を家にあげることはしませんが、彼女は受け入れました。
毎晩毎晩、2段ベッドの下から、二人の睦み合う声が聞こえるそうです。それでも、彼女は耐えました。どんなに眠れなくても、朝には彼女は彼らに朝ごはんを作るのです。
私たちは、彼女にその彼と離れるように、何度も何度も伝えました。でも、彼女の意志は変わりませんでした。昼に作業をしている間も、彼女はずっと泣いていました。それでも彼女は、それに耐えました。
私は呆れていました。彼女のことを1ミリも理解することができませんでした。その後も彼女は彼に酷い目に合わされている様に私は感じていました。
そんな事が何度もあった後、彼女は結婚しました。結婚相手は、私が酷いと思っていたその彼でした。彼はガールフレンドと別れ、彼女と結婚したのです。
二人の間がどんな風だったのか、私は実際に会って二人を見た訳ではないのでわかりません。でも彼女は、今も彼と一緒に住んでいます。SNSにアップされる彼女の家庭はこの世界で一番幸せだという様にキラキラしています。写真で見る彼も、とても素敵な旦那さまでした。彼女が世界を変えたのかもしれません。
これは奇跡かな?とたまに思うこともあります。でも素敵な奇跡なので、今日も安心して眠れそうです。彼女の娘ちゃんの笑顔は人を幸せにしてくれるのです。おやすみなさい。