夜のマッチングアプリには嘘がある
こんばんは。今日もお疲れさまでした。
彼から連絡が来なくなりました。彼は、マッチングアプリにちょっと疲れているのです。そもそもマッチングアプリで出会った私たちですが、この遊びを開始して1年。考えるところがあるようです。
彼はこれまでとても真面目に生きてきました。硬い仕事につき、沢山の友人に囲まれ、沢山のアクティビティを体験し、結婚していました。
結婚に終わりを告げた彼は、マッチングアプリにハマります。誰とも付き合っていないから、色んな人と体を重ね、色んな人に愛を優しく囁きます。攻略が難しい相手もいます。そんな彼女から吐息を引き出せたなら、それは彼の一番のご褒美になります。
年上もいれば、年下もいて、遊び慣れている人も、本当は誰かと付き合いたい人も、私のように頭のおかしい人もいます。
一人一人に少しでも気に入られようとリサーチを続け、最高のパフォーマンスを目指すのです。
それでも、時には裏切られます。アプリと実際の見た目が違ったり、話が違うと幻滅されたり、急に会いたくないと言われたり、用ができたと言っていたのに、それは他の男性との逢瀬だったりと色々です。
この遊びを開始した時は、そんな事もエキサイトしていられましたが、今ではただの虚しさが彼の中を過るのです。そんな事はよくある事だよと、私が慰めたところでそれは私の言葉でしかないのです。彼が納得するべき理由ではありません。
私は彼の舌先に身をくねらせながら、彼の悲しみを思い出します。
この遊びはほんの少しのスパイスだからいいのかもしれません。きっと、長く続ける人はどこか壊れているのです。彼はまだ引き返せるのかもしれません。誰とも付き合いたくなくても、温もりの求め方はきっと他にもあるはずだから。
彼は今少し休んでいます。夜のマッチングアプリには嘘がいっぱいあります。それを知りながら、その世界の憂鬱さを愛おしいと思う私は狂っているのでしょう。憂鬱を彼とたまに共有します。そして答えのない答えを私たちは求め続けるのです。彼とドライブして迷い込んだ高速から、私たちはまだ降りられていないのでしょう。ハイスピードで景色は過ぎて行きます。私たちは明日どこに着いているのでしょうか?十五夜を眺めながら、考えます。おやすみなさい。