彼の誘いを断る夜
こんばんは。今日もお疲れさまでした。
あの日、私は彼とデートしていました。2回目のデートでその日彼が何度も「今日はずっと一緒にいてね」と念押しする意味がわからず、ずっと「?」を頭の上に置きながら彼とずっと手を繋いでいたのです。
夕方にお酒を飲んで、フワフワとした気持ちで、彼に手を引かれながら、歩いたこともない場所を進んで行くとビジネスホテルが現れました。彼はまた念押ししました。
「今日はずっと一緒にいてね」
頭を少しずつクリアにしながら、ロビーのソファに座っていて、急にその意味を理解しました。私はその場から逃げ出しました。
ただ、土地勘のない場所で頭もフワフワしていたので、側に遭った小さな公園で休んでいました。彼からは何度も電話とLINEがひっきりなしにやってきます。そして、また頭の中をぐるぐるします。急に大人げない行動をしたと思い、彼の電話に出ました。
「私、あなたの誘いにOKした覚えはないの」
彼は電話口の向こうで少し怒っているのがわかりました。きっと「ここまで着いてきたのにそれはないだろう」と思っていることはわかりました。でも、私はここ10年以上、結婚していた時期はあるものの恋愛も、そういう雰囲気も経験して来なかったのです。彼はその事を知っていました。
彼は、グッと本音を押し込んだ声で言いました。「ごめんね。こちらが悪かったよ。もうしないからどこにいるの?」私は、ホテルのすぐ側の公園にいる事を伝え、彼が迎えに来てくれました。
彼は、我慢していました。それを強く握られる手からひしひし感じました。それでも、私たちは大したことも喋らずに、30分以上かけてどこかの駅に向かって歩いていました。それは、あまり通ったことのない上野駅の周辺でした。
もう夜になっていました。ほのかに寒さを感じるまま歩いていると、彼がジャケットをかけてくれました。それは優しさでもあり、他の意味もありました。彼はジャケットをかけた服の下の私の体を触っていました。そして、思い立った時にキスをしました。
「誰かに見られたらどうするの?」「こんな街の中で、自分たちの事を見ている人なんて誰もいないよ」
そんなやり取りを何度となく繰り返しながら。
駅に着いた私はホッとしていました。彼は、おかしそうに「もう1周する?」と笑いながら尋ねました。私は首を激しく振って、二人で電車に乗りました。
私は後日、彼とホテルに行きました。そこから、私は、彼の手を振り解くことはありませんでした。彼が本当に私に愛想を尽かすその日まで。
あの夜の道をもう一度歩く事はできません。きっとあの道は彼にハマるための不思議の国の入り口だったのかもしれません。彼はウサギでチェシャ猫で私は真実に迷っていたのです。私が最後に出会ったのは、ハートの女王ではなく大きなパンダの像でしたが。もう不思議の国には迷い込まないことでしょう。おやすみなさい。