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彼が狂わされた夜

こんばんは。今日もお疲れさまでした。

その夜の私はもうかなり出来上がっていました。仕事終わりにいつもの同郷の仲間との飲み会。何度参加したのかもわかりません。同郷のメンバーを見つけたと飲み会のメンバーはどんどん増えていきました。

彼は、その飲み会で初めてあった男性でした。自信がある皮肉屋で、高給をもらう仕事をしていました。彼の収入は、誰もがわかる時計や、仕立てのいいスーツですぐに分かりました。

私は、その季節、とてもモヤモヤして毎日を過ごしていました。20代後半とは、世界で一番輝いていると思っていました。しかし、私のその時代は、夫に女だと認識されていないのに、妊娠しにくいと判明している体。その二つに絶望していたのです。夫は協力してくれます。それはあくまで協力でした。彼は私ではない誰かをいつも考えていました。

飲み会でかなり飲んでいた私は、どうでもよくなっていました。どうでもよすぎて、皮肉屋の彼に囁いたのです。

「もう抱いて欲しい、今すぐに」

周りのメンバーはすぐに私と彼を引き剥がしました、彼らは、私が今そんなどん底にいることを既に知っていたからです。「飲み過ぎだよ」とか「ちょっと今日彼女飲んでるから」とフォローを入れながら、私にお茶を飲ませてくれました。私はお茶を飲んで、帰ることにしました。

次の飲み会に、皮肉屋の彼の姿はありませんでした。彼は、私に囁かれてから勘違いしたのです。あの後、同じ飲み会にいる女の子にホテルに行こうと執拗に迫り、この飲み会を出入禁止になったのです。

私はお酒を飲む前にそれを聞いたので、絶句したのです。なぜなら、最初にそのおかしなことを彼に吹き込んだのは私なのです。初めて参加した彼に、私たちの飲み会はそんなノリだと勘違いさせたことを深く反省しました。彼に迫られた女性も怖い思いをしたでしょう。

でも、誰も私を責める事も、出入り禁止にする事もしませんでした。彼らはずっと優しく親切に私に接してくれました。

あの飲み会ももう今ではありません。あの時の私は、ある意味世界で一番強い私でした。誰かに寄り添う事もなく、強がりで生きて行こうとしたのです。彼はその強がりが読めず、言葉だけを受け取ってしまったのです。

言葉は少しで誰かを狂わせます。それがたった酔っ払いの一言でも。お酒も飲まず、平日の夜を私は今日もゆるりと過ごしています。そろそろ眠りの時間です。おやすみなさい。

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