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耳と堕ちない夜

こんばんは。今日もお疲れさまでした。

愚痴をこぼすのは好きではありません。それで何かが解決できる気がしないのです。それでも、誰かの愚痴を聞くのは好きなのです。その気持ちは私だけではないと安心できるからです。

彼らと会う時も愚痴はこぼさないようにしているのです。仕事の話をする時も、それはあくまでポジティブな感情か、情報交換か、それに伴う疑問の解決に止め、そこにマイナスがあるようにはしないのです。

ただ、彼と会うと、気づけば愚痴をこぼしています。彼がそれを聞き出すのが上手なのでしょう。否定をせず、私は心の中にあるものを一息で話し出してしまいます。何かの薬を飲んだように、それらは言葉になって出ていきます。

いつもしまったと思うのですが、彼はそれを面倒臭がる訳でもなく、それに触れる事もなく、でも忘れているようでもなく、ただその事を受け止めるのです。

私が一息で吐き出すと、彼はそれを一度受け取って、私を抱きしめます。可哀想という訳でもなく、ただ愛おしそうに、耳に唇を押し当てます。それは、狡いなと思いながら、気づけば彼の手の中に私は堕ちていくのです。

夜中に、いつも「しまった」と思います。それは、愚痴をこぼした事なのか、彼を狡いと思った事なのか、弱った私が彼に惚れそうな事なのか、全てを一つ一つ問い質し、耳を掻くのです。きっとそこに跡をつけることなどできないことに感謝します。その跡を見つけたら、何かを見つけそうで、知らん振りをします。

ピアスの小さな硬い穴を今夜も確認して、彼の手の中にいない事に安心しながら、眠りにつきます。おやすみなさい。


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