遺しかた
ある人は「自分が忘れない為に記憶を遺したい」と言った。
またある人は「他の人に伝えるために形で遺したい」と言った。
そしてある人は「何も遺したくない」と言った。
形が残らなかったから形のないものを集めて遺すしか無いのだと嘆くその人に、彼は「形が無いのなら、新たに形を創れば良いのだ」と言った。
なるほど、無ければ作ってしまえばいいのか。
彼女にとって「創る」という発想は無かった。
なぜなら、その技術と能力を彼女は持ち合わせてはいなかったから。
彼女は思った。
私の「遺しかた」と彼の「遺しかた」があわされば素敵なものが出来上がるのではないか。
できるとは限らない。
でも、もし完成したとしたらどんなに素晴らしいものができるのだろう。
楽しみだな、なんて思う。