食べ塾95:支援先で出会った串揚げ店の感動店主のお話です
ある県のお店です。場所と店名はご容赦ください。今年の春のことです。
プラットホームの機関の担当者の方から、
「売上が上がらないし、経費の仕組みがおかしいので支援してください」というオファーでした。
<そのお店の店主の方はこんな方でした>
1,本式にちゃんと料理の勉強をしている方
もともとは親が飲食業をされていて修行という形で調理を勉強してきた。親が高齢になったのを機会に帰郷して、自分で新たに飲食店をしたいと
考えてコロナ期の1年前に開業した。
2,最高の鮮度と品質でお客様を大切にもてなしたいと考え実行した方
私も数年間はコンサルの傍ら二毛作で18時~鶏料理居酒屋をしていたことがあります。この方は私よりももっとすごく、「毎日仕入」をして
「鮮度維持=最高の美味しさ」の提供のために仕入れに半日かける熱の入れようでした。
●鮮魚 活魚を現地買い、漁師買いする。
●野菜 産地と栽培農家までこだわる。しかも野菜別に異なっている。
●鶏 銘柄鶏で鮮度にこだわり。だけど鶏刺しメニューはないお店。
●豚 銘柄豚で鮮度と美味しさにこだわり。豚バラのみ。
この投稿を見られた方は、どんな高級店でどんな立地のお店か?と
思われるでしょうね。
この方のお店は商圏人口5万人くらいのエリアであり、業態は串揚げ店です。串揚げ店ですが、居酒屋的なコースがメインになっていました。
まるで原価率コントロールの効かない「飲み食べ放題店」的な料理の
あり方でした。立派な食材群の価値が適正価格で提供されていませんでした。
3,本当に心から食材(素材)を自分の子供のように大切に考える方
会話の中でこんなことを経営者の方からお聞きしました。
●私 「串揚げの野菜は結構早く出せて儲かるでしょ」
店主「前もって野菜を切っておくと鮮度が落ち、切り口からえぐみが出る
から、注文があってから切るので、料理が遅くなります」
私 「凄いですね。そこまでこだわっているんですか!」
帰りがけに腕のやけどを見て、
●私 「やけど、どうされたんですか?」
店主「活き〆の烏賊を処理して皿に置こうと思っていたのに、間違って
フライヤーに投げ込んでしまい、烏賊がはじけて油が飛びました」
「(その時に)烏賊さんごめんなさいと思った。」(*ドキッ!)
*烏賊刺しで役目を果たす烏賊を使い物にならなくしてしまった
ことを思いやっての愛すべき店主さん言葉でした。
40代の方の言葉とは思えない程のメルヘンチックな感動言葉でした。
■1番目の支援のポイント
飲食店の原点に返った考えを確認すること
数字的なことはあまり得意でない感じがしましたので、食材原価率を
35%以下にしたメニューで営業してくださいと言うと共に、
「仕入れた食材の3倍掛け」で売価をつけてくださいとお伝えしました。
元々の飲食店の原点は、プロの料理を、客席空間で、料理や飲料のサービスをしてもらうという「付加価値」込みの売価で成り立つ仕組みです。
でもこのお店の場合は、
「いくらで仕入れたものがいくらで売るべきか」の基準が全くなかった
のです。
ただただ、お客様に喜んでもらいたい、喜ぶお客様が増えてほしいの一念で
買い出しを命を賭けて毎日長距離運転で行っていたのです。
➡適正利益を頂くことでお店が存続できて、商品とサービスも継続できます
と説明すると、快くうなずいていただけました。
*値上げ自体が悪いように受け取られている風潮もなくはありませんが、
商品の値上げノウハウもお店の成長ノウハウなのです。
値上げはカニの脱皮と同じです。何度も繰り返されます。
■2番目の支援のポイント
無理なく楽しく売上を上げようと考えること
創業時のお考えにひとつ間違いが入っていました。それは、
串揚げ業態と串焼き(焼鳥)業態の違いのことです。
●串揚げ業態・・・女性、子供が好む・・・昼業態向き飲食業態
(*簡単に、串揚げは女性メニューと覚えてください)
●串焼き(焼鳥)業態・・男性が好む、お酒に合う・・夜業態向き飲食業態
(*簡単に、焼鳥は男性メニューと覚えてください)
串揚げで例外的に男性が好むのは、串カツ、ハムカツ、ニンニク串揚げ
砂ずり串揚げなどです。
この方は、串揚げも串焼きと同じように男性が好むと考えたようでした。
<発想の転換>
1,良いものでも安く売る➡良いもので努力している商品は適正価格で売る
2,売上を上げるために、夜業態だけにとどまらず、仕入れ業務の組み換え
をして時間を作り、➡串揚げの昼営業を始める
・ママ友ランチ
・ママ友ファミリーランチ
・お子様のお誕生日会
*はじめは予約営業から始めてから常時営業に切り替えてゆく。
自店のチラシ製作とポスティングで販促してコストをかけない。
3,好きなものを売る➡値上がりしても利益が出る食材をメインにする
このお店は、高い順に鮮魚、和牛肉、銘柄豚肉、銘柄鶏肉、個別野菜農家の野菜たちでした。
これを、メニュー数の分布を、居酒屋メニューを増やすことにして、
●野菜料理と鶏料理を増やす
●魚料理は全体の20%くらいに抑える~数量限定で毎日売り切る
●串揚げメニューは食材原価率が低いメニューなので、夜の一般客が増える
と女性客が増えてくるので、居酒屋メニューの1部門として串揚げメニュ
ーも入れておく
このように視点を変えて組み替えることで、秋の食材の値上げ、来春の食材の値上げに対する「耐久力」をつけることができるようになります。
■3番目の支援のポイント
利益が増えて生活できるメニューに作り変えよう
このお店は恐らく相当な食材原価率の高さだと思います。45%とか、
50%とか?もっと高い食材原価率だと、売上が倍増しても努力に見合った
利益高にならないのではと思った次第です。
食材原価率月間平均値➡35%目安
この比率を目安にしたメニュー作りを行うことをお勧めしました。
・鮮魚 どんなに利益が取れなくても原価率40%目安
格落ち料理に落とせば原価率が60%台になります。
・牛肉 40%目安 *今後の値上がりや変動に含みのある原価率にして
価格付けをしておく
・鶏豚 35%目安(一般個店原価率)*本部費用が不要
・野菜 10%~20%
いちどきに儲からない仕組み➡儲かる仕組みに変えられるのは、
全面的に大幅なメニュー変更する
以外にありません。
このお店が「儲かってますよ」と言われるようにさらに支援を行う
考えです。
別れ際に、
「早速メニュー変えるようにします!」と元気に笑顔で言われていました。
儲からないお店ほど、変えれば画期的に儲かるお店に変身できます!
経営者の方にやる気と実行力さえあれば・・・!
飲食店主の方 もう一段階良くするためにがんばりましょう!
(了)
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