飲食店未来学:専門店化時代の幕開け3:小規模店×多店舗化が強い時代
店舗の展開範囲を見直す時代
40年前から強さを発揮して急成長してきたファミリーレストラン(FR)。一段とその仕組みが陰りを帯びてきて、もう10年以上になります。一方で、回転寿しチェーンなども全国規模で店舗展開しており、全国規模ならではの軋みが出てきています。
いま一度そのあり方の多くが時代にそぐわなくなったと感じ、分析してみました。(FR、DC=直営店、FC=フランチャイズチェーン含めて)
全国エリアをカバーする飲食チェーン店の弱点
1,食材調達力の弱体化
同業種かどうかに関わらず、日本国中で、世界で、同じ食材を調達するために弱肉強食の食材の争奪戦が行われています。買う方も売る方も戦いです。生産者も食物の出来不出来があり、取引のタイミングがあります。背景には地球温暖化による気難しくなった地球の気まぐれで、予定された食料確保ができにくくなっているためです。
ひと昔のように、同じものが、同じ価格で、同じ品質で手に入るという時代ではなくなったため、この大規模チェーンの基本形は徐々に弱体化して成り立たなくなってきているのです。世界からの食材調達が一年一年限界点に近づいている。
2,食材高騰の数か月後しか価格転嫁できない
消費者の顔を見ない食品メーカーは3か月おきでも値上げができますが、お客さまと毎日顔を合わす飲食店では、値上はせいぜい1年に1度~2度が限度です。
ですから、今回の値上がり分は次回の値上げで価格転嫁するしかありません。常に、「後手の値上げ」が基本です。
なかには、次回の値上げ率を予測をして、予備利益を数%含んだ値上げをする飲食チェーンもあるかと思います。しかし、1%ずれれば、何千万円何億円と誤差が出ます。実に難しいのです。
3,コストアップが手作り感をなくし劣悪商品を生む
20年前の全国規模の飲食チェーン店と比較すると現在は、お米や豚肉、鶏肉などの食材の高騰や、人件費の高騰、さらに電気代の高騰及び本部費用がかかる(年商の10%規模)ため、どうしても利益を出すためには、
商品原価が売価の30%以下に抑え込んだ商品しか生めない
★広域であればあるほど、冷凍・冷蔵の輸送費がかさむ。
製造工場で仕入れる食材に人件費や光熱費がかかり工場原価ができる。その原価に、輸送費がかかる。チェーン店はこの食材原価の4倍~5倍で売る使命を持った食材を購入する。
★安い食材、にせもの食材を美味しく本物らしく見せるために添加物を多用する
外国の多くのお店は本物の食材を使い、その原価に見合った売価で売る。日本の多くのチェーン店は、失われた30年間で身についた偽物料理を安く売る悪癖が身についており、これをいまだに守っています。
チェーン店の食事、コンビニの食事やドリンク、デザートを繰り返し摂取することで、不健康な人間がどんどん増える。難病も増える遠因になる。
4,輸送コストの負担大
円安や原油の生産調整が続く限り、食材高騰や輸送費高騰は、毎年続きます。今年の日銀の手腕、来年の日銀の手腕があるかないかで、日本国民が活きてゆけるかどうかが決まると考えています。
5,売上減少対策は安売りか大盛り
ネットで出てくるチェーン店の販促の多くは、若年層を対象とした「大盛り商品のデビュー、増量メニューのデビュー、ディスカウント価格での販売」がいつも出ています。
数多くのチェン店があり、数多くの本部と本部スタッフがいながら、なんでこのような能無し企画しか打ち出さないのかと思います。短期注目の話題性だけでしょう。本当の意味で本部力が試されています。
6,新メニュー開発力が弱い
飲食チェーンの組織が大きいほど、より多くの統一規格の食材が何トンと必要になります。それも一度でなく、売れ続ける限り、繰り返しです。食材調達の壁、売れる売価の壁、発売後の原材料の値上げの圧迫などがあり、思い切った商品開発ができないのも事実です。
しかし、この壁をクリアできなければ、消費者は、大型チェーン店から個人店、狭域専門チェーン店へ利用先を変えてしまうと思います。
7,広域エリアが逆に高負担
食材輸送もそうですが、本部の意向を末端の店舗の社員やPA(パート・アルバイト)さんに伝えて理解していただくのも一苦労です。決して良い状態ばかりではありません。
一方でAI機器を積極的に導入して、省人化、省力化対策を行い、トータルでコストの上昇を抑えようとしています。
*少し方向が違いますが、いま企画中の食品工場には、太陽光の発電設備と水源確保のボーリングを組み込むようにお願いしています。コスト減と電気と水の確保です。
店舗の小型化&多店舗化で狭小エリアを面で占拠する
店舗展開を行う場合、広域エリアをカバーしようと思えば、どうしても都市に優劣をつけて出店するしかないため、点での出店になる。
しかし、県単位や数県規模の狭小エリアの出店ならば、コンビニやドラッグストアのように、数キロメートル単位の出店が可能だ。これは点ではなく面取りゲームになる。ライバル店の増殖を抑える「取り囲み作戦」になる。
これからは、全国チェーンも広域エリアごとの複数の地方本部型の管理に変ると思います。
●料理を仕上げる目安の好みの加減が違うため
●時給条件が違うため
●年齢別の人口条件が違うため
●1日で周回できる範囲のチェーン店エリアが効率的なため
細かく対応する時代になってきたと思います。令和の時代条件にふさわしいチェーン店のあり方が望まれます。
(了)