飲食店未来学95:デリバリーピザ業態の業態破壊が進んでいる
昨年夏以降のピザ業界の動きがおかしい。特に業界1位のドミノピザが大分市に進出してから、いつものやり方から一転して、一挙に過当競争の世界になってきた。
東京商工リサーチさんの記事をまず見ていただきます。(2023年12月)
(一部省略)
大分県内デリバリーピザ店店舗数(上位10社)
1位:ドミノピザ~4店舗
お持ち帰りピザ<半額>が大分市内の既存店にとって激震となった。
2位:ピザハット~3店舗
3位:ピザーラ~3店舗
4位:ナポリの窯~ゼロ
5位:ピザポケット~ゼロ
6位:ピザカルフォルニア~4店舗
7位:ロイヤルハット~ゼロ
8位:アオキーズ・ピザ~ゼロ
9位:ストロベリーコーンズ~ゼロ
10位:ピザクック~ゼロ
大分県内13市の中のわずか4市の市場しかデリバリーピザチェーンはない。大分市、別府市を馴染めとする県内各市には、それぞれローカルブランドのピザ専門店が人気を博している。
かっては原価率20%から始まったピザ専門店
30年近く前に、手づくりピザとパスタのお店の開業を手伝ったことがあります。その時の「ピザ生地の100gの玉(発酵済)の原価は10円でした。今現在、たとえ5倍になっても生地の原価は50円どまりです。(冷凍保存して解凍後に整形すれば済みます)
デリバリーピザ店の苦境の一つは、食材費の高騰が半端なく激しく、原価率が20%→25%→30%→35%→40%と上がるにつれ、デリバリーの宣伝費用を圧迫しだしたことです。
合わせて、過当競争による売上減、食材高騰のより原価率の高騰、人手不足による人件費の高騰、従業員の絶対数の不足で苦しんでいます。
今は半額売りも盛んになり、業態破壊寸前の原価率50%に近づいているのではと危惧しています。
●印刷する紙が薄くなった(ペラペラの紙の厚さ)
●ページ数が少なくなった(当然写真が小さくなる)
●商品の良さより、割引率ばかり強調する(節約意識の高まりで売上減か)
来店型のピザ専門店は今でも儲かります。(推定原価率30%以下)ただ、既存店との差別化と美味しさの競合をどう切り抜けて、開業後1~3年をめげずに持続できるかが勝負目です。
デリバリーピザ店がテイクアウトピザ店に変るしかない理由
営業利益が確保できない事態になってきている。(事業性の喪失)
●原価の高騰
前の文章で述べた通りです。たぶん20年前の2倍以上になっている。
●人手不足
応募がない、雇用しても高時給でないとすぐ辞める、学生は試験期間は一斉に勤務不可となり安定しないなど。
●デリバリーの採算性
かって弁当店のデリバリーにも関わりましたが、10年前の当時でさえ、バイク1台で月商50万円を売らないと採算がとれないという結果でした。
経費の内訳は、デリバリー専用バイクの購入と償却、携帯電話、ガソリン代(電気代)、車両保険代、生命保険代(転倒事故が多い)、人件費、修理費用がかかる。
仮に弁当が税込50%の原価の場合、人件費15%、償却費用他で15%であれば、かろうじて20%の利益が残る。さらに、ここから消費税を払う。
原価率が上がり、デリバリー経費が上がれば、望みの綱は「店売」になる。でもそうなれば、デリバリーピザ店ではなくなるという笑えない話です。
人口減少と高齢化で地場専門店が生残り、広域チェーン店が撤退する時代
ひとつの店舗が同じ形態を維持して、経営者不在の100%従業員経営を行う場合は、どうしても月商800万円以上、できれば1,000万円を超える月商が欲しいところ。
しかし皮肉にも、売上を上げるために、「20%OFF」や「50%」を実行すれば、売上は落ち、原価率は上がる。店舗売りに比べて、デリバリー経費が余分な経費となる。
そうなれば、価格競争がチェーン店ほど厳しくない、個店のピザ専門店で、店売80%、テイクアウト20%でする方が遥かに儲かる。
飲食業未経験で初めて開業する方は、1年前に著作した私のキンドル本を参考にしてみてください。
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(了)