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#3 『挑発する少女小説』


今日は著・斎藤美奈子『挑発する少女小説』を紹介したいと思います。
そもそも少女小説ってなんぞや、という方もいると思いますので、私なりに少女小説の定義をまとめてみると、少女小説=10代の女の子が成長する物語です。具体的な作品は、本書でも取り上げられている『小公女』『赤毛のアン』『若草物語』など。
中高生のときに一度は読んだことがある方、あるいはアニメや映画を通して大方の内容を知っている方も多いのではないでしょうか。
こうした長く少女たちに読み継がれている少女小説の愛され続ける理由を分析したのが本作の内容となっています。
今、私が最も注目している小説のジャンルが「少女小説」だったので、非常に興味深い内容でした。

結論から言いますと、長らく愛され続けている少女小説に共通して描かれているのは既存の価値観や社会通念に反発する、まさに「挑発」する少女です。女性=結婚が当たり前の時代に描かれた少女小説は、基本的に「結婚」がゴールで、男性から守られる、男性からの援助ありきの幸せでまとめられています。ただし、『シンデレラ』とか『白雪姫』といった童話のように男性からの救助や求愛を待っているだけの女の子はひとりもいません。みんなそれぞれ個性と逆境を自らの力で乗り越えようとする意志があり、逞しいのです。そして、そんな女の子を描くための共通の仕掛けがあります。その仕掛けはぜひとも本書で確かめてみてください。

日本では1916年から断続的に掲載されていた吉屋信子の『花物語』なんかが代表的な少女小説かと思います。それと同時期か前に今の女性像とも通じる少女像が確立していた海外の少女小説はやっぱり世界中から愛され続けるだろうし、先駆的だなと改めて感じました。個人的にはおセンチで純粋な少女性をとことん詰め込んだ吉屋信子の世界もある意味では男性を寄せ付けないものすごいパワーを秘めた作品だと思っています。今後は、こうした海外と日本の少女小説を比較してみるのもおもしろいかな、と思いましたので、おすすめの少女小説のある方はぜひとも教えてください。

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