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蒲郡 石1:水の中の石

土偶出土遺跡巡りの間の箸休めです。昨年の6月中旬、ほかのテーマで三河を巡っている時に、見落としたものがあって、2ヶ所だけ巡るために岡崎に行くことになったのですが、岡崎まで出かけて2ヶ所だけでは往復の労力がもったいなく、そんな時があったら足を延ばそうと考えていた場所がありました。そこは現時点では縄文遺跡の見つかった情報の無い、蒲郡市(がまごおりし)の複数の磐座(いわくら)でした。蒲郡市で縄文遺跡が見つかっていない理由は、はっきりしています。三河湾に沿って東西に延びている蒲郡市は北部に一部、山岳部が存在するものの、三河湾沿いの部分は標高が低く、縄文海進期には海面下に存在したため、縄文人に限らず、地上の生物は生存していなかったからです。

愛知県蒲郡市 捨石神社

最初に向かったのは蒲郡市捨石町向イに存在する捨石神社だった。

愛知県蒲郡市 捨石神社/捨石川

現在の捨石神社は地図上では素盞嗚神社(すさのおじんじゃ)と表記されている神社だが、案内書や地元住人たちの間では「捨石神社」で通っている神社だった。
「捨石神社=素盞嗚神社」であることは捨石神社の末社(まっしゃ)大巌神社(おおみかじんじゃ)脇に設置された『捨石神社縁起』を読むまで解らなかったので、当初は独立した3社の神社があるのだと思い、混乱した。
捨石神社内を巡ってみて、この神社には2社の末社、大巌神社と水神龍神八大龍王神社が存在していることが判明した。
「末社」とは本社(この場合は捨石神社)に付属した神社のことだ。

国道247号線を南下して捨石川を渡り、東側から捨石神社に接近すると、
捨石川の右岸(南岸)に面して玉垣と石鳥居が見えたので、玉垣の外れの捨石川堤防沿いに愛車を駐めた。
そして、ふと対岸を見ると、なんと、向かい側に大鳥居が建てられていたのだ。
眼下の澄んだ川面を見て、すべてが理解できた。
捨石神社はかつて、表参道を横切って流れている捨石川で禊を行なって参拝されていた神社だったようだ。
それで徒歩で、すぐ下流に架かっている無名橋を対岸に渡って、一ノ鳥居の前に立った。

愛知県蒲郡市 捨石神社 一ノ鳥居

この大鳥居は石造台輪鳥居で、社頭額には「素盞嗚神社」とあり、鳥居の左手に建てられた社号標にも「素盞嗚神社」とあった。
大鳥居の正面の対岸にはニノ鳥居が設置され玉垣が右手(西)に延びている。
玉垣の奥には森が立ち上がっている。

大鳥居をくぐって捨石川を見下ろすと、足元側には堆積した土砂を雑草が覆っているが、捨石川は水の透明度が高く、少しエメラルドグリーン掛かって見える。
両岸とも4mほどの高さにコンクリートで護岸されて、捨石川で足を清めた人が上がるための石段が設けられている。

愛知県蒲郡市 捨石神社 杜

そして、早くも石段の左手におにぎり型の巨石が存在した。 その巨石は右端が割れ裂け、その裂け目に小型の石がなだれ落ちたように積み重なっており、まるでザクロのようになっている。
岸の上の社地のニノ鳥居の奥は上りの石段になっている。
そこで、再び対岸に戻ることにした。
途中、無名橋を渡ろうとすると、下流側に1羽のアオサギがいるのに気づいた。

愛知県蒲郡市 捨石川 アオサギ

下流側は水深が15cmくらいしか無さそうだが、アオサギカメラを向けても慌てることなく、ゆっくりと浅瀬を徘徊している。
ドジョウでも狙っているのだろうか。
アオサギはヨーロッパからアジア・アフリカ大陸にかけて分布するというが、夏季に北海道に飛来し、冬には九州以南に越冬のため移動するというのだが、本州・四国では周年生息するというので、このアオサギは大移動したことのないアオサギなのかもしれない。

橋の上から上流側を確認すると右岸の1/3近くが土砂で埋まっていることが見て取れた。

愛知県蒲郡市 捨石川/捨石神社

大鳥居と向かい合った石段の上から下を見下ろすと、水中にも複数の石が沈んでいることに気がついた。

愛知県蒲郡市 捨石川 巨石

特に石段のすぐ先にある石は巨石で、一部が水面から真っ白に乾いた頭を出している。

捨石川 巨石

石段を下まで降りて、大鳥居越しに見たザクロの巨石を真横から見ると、石が堤防の護岸から頭を出しているのは一部に過ぎず、ほとんどが堤防と土の中に埋まっていることが判った。

捨石川 石段/巨石

おそらく、護岸される前のこの巨石は捨石川の辺りに丸ごと姿を現していたのだろう。

対岸の一ノ鳥居とこちら岸の二ノ鳥居を通っている表参道の左脇に当たる場所には常夜灯と、もう1基の「素盞嗚神社」と刻まれた社号標が建てられていた。

捨石川 表参道 巨石

常夜灯は麓が堤防に組み込まれ、社号標は自然石が使用されている。
そして、社号標の基壇は、川中にも一部が顔を出している、ザクロ形の巨石
の頭頂部が川沿いの道の地面から頭を出した部分で、基壇に向かない、その角が取れて丸くなった登頂部に建てられている。

ニノ鳥居を入り口の石段の麓から見上げると、玉垣内には白っぽい細かな砂利が敷き詰められ。そこから幅の広い石段が小高い丘の上に向かって立ち上がっていた。

愛知県蒲郡市 捨石神社 表参道

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この神社の社名と町名に使用されている「捨石(すていし)」を『デジタル大辞泉』で調べてみると、「捨石」の持つ7つの意味が紹介されていた。その中にすでにニノ鳥居をくぐる前に該当する意味が2つ存在していた。
1 道ばたや野原などにころがっている石。
3 橋脚などを造るとき、水勢を弱めるために水中に投入する石。
かつては、水中に沈んでいる巨石の場所に橋が架かっていたのかもしれない。あるいは禊をした参拝者が捨石川を渡れるように巨石が沈められた可能性もあるのではないでしょうか。

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