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御用地遺跡 土偶 66:カラス=絡むス

御用地遺跡(安城市)を通る2本目のレイラインを設定してみました。
中条遺跡(刈谷市)と御用地遺跡(安城市)を結ぶレイラインですが、このレイラインでは初めて大きな収穫がありました。
本刈谷遺跡(刈谷市)と御用地遺跡を結ぶレイラインと同様、愛知県内に限定すると、中条遺跡の西側には特にヒットする遺跡や神社などは見当たりませんでしたが、御用地遺跡の東側では複数の遺跡や神社がヒットしました。その最初の要素が岡崎市石原町のくらがり渓谷に存在する砥鹿神社
(とがじんじゃ)でした。

●御用地遺跡 土偶

1MAPくらがり渓谷砥鹿神社

砥鹿神社は三河国一宮である総本社が岡崎市の南東側に面している豊川市に存在し、岡崎市石原町の砥鹿神社はその分社。
石原町の砥鹿神社に関して岡崎市の公式ウェブサイトに項目が立っているものの、見に行ってみると、住所と電話番号、地図が紹介されているのみで、ネット上には他に情報は無かった。
くらがり渓谷に関しては多くの情報があり、『愛知県岡崎市公式観光サイト』の紹介文を要約すると、以下のような景勝地とされている。

本宮山県立自然公園内の南西部。
乙川(おとがわ)の支流、男川(おとがわ/通称おとこがわ)の源をなす渓谷沿いに位置します。
春は新緑と野鳥のさえずり、夏は涼しい清流とカジカの声、秋は渓流を赤黄に染める紅葉、冬は南アルプス連峰を一望するハイキングコース。
四季を通じた魅力の多彩さ、四季折々の渓谷美には定評があります。
「快適な穴場のアウトドアスポット」として人気です。

本宮山(標高789m)とは三河国一宮砥鹿神社の奥宮(標高約770m)が山頂の南側に祀られた神体山のことで、石原町 砥鹿神社(標高約280m)は本宮山の北西中腹に位置している。
ちなみに三河国一宮砥鹿神社の里宮の標高は約25mだ。
男川は乙川と同じ「おとがわ」という読みなので、両川を区別するために男川は「おとこがわ」という通称で呼ぶ。

県道37号線で西側から、くらがり渓谷に向かった。
その37号線が男川を渡る直前の右手にくらがり渓谷のゲートが現れた。

1くらがり渓谷ゲート

ゲートから先は関係者の車しか入れないようになっている。
感染症対策で観光案内所が閉鎖されていたので、向かい側に掲示された絵地図で、くらがり渓谷を把握するしかなかった。
この絵地図には以下のようにあった。

本宮山頂へのハイキングコース
 登山口より山頂まで 約7km
 所要時間 約2時間

ムムム…苦行は行わない方針なので、片道徒歩40分以上の山道には別け入れないようにしている。
この絵地図で、くらがり渓谷が、いずれ登らなければならない本宮山頂ヘのコースの一つであることを知った。
しかし、今回の目的は石原町(くらがり渓谷)にある砥鹿神社だ。
絵地図に砥鹿神社の記載は無く、「現在地」も記載が無い、知っている人にしか解らない地図だったため(時折あるよね)、全く役に立たず、砥鹿神社までどれくらい歩くのか不明だった。
この日は4月の下旬だったため、まだ山中の空気は冷たく、革ジャンの下はTシャツ1枚だったので革ジャンで、くらがり渓谷沿いの登山道を登ることにした。

登山道沿いの男川は下記写真のように両岸から巨石が転がり落ちており、下記写真のような状況だった。

2男川

まさに町名になっている「石原」だった。
肉眼で見た巨石はあまり見ることのない大きさのものがゴロゴロしていたのだが、写真ではそのスケール感がまったく伝わらない。

3男川巨石

くらがり渓谷には樹木にネームプレートが取り付けられており、これはありがたかった。

気になった樹木のみ調べてみた。
フジのようにねじれた樹木に「ネジキ ネジキ属 ツツジ科」というネームプレートの掛かっている樹木があった。

4ネジキ

『樹木検索図鑑』には以下のようにある。

ネジキ(捩木)
【樹形】 落葉低木~小高木.高さは2~9mになる.
【 葉 】 互生.葉身の長さは3~11cmで,ふちは全縁.
【樹皮】 縦に裂けてねじれる.
【 花 】 総状花序に白い壺形の花をつける.花期:5~7月.
【果実】 さく果.3~4mmの球形で上を向く.果期:9~10月.
【分布】 本州(岩手県以南),四国,九州の丘陵帯~山地帯.
【別名】 カシオシミ
【名の由来】 幹がねじれることから.

「カシオシミ」の由来は、みんなが知りたがっているが、誰も知らず、説すら紹介されていない。
ネームプレートの掛かっている幹と、その幹に絡みついている幹の両方がネジキなのだろうか。

フジは別に存在していた。

5フジカラスザンショウ

フジ フジ属 マメ科」というネームプレートが掛かっている。
マメ科だったんだ!

フジ(藤)
【樹形】 落葉つる性木本.
【 葉 】 奇数羽状複葉で互生する.小葉の長さは4~10cmで全縁.
【樹皮】 なめらか.
【 花 】 総状花序に紫色の蝶形花を多数つける.花期:4~6月.
【果実】 豆果.長さは10~20cm.果期:10~12月.
【分布】 本州,四国,九州の丘陵帯~山地帯.
【別名】 ノダフジ

山中で気温が低いからか、まだフジの花は見えなかった。

フジから少し登ると、「カラスザンショウ サンショウ属 ミカン科」というネームプレートが掛かっているスリムな樹木があった。

カラスザンショウ(烏山椒)
【樹形】 落葉高木.高さは5~15mになる.
【 葉 】 奇数羽状複葉で互生する.小葉の長さは7~15cmで,鋸歯がある.
【樹皮】 棘またはいぼ状突起がある.
【 花 】 雌雄異株.散房花序に緑白色の花を多数つける.花期:7~8月.
【果実】 さく果.5mm位の球形.果期:11~1月.
【分布】 本州,四国,九州の丘陵帯~山地帯.

ミカン科がサンショウ属だというのには驚いたが、カラスザンショウも枝や幹がねじれ気味だった。
同じ場所にねじれた樹木が多いのは何か理由があるのだろうと、調べてみると、『デジタル岡山大百科』に以下の記述があった。

『樹木の形の不思議』には、「樹幹や大枝がねじれて螺旋木理となっている状態はしばしば観察されます。ザクロ、ソメイヨシノ、トチノキ、マツ類などは遺伝的なものと考えられますが、どちらの方向にねじれるかはそのときの幹の傾斜や風向きにより変わります。」と記載されている。また、「フジやツルウメモドキなどの巻きつき型のつる植物が樹幹に絡みつくと、樹木は最初、つるを押しのけようとして、つるが接触している部分の成長を早めますが、つるの方が太くなり締めつけを強めると、今度はつるを外側からのみ込もうとして接触部分の周囲の成長を速めます。つるの方も負けじと太くなるので、結果としてつるが幹に深く食い込んで螺旋形になります。

カラスザンショウは幹も枝もスリムだが、分岐した幹も枝も強度が強いようで、分岐の無いまま、長く伸びる性質があるようだ。
これは強風に耐えるための性質のようだ。
カラスウリやカラスノエンドウのように植物に「カラス」の名称が付くものは複数存在する。
カラスウリは草木にからみついて成長し、カラスノエンドウの茎には巻きひげがあり、やはり、近くのものに絡みつくこともあるという。
カラスザンショウの場合も、上記写真の上部に自身が絡みついているように見える部分があり、「カラス」は「カラみつく」性質を表してるのだろうか。
カラスザンショウはサンショウ一種なので、「カラみ(辛味)」を意味することもあり得る。
カラスノエンドウにも辛味があるかネットで調べてみたところ、食用になり、新芽を使った天ぷらが紹介されていた。
味は「癖はありません」と紹介されており、辛味は無いようで、こちらは「カラみつく」の「カラス」なのか。
カラスビシャク(烏柄杓)の場合は「烏レベルの大きさの柄杓(ひしゃく)」の意味と説明されているが、やはり球根や花の上部に以下のような紐状の絡みつきそうな(私見がだ)形態の茎や付属体が伸びるるようで、「カラみつく」説が優勢のようだ。

これらの植物の示す、絡みつく渦巻き状の形態や伸びる触手は生命力を視覚的に示すものであり、縄文人が装飾のモチーフとして多用している。
捻じれた樹木や植物の多く見られる、くらがり渓谷に縄文遺跡が存在しないか調べてみたが、現時点ではそうした情報は見当たらない。

ヤマハゼ ウルシ属 ウルシ科」というネームプレートが掛かっている、苔の生した樹木があった。

6ヤマハゼヒサカキ

ヤマハぜに関しては『樹木図鑑』を中心に、『樹木検索図鑑』に相当する情報を以下に抜き出してみた。

ヤマハゼ(山黄櫨)
【樹形】 落葉小高木.高さは6~7mになる.
【 葉 】 互生.小葉の葉身は長楕円形あるいは卵状長楕円形で,ふちは全縁.
【樹皮】 暗褐色で、縦に裂ける.
【 花 】 円錐花序を出し、淡黄色の小さな花を多数つける.花期:5~6月.
【果実】 ゆがんだ扁球形で、緑色から熟すと黄褐色になる.果期:10~11月.
【分布】 本州(関東地方以西)、四国、九州、沖縄、朝鮮、中国、台湾.
【別名】 ハニシ(古名)、ハゼノキ、ハゼ、野漆樹(中).

ハゼノキはウルシ属 ウルシ科であり、かぶれにくいとは言われている。
かぶれにくいとはかぶれる場合があるという意味だよね。
樹名の由来に定説は無いようだが、山が紅葉して萌えることを「爆ぜる(はぜる)」と表現するが、ヤマハゼは見事に紅葉する樹木だ。

やはり苔の生した、幹が波打った樹木に「ヒサカキ ヒサカキ属 ヒサカキ科」のネームプレートが掛かっていた。

ヒサカキ
【樹形】 常緑低木~小高木.高さは4~7mになる.
【 葉 】 互生.葉身の長さは3~8cmで,ふちには鋸歯がある.
【樹皮】 なめらか.
【 花 】 雌雄異株.葉腋にクリーム色の花を下向きにつける.花期:3~4月.
【果実】 液果.5mm位の球形で,黒紫色に熟す.果期:10~11月.
【分布】 本州(秋田・岩手県以南),四国,九州の丘陵帯.

幹が波打っていることに関する説明は見当たらないので、このヒサカキ固有の状況なのかもしれない。
「ヒサカキ」という樹名には「榊に似ているが、榊でない=非榊(ヒサカキ)」とか、榊と似ているが、榊より一回り小さいことを示す「姫榊(ヒメサカキ)」がなまって「ヒサカキ」となったという説がある。

こうした男川沿いにネームプレートを持つ樹木を見ながら、よく整備された道を上っていくと、川中には時折、並外れた巨石が落ちていた。

7男川巨石

上記写真の巨石の脇にはこの巨石に流れが遮られたことで、大粒の砂利が溜まっていた。

道を挟んで、男川の反対側は山の斜面になっており、歩いた範囲では2ヶ所の水路があった。

8水路

水路といっても、水は積み重なった石の隙間を流れ落ちており、道の下の暗渠を通って、男川内にある巨大な今井岩の上に落水していた。

9落水

〈この項続く〉

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くらがり渓谷で出会う人たちの70%は山歩きの服装をしていました。街中のデートの格好をしたカップルが30%で、革ジャンを着たシングルは小生だけでした😅

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