御用地遺跡 土偶 32:八塚から王塚へ
このページでは安城市の姫小川古墳に続いて訪問した、八ッ塚古墳跡と王塚古墳を紹介します。
姫小川古墳の東310mあたりに存在したという八ッ塚古墳はすでに墳陵が失われているという古墳でしたが、どんな環境の場所にあったのか知ることに興味があります。
八ッ塚古墳跡に続いて、姫小川古墳の南西170m以内に位置する王塚古墳に向かいました。
現存する桜井古墳群のすべてが碧海台地上に設置されていることから、鹿乗川(かのりがわ)の西岸に位置しているが、「八ッ塚」という名称からすると、東岸には8基の古墳群が碧海台地下に存在したと思われ、そのすべてが水田耕作地として開発され、失われたようだ。
姫小川古墳の南東40mあまりに架かっている姫下橋を東に渡って、鹿乗川と用水路を超えると、基本的には水田景観が左右に広がっている。
八ッ塚古墳はその田園地帯の中に位置していた8基の中の1基で、「八ッ塚古墳」という名称は、その8基の古墳群を象徴して名づけられたようだ。
八ッ塚古墳の場所は小さな地図の資料しか見当たらなかったことから、それらしき場所を、桜井古墳群周辺にやって来るたびに、都合3度探し回ったのだが、私有地の中ということもあるのか、案内プレートは掲示されていないようだった。
下記写真は八ッ塚古墳跡らしき場所の南東側から撮影したものだが、遠方の鹿乗川の向こう岸に姫塚古墳と獅子塚古墳の森が見えている。
『東町村村誌』と『碧海郡誌』には八ッ塚古墳に関して以下のようにある。
明治14年(1881)以前まで「形円にして其坪12坪高さ凡6尺余」の古墳があり、開墾のため崩した際に、径凡4寸の鏡1面が出土し、小さな宮を築き、そこに安置したことを伝える。
「近時此の塚から古鏡が出でたり」「桜井村八塚の一たり」と八基の古墳を連想させる。
八ッ塚古墳から出土した銅鏡が以下。
直径は10cmほどの小型の銅鏡だ。
『桜井古墳群保存管理計画書』(編集・発行 安城市教育委員会 平成27年3月)の「構成要素調査票」には以下のようにある。
名称 八ッ塚古墳
古墳の墳形 円墳とされるが、既に滅失しており詳細は不明。
築造時期 古墳時代前期後葉から中期前葉(4世紀後葉から5世紀初)
古墳の規模 不明
埋葬施設 石室を持つとの伝聞がある。
出土遺物 倣製内行花文鏡1面(市指定文化財)。刀剣類、土器片が出土したと伝
わるが、所在は不明。
立地 碧海台地東方の沖積低地内に所在した。昭和30年代の土地改良工事
により滅失。
八ッ塚古墳跡周辺から再び鹿乗川を西に戻って、住宅街の中にある王塚古墳に向かった。
『桜井古墳群保存管理計画書』によれば、王塚古墳は標高12m前後の碧海台地上に位置しており、「王塚」という名称に反して、現状では南北約14m、東西約22m。高さ約2.5mほどという周囲を削られた小さな古墳で、四方を住宅に囲まれた場所に位置していた。
形状は円墳状に見え、墳丘上に椿が群生しており、墳頂に石碑が2基見える。
墳丘は美しい円丘とは言えず、土が流れて椿の根がいずれも露出してしまっており、旧い土手を囲っていた石垣が一部残っているが、旧いものではなく、さかのぼっても、昭和期の石垣だと思われる。
現在はこの旧い石垣の外側を囲うように北側を通っている細い路地に面した側に擬似石垣のコンクリート擁壁が設けられている。
コンクリート擁壁側に短い石段があり、その石段を上がり、荒れた土手を数歩登ると、墳頂の東向きに並んでいる石碑の前に出た。
どうにも、この古墳は居心地の悪い古墳だった。
その理由は墳丘が荒れていることもあるが、墳頂にある石碑が墓石であることにあった。
現在は2基の墓石が並んでいるが、『桜井古墳群保存管理計画書』に掲載されている平成13年(2001)の確認調査及び墳丘測量調査時に撮影された写真を見ると、小さい方の墓石は現在より北側の墳丘の外れの離れた場所に祀られており、おそらくその部分が崩れる可能性があったことなどから、撮影後移動されたようなのだ。
また、この時代の「自然環境」の項には「墳丘上に竹木」と記述があるが、現在は竹は消失し、自生する椿が激増している。
その椿の成長は遅いものの、生命力は強く、寿命が長いことから「年経た椿は化ける」という伝承が日本各地に存在する。
以下の根の張り方を見ると、そうした伝承のように尋常ではない生命力を感じさせる。
墳上からの眺望が開けている(?)のは北側と下記写真の北西側だが、それはこの古墳に面している側に広い庭があるからだ。
『桜井古墳群保存管理計画書』にある上記以外の「王塚古墳」に関する構成要素データは以下だ、
古墳の墳形 円墳か
築造時期 不明
埋葬施設 不明
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このページのヘッダー写真は地面に落ちた椿の果実だが、通常、椿の果実は枝に付いているうちに割れ、中に入っている黒褐色の種子が露出するものだが、どれも割れる前に落ちたもののようだ。
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