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【WCAGをアクセシビリティに取り組む指標のひとつに設定したい人向け】バージョン2.0・2.1・2.2の差分をざっくり紹介

こんばんは、38motです。(お久しぶりの方はお久しぶりです!)
GAAD(Global Accessibility Awareness Day)間近で、アクセシビリティ熱がすでに高まっている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
38motはそのうちのひとりです。楽しみですね〜。
パブリックビューイングも各地であるようで、私は午後からになりますが、福岡会場に参加予定です。

さて、最近はありがたいことに、アクセシビリティに関するお仕事をお手伝いさせていただいております。
近況に関してはまた別記事を書くとして……。
アクセシビリティを社内で徐々に高めていきたいお客様に向けて、WCAGについて少し整理しようと思いまして、それをもっと多くの人に伝えたい!と奮い立った次第です。


主な読者ターゲット

こちらの記事は、主に下記のような方に向けた内容になります。

  • アクセシビリティを高めたい意欲があり、チームや社内で取り組むにあたって、まずは何を最低限のラインとするか悩んでいる方

  • WCAGの2.0・2.1・2.2の差分があまりよく分からない方

読んだ方が「まずはWCAG●●のレベル●●を最低限満たせるように頑張ろう!」と声を上げられるような判断材料のひとつになると嬉しいです。

もちろんWCAGの達成基準を満たすことは目的ではなく、ウェブコンテンツのアクセシビリティを向上させるための手段だと筆者は認識していますし、WCAGにもガイドラインによってすべてのユーザーのニーズが満たされるわけではないことに触れています。
上記のようなことや、そもそもアクセシビリティは〜という話はたくさん湧き出てくるかもしれません。
ですが、当記事はあくまでアクセシビリティに取り組んでいきたい方々のプロセスの一つの指標として、WCAGを参考にする場合の、適合レベル・バージョンについて軽く紹介させていただきます。

取り組む段階について

WCAGには、3つの適合レベル(A・AA・AAA)があります。
そして、現状WCAGは3つのバージョン(WCAG2.0WCAG2.1WCAG2.2)があります。
厳密には、1999年5月に勧告された1.0のバージョンがありますが、W3Cが2.0勧告時に2.0を参照することを推奨していたため、先述した現状のバージョンからは除外しています。

3つの適合レベル、3つのバージョンがあるため、WCAGを元にした最低限のラインの選択肢が9つあると言えます。
そこで、バージョンアップにおける差分を、適合レベル項目数と内容に分けて紹介したいと思います。

バージョンアップにおける適合レベル項目数の違い

2.0の適合レベル項目数

  • 合計61項目

  • 適合レベル別

    • レベルAが25項目

    • レベルAAが13項目

    • レベルAAAが23項目

2.0から2.1へのバージョンアップにおける適合レベル項目数

  • 合計78項目(全体的に17項目追加されている)

  • 適合レベル別

    • レベルAが30項目(5項目追加)

    • レベルAAが20項目(7項目追加)

    • レベルAAAが28項目(5項目追加)

2.1から2.2へのバージョンアップにおける適合レベル項目数

  • 合計86項目(全体的に9項目追加され、既存1項目が削除されている)

  • 適合レベル別

    • レベルAが31項目(2項目追加、既存1項目削除)

    • レベルAAが24項目(4項目追加)

    • レベルAAAが31項目(3項目追加)

バージョンアップの内容について

次に、ざっくりとバージョンアップの内容を見てみましょう。

2.0から2.1へのバージョンアップの内容

  • 主な目的は、次に挙げる3つの主要なユーザーに対するクセシビリティ改善

    • 認知・学習障害のあるユーザー

    • ロービジョンのユーザー

    • モバイルデバイス上の障害のあるユーザー

  • 解説書の日本語訳は公開されている

  • 日本ではまだ、JIS X 8341-3:2016の一致規格は2.0の内容のままとなっている

2.1から2.2へのバージョンアップの内容

  • 主な目的は、2.1のバージョンアップの取り組み内容を継続するために、提案・評価・洗練された達成基準が追加された

  • 2.1をベースに構築されているが、4.1.1が削除されている

  • まだ解説書の日本語訳は公開されていない

  • 2.2の内容を元に、ISOやJISも規格改定が予定されている

2.0以降で追加された項目について

2.1で追加された項目

先述したアップデート内容における2.1の目的を達成できるような基準が追加されています。
また、2.5 入力モダリティに関しては、2.0になかったカテゴリーになります。キーボード以外の入力・操作方法に関してのカテゴリーです。

  • 1.3 適応可能

    • 1.3.4 表示の向き(AA)

    • 1.3.5 入力目的の特定(AA)

    • 1.3.6 目的の特定(AAA)

  • 1.4 判別可能

    • 1.4.10 リフロー(AA)

    • 1.4.11 非テキストのコントラスト(AA)

    • 1.4.12 テキストの間隔(AA)

    • 1.4.13 ホバー又はフォーカスで表示されるコンテンツ(AA)

  • 2.1 キーボード操作可能

    • 2.1.4 文字キーのショートカット(A)

  • 2.2 十分な時間

    • 2.2.6 タイムアウト(AAA)

  • 2.3 発作と身体的反応

    • 2.3.3 インタラクションによるアニメーション(AAA)

  • 2.5 入力モダリティ

    • 2.5.1 ポインタのジェスチャ(A)

    • 2.5.2 ポインタのキャンセル(A)

    • 2.5.3 ラベルを含む名前(name)(A)

    • 2.5.4 動きによる起動(A)

    • 2.5.5 ターゲットのサイズ(AAA)

    • 2.5.6 入力メカニズムの共存(AAA)

  • 4.1 互換性

    • 4.1.3 ステータスメッセージ(AA)

2.1の勧告後に、日本語訳が少し変わった項目

達成項目名の日本語訳が変わったものは3つあります。
意味合いがより適切になったこと以外大きな影響はないかもしれませんが、WCAGに関して記載されている印刷物や、2.0・ISO・JISなどを元に作成されたものを参照する際に、あれ……?となるかもしれないので記載しておきます。

  • 1.3.2

    • 2.0「意味のある順序」

    • 2.1「意味のあるシーケンス」

  • 3.3.4

    • 2.0「エラー回避(法的、金融、データ)」

    • 2.1「誤り防止(法的、金融、データ)」

  • 3.3.6

    • 2.0「エラー回避(すべて)」

    • 2.1「誤り防止(すべて)」

2.2で追加・削除された項目

多くの達成基準が、2.1のアップデートに関する内容を元に、よりアクセシビリティを改善するために追加された印象です。

  • 2.4 ナビゲーション可能

    • 2.4.11 隠されないフォーカス(最低限)(AA)

    • 2.4.12 隠されないフォーカス(高度)(AAA)

    • 2.4.13 フォーカスの外観(AAA)

  • 2.5 入力モダリティ

    • 2.5.7 ドラッグ動作(AA)

    • 2.5.8 ターゲットのサイズ(最低限)(AA)

  • 3.2 予測可能

    • 3.2.6 一貫したヘルプ(A)

  • 3.3 入力支援

    • 3.3.7 冗長な入力項目(A)

    • 3.3.8 アクセシブルな認証(最低限)(AA)

    • 3.3.9 アクセシブルな認証(高度)(AAA)

  • 4.1 互換性

    • 4.1.1 構文解析(廃止・削除

おすすめの適合レベル・バージョンについて

ざっくりと2.0〜2.2に関する適合レベル・バージョンについて紹介させていただきました。
これらを元に取り組むにあたり、おすすめのプランをまとめてみました。

  • まずは基礎を学び、取り組みつつ、地方公共団体などのアクセシビリティが求められる案件実績を積んでいきたい方には「2.0のA・AA」がおすすめ

    • まずは2.0から学びましょう。後方互換性があるので、その後はよりアップデートしていく形になると思います。

    • 組織の中で「アクセシビリティ」自体の価値を上げる・伝えるために、アクセシビリティが求められる案件実績を積むことも、取り組んでいくにあたって必要に感じてくると思います……!

    • 2.1や2.2では項目が増えていくので、はじめの一歩は小さくてもいいかなと思います。
      (ということを書くと怒る方もいらっしゃるかもしれませんが、多いし難しいよ〜〜厳しいこと言う人もいるよ〜〜と、増えかけていたアクセシビリティ向上の民が減ることは悲しいので、初学者にはあたたかくWelcomeな気持ちで接したいです)
      (とはいえ、2.0のA・AAが難しくないわけではありません)

  • アクセシビリティ、チョットワカル、周りを巻き込んでいきたいよ!という方には「2.1のA・AA」がおすすめ

  • アクセシビリティ結構分かりますし、実績もあります。チーム内もアクセシビリティに関する意識は高いですね。という方には「2.2のA・AA」がおすすめ

    • まだあまり2.2に関する改善事例などを見かけない・解説書の日本語訳が出ていないので、自分たちの力で学び、取り組む力があるチームにおすすめです。是非改善事例などシェアお願いします!

    • 今後のこと(ISO・JISの規格も2.2の内容に改定予定)を考えると、取り組んでいくのはよさそうです。

本当はまずはレベルAから!というようなおすすめをしようと思っていたのですが、こんなことになってしまいました。
あくまで個人的なおすすめですので、先述した適合レベル項目数などを参考に「2.0のレベルAは25項目あるらしいから、まずはこれらは最低限品質として担保できるように取り組もう!他にも改善できそうなところはアクセシビリティ向上していっちゃお〜!」といった感じで、ご検討いただければと思います。
AAAに関して今回はハードル的におすすめにあげておりませんが、項目の存在の把握・理解は是非とも最初の段階から進めていただき、徐々に取り組んでいきましょう!

あとがき

今回はWCAGの、主にバージョンによる差分等を整理しつつ、おすすめの取り組みプランを紹介してみました。
ここはちょっと正式名称と違いますね〜史実と異なりますね〜といったご指摘がありましたら、Xにて教えていただけると嬉しいです。
今後はWCAGの各達成基準について細かく見ていったり、ツールチェック・人力チェックについてや、今すぐ取り組めるような小さなことを紹介できればと思っています(noteかZenn、準備ができたらブログ等で)
過去に登壇した際の資料もアップデートして記事にしたり、勉強会も再開させたいですね。
最近感じたのですが、WCAGについて情報を追ったり(WAICのGitHubを眺めたり)、達成基準を隅々まで読んだりするのがすごく楽しくて、アクセシビリティオタクかも……!
アクセシビリティを向上させつつ、オタ活できる最高の二刀流を極めていきたいです✌

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みやもと
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