息子が急性散在性脳脊髄炎になって倒れた話 番外編
更新頻度が突然減ってしまい、申し訳ありません。「楽しんで記事を書きたい」「納得した記事だけを投稿したい」という思いから、毎日投稿に拘らず、少しずつ投稿を続けていきたいと思います。今後ともよろしくお願いいたします。
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実は、長男は今現在も倒れた当日の記憶が無い。
入院は彼にとって、とてもとても大きな出来事として刻まれている。
退院して数ヶ月経つ今でも、
「入院していたとき、ぼくすっごく寂しかったんだ。」
と、ぽつぽつと話し出す。
退院直後からそのやりとりを繰り返す中で、倒れた当日の記憶が無いことがわかった。
退院してすぐの頃は、目覚めた後PICUに居た記憶も残っていなかった。
けれど、PICUで目覚めた直後は疲れやすく寝ていることも多かった為、積極的に思い出させようとはしなかった。
そんな彼も、日々を過ごす中でふと色々なことを思い出す瞬間があるようだ。
ある日突然、
「ぼくが一般病棟に行く前に寝てた部屋ではさー、頭にいっぱいシールが貼ってあって(脳波計測のコードのことだと思われる)DVDが見れたから、僕いっぱい見てたよね」
と、PICUでの記憶を話し出したかと思えば、
「前に○○公園でピクニックしたよねぇ!」
と、倒れる直前の週末の思い出を当たり前のように話し出したり。
少しずつ少しずつ、散らばった小さな記憶を取り戻しているように見えた。
そして先日、寝る前に突然、
「僕が退院するときさ、タクシー乗って帰ってきたよね。」
と、退院の日のことを話し出した。
「そうだね。タクシーで長男くんすごく大人しかったけど覚えてる?」
と聞いてみると
「僕、あのとき退院出来て寂しい気持ちだったの」と。
「退院の日なのに寂しかったの?」
と聞くと、
「ママとパパと会えなくて寂しいってずっと思ってたから、タクシーの中でもなんだかまだ寂しかったの。
でも、おうちに帰ってきたらだんだん嬉しくなって寂しくなくなったんだよ」
あの日の気持ちそのままの表情で語られる想いに、彼の長い入院生活の頑張りと寂しさが、いまだ根強く残っているのだと感じる。
なんだか泣きそうな長男を引き寄せ、ぎゅーっと抱きしめる。
まだまだ私の身体にすっぽり収まる小さな長男。
毎日の服薬も嫌がることなく頑張り、毎月泣きながら採血をしてステロイド値を計測している。
彼は今とても元気で、走り回ったり歌を歌ったり、この4月には進級をして「お兄さんになっちゃった」と緊張するような穏やかで優しい子だ。
そんな穏やかな日常の中から服薬や検査が終わるまで、あと少しだと信じて、手を取り合って頑張ろうね。