息子が急性散在性脳脊髄炎になって倒れた話6
そこからどうにか帰宅したときには22時を回っていた。
帰宅すると、真っ青な顔の夫が精一杯の笑顔を作って出迎えてくれた。
「おかえり。お疲れ様だったね。次男はとてもいい子で寝てくれたよ。」
「ありがとう。あなたもお疲れ様。あの後ほんのちょっとの時間だったけど、長男に会えたよ。沢山いろんな管が繋がってたけど、苦しく無いように薬で眠らせてくれてるから穏やかな顔で横になってたよ。」
思い出す長男の姿に胸が苦しくなりながらも、夫に状況を伝えた。
「明日、また経過説明してもらえるって。私は治療の見通しが立つまで仕事休ませてもらえることになったから、私行けるけど…あなたはどうする?」
子煩悩だけれど、普段は残業が多く忙しい夫。
休めなくても仕方がないと思い聞いた言葉に、悩むことなく返ってきた言葉は、
「もちろんいくよ。仕事行っても手につかないよ…」
そこからは夫が病院を出た後に受けた説明を伝え、ここからが体力勝負だと早々に寝室へ向かった。
そこでいつもと変わらない無垢な姿で吐息をたてながら眠る次男の姿をみてホッとしたのも束の間、いつもはその横に長男が寝ているはずの空っぽの布団を目の当たりにして、現実を突きつけられたような気持ちになった。
心臓の音をうるさいと感じる程動揺しながら、呼吸を整えつつ、これからどうなるのかと布団の中で考える。
『夜中の急変時に備えて、いつでも電話に出られるようにしておいてください』と医師から言われていたこともあり、緊張と不安でなかなか寝付くことが出来なかった。
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その夜、不思議な夢を見た。
穏やかな晴れた空の下、綺麗なお花畑でぽけーっと空を見上げる長男の姿を遠くから見ている夢。
大きな声で叫んでも、私の声は届かないようだった。
「今はゆっくり休んでね。目が覚めたらママ、必ずすぐにそばに行くからね。苦しいことや辛いことは夢には出てきませんように。穏やかな気持ちで過ごせますように。」
そんな思いを夢の中で長男に向けて願っていた。