今の色

くすんだ灰色。
淡い光さえ差し込まず、深淵さえ覗かないそんな色。

毎日幻影に誘われてもがいて目を開く。
開いてしまったな、って思いながら体を起こす。
こんな事なら体を起こすことさえ叶わない夢の中の方が幸せだったのかも。

夢の中では電車に乗って揺られてた。
両脇には友人がいて、なんてことない会話を広げていた様な。覚めてしまったからもう思い出せない。

𓐄 𓐄 𓐄 
1.相談

始まりは一通の連絡。僕の知人からだった。

「助けてくれ」

要約すると友人が自らをあやめようとしているらしかった。僕にはどうすることも出来ない、そこで悟ってしまったが今となっては早計だったのかもしれない。

諦めて放り投げた無責任な思考とは裏腹に僕の人差し指は綴り続けた。

『嬉しい』『好きだ』『休もう』

取り留めのない言葉しか繕うことは出来なかったけれど。ただ会話し続けた。画面越しにしか寄り添うことが出来ず歯痒い思いをし続けたけれど。

今思えば知人は残酷だと思う。
この僕に助けを求めるなんて。
『死ぬな』ただこの一言が言えない僕に対して助けを求めるだなんて。
彼は何も知り得ないから責めるのはお門違いだろう、悶々とした思いは濁って汚い灰色のようだった。

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