切なく光る白浜の角に立つ鏡に映った彼女は、 黒いごみを拾い上げて、幼く、空を見上げた 「運命とは、海辺の黄昏だ その間、詩人にとって、この世界は海にすぎない」 哀しみを失った詩人に、白い月が溶けて、 人類は、愛についての言葉を手に入れたと考えている 少し彼方に彗星が、遠く此方に妖精が 運命の恋が重力を駆けて、一輪の薔薇を形づくったと人々は話す 眼鏡は鼓動になりたくて 鼓動は約束になりたくて 約束は黄昏になりたくて そう考えた哀しみを忘れた詩人は、運命を、海に変えてし
あなたのことを 少し知ったかぶりしてしまった わたしに あなたは、少しイラついたのか、照れたのか どちらにせよ あなたの大事な人になりきれていない 切なさと身長差が、クスっとくすぐったい 白いお饅頭を「半分こ」と渡したら 「しょっぱいものが食べたくなった」と あなたが、イカスミパスタを買いに行ったから 今度は、苺のショートケーキをあげてみたら 「自分は、あんこが好きだから」と あなたは、おはぎを買いに行った 一昨日あげた白いお饅頭にも、 あんこは入っていたのにね 身
わたしは、ハッピーエンドしか知らない。 正義は、誰かの正解を定義する。 正解に対しては、間違いがある。 誰かAにとっての正義は、誰かBにとっての間違いだ。 そして、誰かBにとっての正解は、誰かAにとっての不正義になる。 不正義を正したい熱情は、怒りとなるだろう。 怒りと怒りのぶつかり合いが形を迎えるものは、 この星の日常にいまも溢れている。 わたしも、「正義」を振りかざした頃がある。 後悔したことがある。 正義は、正しさを背負う。 君は、本当に、間違わずに生き
未来とは、本当に、無限に広がっているものなのだろうか。 迫り来る進むべき未来を、どう愛すか。 現在が1つなら、未来もただ1つなのではないだろうか。 「愛する人のために覚悟したのは、未来だ。」 そう思った。物語に。
寂しかった。
あなたは、彼女を愛している。 それだけでは、駄目でしょうか。 いや。愛が本物なら、あなたを縛らなかった。
なにかを成すとは、どういうことだろう。
それはメロン味の飴が溶けていくようで まるでメロン味の飴が溶けていくようで あなたとわたしの「距離」も溶けていったから この氷が溶けていく速さも 昨日降った静かな雨も これから 「ふたりだけの公理」を築いていくことも それはメロン味の飴が溶けていくように あなたとわたしの「距離」を溶かしていく 薔薇の花束を贈った翌日のお返しには、一輪のハイビスカスを あなたがプラモデルを組み立ててくれた日は、必ず喧嘩になってしまうから 土曜の午後2時には、どちらかがショートケーキを
花束、茶髪に散って、枯れた空、青天に パズルし薔薇に、空気壊れ ケーキでキスして、共に甘やかに ほつれ糸の緑、祝祭に映える 一方で、 曇天の黄昏から舞い降りた鳩 薄紫の綿毛をつけたタンポポは 窓格子に張付き それはまるで、ホコリ あなたを禁止された 駐車場で 徐行する 高圧ガスと書かれたトラックの 運転手に あなたをさらわれる わたし 思いがした 昨晩 自販機の上を走るパイプ管が 人知れず、破裂しました 赤茶けた壁は、濡れました コンクリートの地面も、濡れました
What a spectacular. 四ツ葉にブラックホール 裂けて、咲いたダリアの花 が、ガガガガガッと割れて、 モーゼの海 に、そそり立つ三島が燃やした金閣寺 さんごじゅうごで モナリザとにらめっこしましょ 笑ったら、ダメよ あっち向いて、来い 奇異な旅人よ、サルーテ! 紅いシャクナゲ揺れ 硝子窓に、サイレン赤く鳴り 蒼いヒマワリ咲き 硝子窓に、体液青く飛ぶ 月の火山が爆発した日に あの星人の哀しみが見えた 気がしたあの星人を 人は、恋と呼んだけど 地球人以
東京タワーを見上げていた。 酸いも甘いも何度も噛んで、 あなたと出逢った。 「あなたは、初恋の人に似ていただけ」 突き放すわたしを、 「恋は、落ちたそのときが、いつも初恋」 と、あなたは追いかけてきた。 病院の待合室で、テレビが教えてくれた、 ありふれた恋の理論。 「こんな理論さえ当てはまらないわたしたちに、」 「明るい未来が待っているとは、思えない?」 と、あなたは笑ってくれた。 「未来は、」 「すべて明るいもの、なんでしょ」 と、わたしは笑っていた。 見上げた
「雪が好きだ」とあなたが言って、 名前を呼ばれたような気持ちになった。 「どうしたの? あんまり唐突に言うから、 わたしの名前を呼んだのかと思った」 と笑ったら、 背中越しのあなたの気配が一歩近づいた。 なのに、「ん?」としか返事をしなかったから、少しむっとして振り返ると、 あなたは、オルゴール店内の背の高いクリスマスツリーを見上げていた。 「夏のほうが好きだったんだ」と言ったあなたは、グレーのジャケットに、白いタートルネックを着ていた。 「なんとなく」と答えるの
ベラ・バクスター「poor things. lol 」 エンドロールの最後に、 彼女は、そうジョークを言って、笑った。
夢を見ることは、時に、 人生を残酷に映すこともあるだろう。 それでも、君は、夢を見る。 なぜだろう。 夢は、最後のその時も、 きっと、夢見る君のそばにいる。 さあ、醒めない夢を見よう。 夢は、君の人生を、 チョコレートのように甘くする。
背伸びして、あなたのロングコートの 1番上のボタンをとめる 唇を躱すより あなたを傷つける方法を知りたくて 合いそうになる目をそらす あなたを送り出した後 リビングに戻ると カーテンが風に揺れていることが いつも、気になる あなたはこの部屋にいない、と 風に教えられているような気持ちに なるんだろう あなたがくれる沢山の幸せや愛よりも たった一言が許せない、わたし クリスマスの光に彩られた街中で 歩くのが遅いわたしを 振り返ってくれるあなたからも 目をそらした あ
「海だなぁと思って」 港町のテラスで、 君は当たり前のことを言ってみせる 晴れた日には、いつもわざと、 クラウディー・アップルを頼んでみせる 優しく海が薫る店内に夕陽が差込み始める頃、 グラスにジュースを少し残し、 君が言い始める冗談に、 わたしは渾身の防衛戦 「アップル・ジュースが、 夕陽より紅くなればね」 なんて、言ってみせた 「雪は、冬の花だよね」 と当たり前のことを言ってしまったわたしに、 「じゃあ、花火は、夏の夜空の雪だね」 と返す君の横顔は得意