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『かふぁらもん』脚本

2023年度県大会作品として執筆。
上演時間:60分
キャスト:10〜(県大会では19人オンステ)
2023年11月12日 新潟県高等学校総合文化祭演劇部門県大会にて優秀賞第二席および高校演劇サマーフェスティバル2024(東京都開催)への推薦を頂きました。


平安時代、「非人」と呼ばれ、いないもの扱いされる河原者たち。
彼らの生業は「芝居」であった。
その1人ヒコバエは、1人の鬼(イトナ)に出会う。
ヒコバエには見えるが他には見えない。
「いる」のに「いない」。

以下経緯。
2月 PLAY『プシーバリルン』を終演し、創作演劇大会の生徒講評委員引率(ただの高校観劇おじさん)も終えて暇になった辺りで「いる/いない」をテーゼにした構想を練り始める。

3月 当初は「高校演劇部員主人公の演劇部あるある話」を想定してたが(演劇部あるあるの極地が「いるのにいないと言われる」)、広島出張の寄り道で京都を訪れた際、鴨川で時代ものの着想に至る。『鎌倉殿』と『犬王』の影響はバカでかい。企画案を走り書きしたところ、なぜか七五調になったが「まあいいか」と、そのまま顧問の先生に提出。このときの文章がほとんどそのまま現時点の「前口上」にあたる。春休みに第一稿執筆。楽曲制作の話も3/22からスタートしてる(早い)。

4月 人生初担任を持つ。新入部員14名が入ってくれたことを喜ぶとともに、唯一配役を決めていなかった悪役「セキシキ」のキャスティングに悩む。タコパしたっけ。
日本芸能史を勉強しなければと思い、人生初の「能・狂言」を見あさる。その中でも『武悪』(Youtubeで「山本会 葉月公演」が視聴可能)は劇中劇の「声をのんだ鬼」のモチーフになっている。シリアスとコメディーがガチッと同居している名曲である。

5月 学園祭でみんな大忙し。僕は毎週末図書館に籠る。
特に以下の書籍は参考にした。
『河原者ノススメ: 死穢と修羅の記憶』篠田 正浩著
  河原者のディテールづくりに参考。ただ今作の河原者は史実的な平安京
  の河原者と朝鮮半島の芸能民とを足して二で割ったイメージ。
『〈非在〉のエティカ: ただ生きることの歓待の哲学』小野文生著
  大学時代の縁で呼んだが、水俣こそ「いるのにいない(非在)」の原色
  だと気づかされた。「倫理とは居場所を求める営みである」。
『凍る草原に鐘は鳴る』天城光琴著
  遊牧民の中で芸能を担当する子供たちを淡いタッチで描いた小説。
  いつかこの作品をそのまま舞台版に翻案したい。

6月 学園祭を終え部員に脚本配布。時代ものに対するブーイング殺到。
言葉遣いは今よりよっぽど文語体であった(なんなら第一稿は全編文語(古語)体であった。でもよくよく考えたら授業で習う古語って都の中の貴族様の言葉だし、都の外にいるやつがどんな言語使ってたかはブラックボックスか、と思い至る。)
2,3年の皆で『べっかんこ鬼』観劇。

7月 記憶がない。『君たちはどう生きるか』を見に行った。

8月 全国大会(鹿児島)をTwitter上で楽しむ(羨ましむ)。
バカなボケをし、大爆笑させた後に笑わせたことを後悔させるようなシリアスをぶっこむ。笑っていた自分(観客)が加害者側であることを思い出させる図式に憧れる。全県演劇講習会。地区大会打ち合わせ。

9月『無差別』(乱痴気公演)観劇。終演後演出家の岡田さんに無理を言って翌日の千秋楽を部員たち(特に「柿食う客」好き達を優先)が観劇。「こういうのがやりたい!」のオンパレード。
そして地区大会本番。目標は揺るがなく「地区突破」!
ありがたいことに県進出が許されるが…

10月 地獄の病み期。県大会講評でありがたいことに「この作品を代々の上演レパートリーに」というご提案を頂いたが、部員一同縮みあがった。この作品は役者、演出家もろもろが順に(あるいは同時多発的に)病まなければならない呪われた作品である。産みの親である脚本家としては我が子を愛しているが、教員としては誠に申し訳なく思っている。持病薬の手放せない日々が続いた。

11月 部員から大会辞退の提案を受ける。安易にではなく、真剣なミーティングの中でぽろっと漏れ出た本音である。全員が心に抱きながら言葉にしてこなかった言葉である。話し合いは遅い時間まで続き、互いを思いやる言葉を掛け合い、「辞退するかどうか」という議論の結論を出さないまま笑顔の内に解散となった。
作中で繰り広げられる一つの議論。
「辞める理由はいくらでもあるのに、芝居をやる意味は何か?」
後出しの、予定調和的な発言になるが、そのワンシーンのキャラクターたちの心情を部員自身が体験する(いやおそらく逆だろう)機会となった。

11月12日 本番
残念ながら前夜に3名の発熱があり、代役的動きも多かった本番であったが、なによりも今回で引退となる3年生二人(ヒコバエとカブ)が出色な上演だった。アクシデントを笑いに変える対応力、自身の見せ場を120%で演じ切る芝居力、文句なしのMVPであった。
地区から県へ変更した点は多いが、群集劇的な性格が強かった地区を、オヅノとヒコバエの物語に描き直した点を、十分に表現してくれたと言える。
芝居をどこかで続けてほしいなあ。

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