文学とは何か? 『若い読者のための文学史』
ホメロス、チョーサー、シェイクスピア、ディケンズ、オースティン、エリオット、オーウェル、カフカ、村上春樹、J・K・ローリング——。
『若い読者のための文学史』では、後世の書棚に残った魅力的な作品を、たっぷりの情報とともに面白く語り尽しています。第1章の「文学とは何か」から内容を一部ご紹介します!
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文学とは何か
ロビンソン・クルーソーのように、無人島に流されたと想像してほしい。
「本を1冊持っていけるとしたら、どの1冊にしますか」。
これはBBCラジオの人気長寿番組「無人島レコード」でたずねられる質問だ。番組はBBC国際放送でも流れ、世界じゅうで聴かれている。
その週のゲストは、無人島に持っていきたい音楽として選んだ8曲のさわりを聴いたあとで質問をふたつされるのだが、最初の問いは「ひとつだけ贅沢品を持っていけるとしたら何を持っていきますか」である。
なかなか気の利いた回答をする人が多く、青酸カリを選んだ人は少なくともふたりいたし、ニューヨークのメトロポリタン美術館を持っていくなんて答 えた人もいた。2問めがこの質問だ。聖書(あるいはそれに類する宗教書) とシェイクスピア全集は、もう無人島にあるという設定になっている。
ひょっとして青酸カリを選んだ前の人が置いていったのかも? さあ、それ以外に、本を1冊持っていけるとしたら、どの1冊にしますか。
私はこの番組を50年聴き続けているが(放送開始は1942年)、たいていのゲストは、孤独な余生の伴侶として名作を選ぶ。
最近では、ジェイン・オースティンがどういうわけか(『ロビンソン・クルーソー』を抜い て)一番人気だ。これまで何千回と放送された番組のどの回でも、ゲストがすでに読んだことのある文学作品が選ばれていた。
ここから、文学について重要な真実がわかる。第1に、文学とは、明らかに人生で重要なもののひとつだということ。第2に、文学を「消費する」という言い方をするものの、皿に盛られた食べ物とちがって、消費されてもまだそこにあること。そして、たいてい、何度味わっても、最初のときと同じように味わい深い。
数年前番組に呼ばれたとき私が選んだのは、サッカレーの『虚栄の市』だった。(私は数年かけて編集したり、批評を書いたりしたので)少なくとも100回は読んだ小説だが、お気に入りの音楽と同様、何度読み返しても楽しめる。
再読は、文学が与えてくれる大きな喜びのひとつだ。偉大な文学作品は汲めども汲めども尽きない井戸のようなもので、それゆえに傑作と言われる。何度再読しても、何か新しい発見が必ずある。
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物事を深く考える人生において文学は大きな役割を果たします。文学をよりよく知って、素敵な一冊に出会えるよう力になれる本です。ぜひご覧ください!
若い読者のための文学史(ジョン・サザーランド著/河合祥一郎訳)
すばる舎の「リトル・ヒストリー」シリーズはこちらから↓↓
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