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犬吠埼灯台がスコットランドの灯台と姉妹関係になった

 千葉県銚子市の犬吠埼灯台。断崖絶壁の岬の先端に立ち、太平洋の大海原を一望できる日本有数の洋式灯台である。国際航路標識機関(IALA)が1998年に提唱した、「世界各国で歴史的に重要な灯台100選」に、日本から選ばれた5つの灯台のひとつで、国の重要文化財にも指定されている。
 この世界に誇る犬吠埼灯台(レンガ造り、高さ地上31メートル)の初点灯は1874年(明治8年)で、今年150周年になる。これを記念して、全国に約3200ヵ所ある灯台の監督官庁である海上保安庁は11月20日、灯台建設技術で関係の深いスコットランドのマル・オブ・ギャロウェイ灯台と犬吠埼灯台の「姉妹灯台提携」を結んだことを明らかにした。外国との姉妹都市関係の話はよくあるが、「姉妹灯台」の誕生は世界初ではないかとして、地元で大きな話題になっている。
 犬吠埼灯台を設計したのはスコットランドの灯台技師リチャード・ヘンリー・ブラントンで、明治政府に雇われて明治初期の灯台建設を指揮し、29の灯台を建設。「日本の灯台の父」とも呼ばれている。ちなみに日本で初めて造られた神奈川県三浦半島の観音崎灯台を設計したのはフランス人技師のF・Ⅼ・ヴェルニーで、東京湾周辺四ヵ所に灯台を建設した。ブラントンはその後を受ける形で建設を請け負ったという。

マル・オブ・ギャロウェイ灯台

 マル・オブ・ギャロウェイ灯台はスコットランド最南部にあり、初点灯は1830年。犬吠埼灯台の44歳上の「お姉さん」になる。この姉妹は今後、ブラントンの功績に関する写真やビデオなどを相互に展示するほか、関係者の相互訪問などで繋がりを深めていくという。
 船の守り神と言われる灯台。筆者がこの神様に興味を持つきっかけとなったのは、犬吠埼灯台が我が地元千葉県ということもあるが、一番のきっかけはあるひとつの歌にある。曲名は文字通り『The Lighthouse』(灯台の意)。アメリカのゴスペル歌手コリン・ホーソンが2018年に作詞・作曲した歌である。灯台を「人生の海」を照らすキリストであり、灯台がなければ、暗い海を船は航行できないだろうと、宗教色の強い歌だが、切々たる旋律とともに胸を打つものがある。この曲をたびたび聞いているうちに、「神」でもイエスでもない本物の灯台に関心を持つようになり、「姉妹灯台」のニュースに接し、この記事を書いてみた次第である。
 
 

映画「喜びも悲しみも・・」のワンシーン

 灯台に関係する歌と言えば、ご存じ若山彰の歌う『喜びも悲しみも幾年月』が思い出される。木下恵介監督、佐田啓二、高峰秀子出演の同名映画(1957年制作)の主題歌だ。日本各地の灯台を巡り渡る灯台守夫婦の25年の人生を描いた長編映画であり、その主題歌と合わせ、当時国民の人気を集めた。「♪おいら岬の灯台守は妻と二人で沖ゆく船の・・」と、灯台を神ではなく、人生そのものとして歌い上げている。
 船の守り神にはロマンがある。
 

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