#毎週VALIS感想 - 005 ◆ 再構成ウィーバー
VALISで一番好きな曲
VALISで一番好きな曲は何かと聞かれたら、ぼくは食い気味にこの曲を挙げると思う。それだけこの曲はぼくにとって「好き」の一言では片付けられないほど大きな意味を持っている。大袈裟ではなく、本当に、VALISとこの曲に出会ってぼくの人生は変わった。楽曲的に言うのであれば再構成された。
先日の生放送での企画「届け推しVALIS」のコーナーで、VALISと再構成ウィーバーへのぼくの投稿を紹介していただいた。
最終回の最後での紹介だったので正真正銘のフィナーレではあったんだけれど、最後に相応しいような投稿だったのではないかと自分でも思う。紹介していただいてありがとうございました。
ただでさえ長い文章だったけれど、本当は最初はあと三倍くらい量があったので、伝えたいことが伝わるように大幅カット。言いたいことのメインは投稿で述べているので大きくは変わらないけれど、この記事ではその削った部分や、さらにこの曲にフォーカスしていろいろ語ろうと思っている。正直、語りたいことが多すぎて筆舌に尽くし難いんだけれど、なんとか記していこうと思う。
受け取ったメッセージ
作詞作曲はDECO*27さん、編曲はRockwellさん、いつもの最高コンビ。いつの時代もボカロ曲の最前線として活躍していて、黎明期から令和まで、常にトレンドを押さえたキャッチーな楽曲を出せるのは本当にすごいと思う。作曲者としての一面が注目されがちなDECOさんだけれど、実はよくよく紐解いてみると、歌詞の方も恐ろしいほどよく練られたものになっている。その特徴として、巧みな言葉遊びが挙げられる。重要なテーマを透明度95%にするくらい言葉で遊び、それでもテーマから逸れることなく伝えたいことは起承転結も押さえて終始一貫している。
サビの歌詞に胸を打たれた。仕事を続けるべきなのかどうか、やりがいはある仕事だけれど自分が本当は何がしたいのかわからない、新しくやってみたい仕事はあっても好奇心だけで飛び込んでみても良いのか、年齢や今後の将来を考えると安定した職のほうがいいのではないか。いろんな悩みが立ち塞がり、言い知れぬ虚無感に、ぼくの毎日は灰色だった。そんな中でVALISとこの曲に出会った。
ストーリー的にはこの曲は挫折してバラバラだったVALISが再構成するまでの物語。MVでは、AメロBメロで各メンバーが過去に抱えていたであろう思いが描かれている。CHINOさんやMYUさん、RARAさんの描写なんかは非常に解像度が高く描かれていて、息を飲んだ。VALISの過去やメンバーの思いなどを知った直後のタイミングでこの曲のMVを視聴したけれど、メッセージはより一層肌で感じられる温度感を持っており、ぼくの胸を打った。
本楽曲はテーマの関係上、いつものDECOさんの楽曲ほど言葉遊びは多くないけれど、というか、DECOさんにしては珍しくストレートな言葉が多い。でも言葉のチョイスがDECOさんらしい。押韻のレベルがあまりにも高すぎる。そしてDECOさんの歌詞らしさの最たるが、サビの歌い出しの「再構成」だと思う。DECOさんのことなのでおそらく意図してやっているのだと思うけれど、「再構成」が「さあ行こうぜ」に聞こえる。
ウィーバー(weaver)は機織りとか、織る人といった意味がある。まさしく繊維、糸を再構成する人という意味。ぼくなら「紡ぎ手」とも訳す。とすると、VALISが自分たちを紡ぎ直した歌なのがビビッと来る。ひとりひとりは細い繊維で、それ単体で見たらバラバラでも、それを6本紡いで一本の糸にすればきっとなんだってできる、そんな「紡ぎ手」の歌だと思った。そんなVALISから、「次はきみの番だよ」と背中を押してもらえるような感じがする、歌い出しの「さあ行こうぜ」。こうしてバトンを受け取り、ぼくらはぼくらで人生を「再構成」して新しい物語を紡いでいく。VALISがVALISを再構成した時点で、ウィーバーとは、ぼくらヴァンデラー自身のことでもあったのだ。
「失敗したって良い、躓いたら笑えばいい、何度だって人生はやり直せる。わたしたちにもできたように。きみにしかできないことが待ってるから。だから、さあ行こうぜ、ウィーバー」
こんな感じのメッセージを、この歌からぼくは受け取った。心に積もった雪が少しずつ溶けていくように、ぼくの心は温かくなっていた。MVの視聴が終わるころには、涙が頬を伝っていた。そうだ、何をしていたっていい、ぼくはぼくにしかできないことをするっていうのを生きる目標に掲げたんだ。そのことを思い出した。だから、環境とか生活ぶりとか仕事内容とか忙しさとかは何も変わっていないけれど、もう前ほどの虚無感は無い。毎日は色づいて見える。涙で虹をなぞったから。これからどんなことがあろうと、ぼくは再構成してもいい勇気をもらった。
おそらくそれを裏付けているのかはわからないけれど、MVの最後では上映が終わったあと、複数の「目」が映り、画面からたくさんの手が伸びてくる。一瞬だけシリアスなシーンにハッとするが、よく見るとその瞳の色はメンバーのもの。「見ているからね」というメッセージなのか、手を伸ばしているのは、ぼくらを引っ張ってくれているからなのか、答えはわからない。
その他解釈
メンバーそれぞれが直面した過去の困難は、こんな感じなのかなと思う。
・CHINOさん:引きずるほどの大きな失敗、あるいは何か(グループとか?)から弾かれた経験。そしてそれから目を背けた過去。他のメンバーの性格に対するあこがれ。
・MYUさん:辛そうにしているメンバーや親しい人に声を掛けられなかった(どう声をかけて良いかわからなかった?)。鳥かごの自分=「結局自分は簡単には変われない」という諦め、しがらみ。
・NEFFYさん:見て見ぬふり、押し込めた気持ち、「もういいや」という逃避?
・NINAさん:「うまくいかない、このままだと沈んでいってしまう」という悩み、にも関わらず大きな存在の手のひらの上でしかない自分(=やりたいことをやらせてもらえていない?)。
・RARAさん:自分だけが選ばれない(オーディションとか?)、あるいは、周りがどんどんいなくなる(離れていってしまう?)ことへの焦り。目指しているものがどんどんわからなくなった。
・VITTEさん:メンバーの中で自分だけが浮いているという感覚?
好きなところ
曲の解釈やぼくとの関係性を長々と語ったので、ここからは本題も本題、投稿で言えなかった好きなところを存分に語っていきたいと思う。
まずは何といっても先ほども述べた通り、サビの歌い出し。「さあ行こうぜ」と背中を押してくれるような気分になれるのはきっとそのシーンでメンバーが代わる代わるこちらを見て微笑んでくれるからだと思う。本当にここが解釈一致で、このメンバーならたぶん、ぼくらに「さあ」と手を差し伸べる時にきっとこうしているだろうなというのが想像に容易い。秒数にしたら曲全体のうちの数秒にも満たないけれど、本当に本当に大好きなシーン。元気が無い時にはいつだって何度だって元気をもらえる。
落ちサビも大好きで、ここも再構成ウィーバーの楽しみどころのひとつ。感想の盛り上がりから一点、クライマックスに向けてしっとりするところ。まずNEFFYさんの芯のある声が耳に入る。独唱だからこそ、その言葉は深く突き刺さる。NEFFYさんはいろんな自分がいて様々な思いを胸に秘めたであろう、そのうえでの「『もういいや』はいいや」は、思いがこもっている。そして、いつも元気いっぱいでたくさんの笑顔をぼくらにくれるNINAさんだからこそ、「立ち上がってまた転んだって大丈夫さ 笑いながら躓こう」のフレーズは胸に響く。
余談だけれど、ぼくの投稿を紹介していただいたくだんの配信で、最中にNEFFYさんはこの曲の歌詞を思い返して「キて」いたそうだけれど、奇しくもこの落ちサビ前の間奏のNEFFYさんも、いろいろなことを思い返している様子があるので、そこもリンクしていて今でも熱いものがある。
閑話休題。2番のBメロ後半と、アウトロで全員が同じ方向に向かって歩いていくシーンも好きだ。手を取って再びひとつになったVALIS、そしてみんなで歩き出した6人。「だから今のVALISがあるんだ」と、そんな様子が伝わってくる。活動を続けているときっと楽しいことばかりじゃないだろうし、自分がやりたいこととのギャップも多少は生まれてくると思う。それでも、そういう時にはこの時の想いを思い出してみて欲しいと思ったし、ぼく自身もこの曲に初めて出会ったときの気持ちを忘れないようにしようと思った。
この曲自体にいろんな感情がありすぎて聞くだけで情緒がわけわからないことになり、いろんな思いがこみ上げてくる。今ではもうVITTEさんのブレスから歌いだしの「再構成」だけで涙が出そうになる。そのくらいこの曲の全部が好きなんだ。
この曲に出会わせてくれてありがとう、VALIS。