#毎週VALIS感想 - 012 ◆ 熱愛フローズン
作詞TeddyLoidさん、作編曲GigaさんTeddyLoidさんの、ビートが特徴的なダンサブルナンバー。先日にはダンス5人でのダンス動画もアップロードされ、いまのVALISを代表する楽曲のひとつなのではないかというくらい、クオリティも人気も高い。
曲調やダンス、MIXにどことなくK-POP感が頭をよぎり、非常にキャッチーな楽曲となっている。つい聞き入ってしまい、MVも数分間じっと見てしまう。知らぬ間に踊りの部分部分を頭に刷り込まれ、二度三度と見ていくうちに一緒に踊ってしまうような、間の魅力が詰まっている。
全体的なテーマとして、表面はフローズンのように冷たいが、内にはそれをすぐに溶かしてしまいそうなほど、熱い愛を秘めているというもの。CHINOさんのソロオリジナル楽曲「I.C.E」も似たようなテーマだが、こちらは「熱愛」であり、すでに半液体な「フローズン」なのである。溶けかけている状態。
3Dで表現されたMVは、ダンサブルチューンのビート感を表現するには不可欠で、この楽曲が大人気になった背景に大きく貢献しているに違いない。また、MVではスチームパンクな世界観の、「くすんだ大気」という光の当たり方も非常に緻密に表現されており、クオリティが高い。
一番では、地面や背景の鉄板や、暗い雰囲気も相まってフローズンという第一印象もあり、冷たい印象を与えるが(サーモの表現も印象的)、二番になると赤色の照明が加わり、随所で炎の演出がなされ、NEFFYさんの身体が溶け出す表現もあり、ここで一段階MVの温度が上がる。そして最後、「観客」を映すことで熱狂という「会場」の温度を伝え、開く背景の通気口と現れる熱風。静止したポーズ(これも静と動の対比で面白い)。これによりもはや「フローズン」である温度は逆転。「熱愛」なのだと一気に表現している。実に秀逸な演出に、MVを視るたびにここはじっと目を凝らして見てしまう。
MVのストーリー的には、過去を捨てVALISとして活動を始めて今に至る様子を描いているのではないかと思う。一番はあくまでイントロダクションとして、「これがVALISです」と、深脊界で歌って踊っている様子が描かれる。サーモによって彼女らはれっきとした人間であることが示唆され(元は人形だった)、サビで個々の箱に入るのはおそらく、活動を始めても個々で問題を乗り越えないうちはバラバラなままだったことを表しているのではないかと思う。二番以降では、過去とのしがらみとか歪んだ現実とか、そういうのを全部「いまのVALISだから乗り越えられた」と表現し(溶け出す自分の身体=多重な自分によるアイデンティティの崩壊、渇愛と狂愛、炎に囲まれて雁字搦めな(自分の好きなようにできない)状態などは過去を、そこからの脱出は力を手に入れて6人になったVALISだからできるという、VALISとしての過去からの脱却)、6人で同じ場所で踊っている。 そして足場が動き出し、そこが「ステージ」であることを、そしてVALISの新たな戦場であることを表している。最後のサビ前で映される満員御礼の観客、差し込んだ明るい光、「明るいことばかりじゃなかったけれどこれがいまのVALISの夢」というような表現に感じられる。
歌の温度感は一貫してクールでカッコよく表現されている。特に他の楽曲では甘めやストレートな歌い方が多いRARAさん、伸び伸びと歌い上げることや元気いっぱいという印象が多いNINAさんの歌は、この楽曲の温度感や質感を最高に印象づけている。最後のMYUさんのウィスパーも素晴らしい。
振り付けや楽曲、MV、どれをとってみてもつい最後まで見てしまい、何度も見てしまう要素の多いこの曲にぼくは溶けそうなほどの熱い思いを抱いている。