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【レトロゲーム・レビュー&解説】#002 鋼鉄帝国【みろく☆クロニクル】


■鋼鉄帝国
・機種:メガドライブ
・ジャンル:シューティング
・発売日:1992年3月13日
・販売:ホット・ビィ
・開発:ホット・ビィ


■はじめに

このわし、浮御堂みろくがこよなく愛するゲームとその魅力を紹介する企画、それが369クロニクルじゃ。
まあ、あくまでわしの独断と偏見じゃが、皆が興味をもってプレイしたり語り合うきっかけになれば何よりじゃ。
元々はYoutubeチャンネルの動画向けの内容じゃが、記事化にあわせて若干補足・修正を加えつつ、だいたい10分程度で読み終えるようにまとめたものなので、ご承知おきいただきたい。

■概要

今回紹介するのは、「鋼鉄帝国」じゃ!
本作は、1992年3月13日にメガドライブ用ソフトとして、ホット・ビィから発売された、横スクロール形式のシューティングゲームじゃ。
ジュール・ヴェルヌ宮崎駿の作品にあるような硬派なスチームパンクの世界観が特徴だが、それだけではない。
架空のSF小説を映画化したという設定で、ゲームだけでなく、説明書も映画のパンフレット仕立てにするなどそのこだわりが随所に見られる非常にコンセプチュアルなゲームじゃ。
全7ステージでエンディングは一種類じゃが、ライフ+残機制で、やられてもパワーアップは引き継ぐというシューティング初心者にも優しい難易度となっている。
本作を手掛けたホット・ビィという会社は、元々はパソコン向けゲームを開発していた古参のゲームメーカーじゃ。
ザ・ブラックバス」という釣りゲーの元祖や、シナリオが追加できるSF世界のRPG「カレイドスコープ」、あとはファミコンユーザーには有名なRPG「星をみるひと」など、なかなか独創的なゲームが多かったのじゃが、残念ながら本作を発売した一年後の1993年に倒産している。
しかし、その後もゲームボーイアドバンスやPC用にリメイク移植されるなど、今なお多くのファンを惹きつける魅力を持った作品なのじゃ。

■ストーリー

本作は、1815年にドイツのSF小説家カール・ハインツ・シュティッヒによって書かれた小説『Steel Empire』を元にした映画化、という設定で作られている。
もちろん、小説家の名前も、作品名も実際には存在せず、あくまで架空のものじゃ。
ただ、その「映画化」というところにこだわっているのが本作の魅力の一つだと思うのじゃ。
物語としては、独裁者サウロン率いる軍事国家モーターヘッド帝国の侵略に対抗するため、シルバーヘッド共和国が新兵器「イマミオサンダー」を装備した戦闘機、エトピリカ&ゼッペロンで立ち向かうという内容じゃ。
プレイヤーは、このエトピリカゼッペロンどちらかを選んでプレイすることになる。

■ゲームシステム

ゼッペロンは武装にちょっとクセがあるのと当たり判定が大きいので、エトピリカのほうが初心者向きじゃな。
体力ゲージ制でその場復活、しかも残機もあり、シューティングゲームとしての難易度は低い。
武器は、対地・対空を兼ねたショットが1種類と、ボムであるイマミオサンダーとシンプルになっている。
標準で連射機能付きなのも嬉しいのじゃ。
Exというアイテムを3つとるとショットと体力がレベルアップし、最大20レベルまで上げることができる。
このレベルアップは自機がやられたり、ステージ毎に自機を変更しても引き継ぐので安心じゃ。
なお、ショットは、Aボタンで前方、Cボダンで後方に発射方向を切り替えられる。
これによって前後の敵にどう対応していくかという戦略性が生まれるのが、本ゲームの面白いところじゃ。
あとはスピードアップアイテムと、オプションがつくアイテムがあるのじゃ。

■主な開発メンバー

ディレクターの佐武義訓氏は「オーバーホライゾン」というファミコンの隠れた良作シューティングゲームを手掛けている。
また、本作の音楽を担当しているのは、後に「グランディア」シリーズを手掛ける溝口功氏、そして「LUNAR」シリーズや「ラングリッサー」シリーズで有名なあの岩垂徳行氏なのじゃ。
天地創造」の窪寺義明氏も参加しており、映画化という設定にふさわしいドラマティックな音楽で本作を盛り上げてくれている。
デザイン全般を担当している西健介氏、初谷諭氏も多くのゲーム作品に関わっている。
全体的に職人集団というべき錚々たるメンバーで制作されているのじゃ。

■魅力①「架空のSF小説の映画化という世界観へのこだわり」

天空の城ラピュタ」を思わせるような魅力的なパッケージのデザインにも目を惹かれるが、本作の世界観へのこだわりは特筆すべきポイントじゃ。
そもそも、本作は、「1815年にドイツのSF小説家カール・ハインツ・シュティッヒによって書かれた小説『Steel Empire』を原作とした映画化」という設定になっている。
もちろん、そんな小説は無いし、そもそもカール・ハインツ・シュティッヒという小説家は存在しない。
しかし、ゲームを立ち上げると当時のフィルムのようにカウントダウンがあり、オープニングなどのビジュアルシーンも古い映画のようなセピア調の色合いにノイズが入るなど、映画的な演出が随所に盛り込まれている。
エンディングのクレジットも、プログラマーやグラフィックなどのゲーム開発の職種ではなく、カメラマンやセット制作、ロケーションなど映画制作の職種で表記するなど、まさに映画を意識した作りとなっている。
各ステージの背景や雲の表現も、一部はセットの書き割りをイメージさせるようなグラフィックなのも注目じゃ。
また、日本版だけじゃが、タイトル画面で流れるテーマ音楽の楽譜が表示されるというのも、他のゲームにはない演出で面白いな。
あと、個人的に必見なのはなんといっても説明書じゃ。
映画評論家の解説や、プロダクションノートという形で撮影時のエピソード紹介など全体的に映画のパンフレット的なつくりになっているのじゃ。
128エイカーの巨大プールで撮影したが、波の動きに面白みが無いとプロデューサーからクレームが付き、試行錯誤の末に水の代わりに青いゼリーを使用して躍動感あふれるシーンが撮影できた」など、妙にリアリティのある表現がわしのお気に入りじゃ。
ゲーム本編だけでなく、説明書にまで「映画化」という設定へのこだわりが溢れているのが本作の大きな魅力だと思うのじゃ。

■魅力②「初心者でも楽しめるシンプルかつ奥深いゲームシステム」

シューティングゲームというと、独自性を出すために複雑なシステムを採用しているゲームも多い。
本作の攻撃方法は、通常ショットと、いわゆるボムであるイマミオサンダーの2つのみとシンプルじゃ。
また、ライフ制なので一発食らって終わりということがない上に、残機制で、しかもその場復活なので、シューティングゲームが苦手な人でもある程度はゴリ押しで進めるようになっている。
パワーアップも、特定の敵を倒すと出現するアイテムを取ることで経験値が溜まり、レベルが上がるとライフゲージと攻撃が最大20レベルまで強化されるという、わかりやすいシステムで初心者にもとっつきやすいのじゃ。
このパワーアップは、自機がやられたり変更しても特に下がらずそのまま引き継げるというのもありがたいな。
かといって、ゲームとして単純で手を抜いているというわけではないのじゃ。
自動連射付きの通常ショットはAボタンで前方、Cボダンで後方に発射方向を切り替えられるようになっている。
これにより、敵やボスの攻撃も前後左右と様々な方向から発生するとともに、画面のスクロールも単純に左から右だけではない変化に富んだ多彩なステージ構成を実現している。
敵の出現する方向にあわせて前後どちらかのショットを使って対応していくかという戦略性が、本作のゲームとしての面白さ、奥深さと言えるのじゃ。

■魅力③「プレイヤーを飽きさせないドラマティックなストーリーと演出」

本作は、地上だけでなく地下、巨大戦艦、海上など多彩なステージが用意されている。
しかも、本作の特徴でもある前後へのショット方向切替をうまく活かし、ステージ2では右から左への逆方向への高速スクロール、また要塞ステージでは斜め右上方向へのスクロールなど、他のシューティングゲームにはあまり見られない展開が多い。
各ステージにはボスだけでなく、中ボスも用意されており、それらとの戦いも、ボスとの位置がダイナミックに変化していくことで、自然と前後へのショット切り替えを使いこなしていけるようになっているのじゃ。
まあ、ちょっとボスキャラの使い回しが多い気もするが、それはまあ、敵が軍隊なので同型艦も多数あるのだという解釈にしておくのじゃよ。
また、映画を意識しているだけに、ステージとステージの間にはストーリーの進展を示すデモシーンが挿入される。
もちろん多くの名作シューティングがそうであるように、言葉で語るのではなくゲーム中の演出で物語が語られるようになっている。
特に、後半であるステージ5、6、7は、まさに物語のクライマックスともいうべき急展開が続き、最後のステージ7では思わぬ舞台で最後のボスと戦うことになる。
このあたりの演出は、派手すぎず、ツボを抑えていて、映画的という言葉がふさわしいと思うのじゃ。
他にも、敵の首都を急襲するステージでかすかに水平線の向こうが白んでいたのが、次のステージでは朝焼けになっていたり、時系列を感じさせるような、こういう細かい演出がストーリーを感じさせるのじゃよ。

■まとめ

この「鋼鉄帝国」という作品は、メガドライブという決してメジャーではないハードの後期に発売されたため、あまり知名度がなく、売上としても多くはない。
しかし、マニュアルからオープニング、演出に至るまで、SF小説の映画化という設定にこだわったゲームデザインが、鋼鉄帝国というゲームの魅力であり、わしが大好きなところじゃ。
メガドライブのちょっとくすんだような色合いや重厚なFM音源が、フィルム映画をイメージした本作に非常に合っていて、ハードの性能とのマッチングが良かったというのもあると思う。
例えば、本作をスーパーファミコンで出していたら、まったく違う印象を受けるゲームになっていたと思うのじゃ。
それだけ、制作陣が本作で表現したいもの、したいことが明確であり、適切な選択ができたということじゃな。
シューティングゲームでありつつ、ステージ構成やイベントでしっかり物語を表現しているところもよい。
こういう世界観を大事にして統一感を保てるゲームというのは、プレイヤーに対しても心に残るもの、伝わるものがあると思う。
リメイクや移植が今なお続くというのは、それだけこの鋼鉄帝国が多くの人たちの心に響くゲームだったということだと思うのじゃ。
難易度もそれほど難しくはないので、未プレイの方はぜひ実際に自分でプレイしてみてもらいたい名作じゃ。
それでは、今回の369クロニクルはここまでじゃ。
次回もよろしくな。

■最後に

鋼鉄帝国」は続編も企画されていたがホット・ビィの倒産に伴い、一部のスタッフがスターフィッシュに移籍し、一部ボスの変更などを加えたリメイク版が2004年4月30日にゲームボーイアドバイスで発売されている。
また、ゲームボーイアドバンス版に解像度変更や初心者モードを追加した内容で、ニンテンドー3DSでも発売されているのじゃが、純粋なオリジナルの移植は今まで実現していなかったのじゃ。
ただ、2025年にリメイクだけでなくオリジナル版を加えた「鋼鉄帝国クロニクル」がSwitchにて待望の発売予定なのじゃよ。
興味を持った方にはぜひプレイしていただければ幸甚の至りじゃ。
また、369クロニクルで取り上げたゲームは、プレイ動画も公開中じゃ。
実際にプレイしながらより深く紹介しているので、興味をもったらぜひ観てくれると嬉しいのじゃ。


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