2040年の医療を支える「かかりつけ医制度」の重要性
Written by 病院建築note@医療機器出身のゼネコン社員
日本社会医療法人協議会主催の特別研修会に参加しました。
「全世代型社会保障構築会議の方向性は今後の医療をどう変えるのか」というテーマで前半は香取照幸さんの講演、後半はディスカッション形式の約3時間の内容でした。
香取照幸さんのご経歴はこちらです。介護保険制度などの策定に関わる非常に著名な先生です。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%A6%99%E5%8F%96%E7%85%A7%E5%B9%B8
こういう医療法人向けの勉強会に参加するのは初めてで、会費も1万円と最初は参加を迷いましたが結果的に参加してよかったです!
医療法人の理事長など「医療の提供する側」のお話も聞くことができました。参加されているのは全国の中小医療法人の理事長や事務の方々でした。
勉強会に参加するまでは「病院の合と機能分化」これから重要になるのでは?と思っていましたが、その前提として「かかりつけ医制度」の実装による在宅医療支援が大変重要だと感じました。
講演とディスカッションの内容で印象に残ったことを備忘録としてまとめておきます。
■コロナ禍で浮かび上がった日本医療の問題点
コロナ禍ではかかりつけ医機能などの地域医療の機能が十分に作動せず、総合病院に大きな負担が掛かりました。
2025年問題、2040年問題を抱える日本において医療制度の整備は不可欠です。
【2025年問題】https://note.com/365days_tehttps://note.com/365days_tensyoku/n/nb4bed7236b15
【2040年問題】
nsyoku/n/nd1e5e16c61bf
その制度を作るのに不可欠なのが「かかりつけ医制度」の実装です。
■なぜかかりつけ医制度が必要なのか
今回のコロナ患者が急増して病院に大きな負担を掛けました。2040年には団塊ジュニア世代も高齢者になり、患者の急増による病院機能の圧迫が予想されます。
ある意味コロナ初期にあった医療体制のひっ迫は、医療需要に供給が間に合わない2040年の日本医療の姿だと言えます。
コロナ感染した場合に「誰に見てもらえば良いかわからないこと」から多くの方が大病院に集中したり、救急車が呼ぶ事態にありました。
労働力不足のなか今後も国民皆保険制度を継続して「切れ目のない医療」を実現するためにも在宅医療を視野に入れた地域緩結型医療への転換が必要です。
そのためには患者と一番近く、患者の状況を把握している「かかりつけ医」がハブになり「在宅支援」と「プライマリーケア」の役割を担って頂く必要があります。
もちろん、その実現のためには医療DXも不可欠になってきます。
かかりつけ医と介護ケアマネジャー、基盤病院の医師との患者情報連携する「情報システム」を構築しなければ実現できないからです。
保険証の電子化(マイナ保険証)、オンライン診療、オンライン処方箋、リフィル処方箋が2022年の診療報酬改定で設けられましたが、まだまだ普及していませんが、今後の医療体制の維持を考えると必要な要因だと思います。
■かかりつけ医制度が機能しないと消防や病院の負担が増加する
コロナ初期のように「どこの医者に掛かればよいのかわからない状況」「どこに連絡すれば良いかわならない状況」で容態が悪化した場合、救急車に頼ることになります。
コロナ患者の急増により救急医療がひっ迫して通常の救急に対応できなくなってしまう地域もありました。
かかりつけ医制度があれば、地域で初期対応ができるので急性期を担う病院の運営に対する影響を減らすことができます。
■日本において病院の機能分化が難しい理由
日本の病院の70%は民間資本です。債務は理事長などの個人に帰属しています。そのため病院の運営責任は個人に帰属することになります。
先進諸国は公立病院主体なので、政府が大鉈を振るって病院の機能分化をすることができますが、日本の場合は政府が民間病院を全部買収しない限りはこのようなことはできません。
つまり他国のように病院が公的所有であれば、体系的にできることが日本ではできませんでした。
そのため日本は「地域完結型」ではなく「施設完結型」になり、病院間の重複投資や機能競合をしながらも成立してきました。
民間の病院同士が重複しながらも競合して医療が提供されてきました。
■これから必要とされるのは「在宅医療」「在宅支援」
公的病院の巨大化志向は高齢者に相応しいだろうか、ということを考えさせられました。
日本は民間病院が7割を占めており、再編が非常に難しい状況も良く分かりました。これほど医療が規制緩和されている国はありません。
ただ民間病院は200床以下の中小病院が多いので、それを利点としてかかりつけ医制度を上手く活用することで、病院の機能分化を図っていく必要があると思います。
■この医療状況が病院という箱作り(病院建築)に与える影響(仮説)
・来年の診療報酬改定、第8次医療計画、看護保険改定などの同時改定を見据えた機能を実装する
・病棟の機能変更に対応できるように廊下幅や病床の面積に余裕をもっておく
・他の病院と差別化できるような高スペックな病院を作ろうと建築に対する投資が爆発する。
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