葬式へ行った(シンエヴァンゲリオン劇場版雑感)

シン・エヴァンゲリオン劇場版を見た。

卒業式
引退セレモニー
色々なとらえ方があるけれども、自分にとっては

「少し疎遠になっていた友人の葬式」だった。


アラフォーにもなると残念だけれどそこそこ葬式にも参列し、気持ちの整理のつけかた、葬式の過ごしかたをいやでも覚えてくる。
ある時は故人の友人として、ある時は故人の親族として。幸いにしてというか喪主としての過ごし方はまだ知らないでいる。
シン・エヴァが公開されてから見に行くまでの約1週間は、訃報を受けてから葬式に参列するまでの1週間のそれだった。

葬式は、多くの時間を共に歩み準備ができて直面するものと、いきなり知らせがある場合、大きくこの二つがある。
「前者」は祖父母、両親といった近しい親戚の場合が多く、「後者」は少し疎遠になっていた友人の場合だったりする。
シン・エヴァの場合は人によって「前者」かもしれないし「後者」かもしれない。

TVシリーズ、旧劇場版、コミックス版、そして序・破・Q。
世に出たもの目にして、納得いかない思いを抱えたり、ああでもないこうでもないと考えながら追い続けた25年。
特にQからシン・エヴァへの最後の8年はとりわけ長く空いたからさながら闘病生活に等しかった人もいると思う。
だからずっと追い続け、共に過ごしてきた人にとっては「前者」だろう。

自分にとっては「後者」だ。
TVシリーズ、旧劇場版、コミックス版、そして序と破とリアルタイムではないものもあったが一通り見た。
だけど、Qは劇場で見るという選択をしなかった。
それは破の最後が自分にとってどうしても救いがなく辛く、その続きを見る勇気がなかったからだと思う。
その点では8年間もやもやして苦しむことはなかった。そこまで思い入れなかったし、と意識しないふりをしていた。

しかしあの時、Qを映画館でみて、しっかり一緒に8年間苦しんでおけば今回の救われ方はもっと強く感じられたのだろうと今は後悔している。
あの時きちんと劇場でみておけば…何回同じことをやっているんだ。

訃報を聞いて最初にするのはいつも後悔だ。
あの時誘いをことわっていなければ、
あの時電話をもしかけていれば…。
虫の知らせなんて全然頼りにならない、
全て終わって電話の直前に知らせてくれてもどうしようもない。
せめて少し先に言ってくれよ、いつもそうだ。
サービスサービスしてくれよ、いつもそうだ。

訃報を受けてから葬式までが個人的に一番きつい時間だ。
シュレディンガーの猫ではないが訃報だけでは死は未確定だからだ。
いや、単に受け入れようとしていないだけなのだけど。
葬式に参列し、その死に自分の目で見るまではまだ死んでいない。
いやもちろん、肉体的には死んでいるのは間違いないのだけど、
感情の中では、精神的には死んでいないのだと。
訃報を受けてから参列するまでの葛藤、気持ちの整理。
そして覚悟を決めて葬式へ向かう。

見に行って最後を確かめないと。
未完の大作なんて数多ある中で(佐藤大輔なんか大莫迦野郎だ)
きちんと完結するなんてそれだけで十分じゃないか。
でも見に行ってしまったら本当に終わってしまう。
それをきちんと受け止めることができるのか?自分に。
そのまま終わっていいのか、本当に。
いや、見に行かないと、ケリをつけないと。

20時過ぎの最終レイトショーで見た。
エンドロール。誰も席をたたない。スクリーンを横切る人もいない。
上へと昇っていくその白い文字は火葬場の煙のようだった。
シアターを出て、少し湿り気のある夜の空気を吸いながら駐車場へ。
駐車場では同じ上映回を見てきた人たちが運転席に座っている。
でも誰もすぐに発進しない。それどころかエンジンもすぐにかけられない。
自分も覚悟を決めて見に来たのに、頭がぐるぐるしている。
やっとの思いで車を出し、家へと向かったが、まだぐるぐるしている。
コンビニでチルドコーヒーを買い、都市高環状線を2周してから帰った。

凄くいい終わり方だったとは思う。
登場人物ほぼみんな救われたし、
シンジたちもエヴァの呪縛から解放され大人になった。
でも逆に見に行った自分は逆に呪縛に囚われたのか
まだ消化しきれないところもある。
色々なことを思い出している。
劇中のことだけでなく、現実世界の思い出も一緒に。
ひとつ思い出すと十も百も、良い事も悪い事も
数珠つなぎのように蘇ってきている。
でも次第にこの気持ちも薄れていって、
たまにあるだろうTV放映の時に思い出すぐらいになって
だんだん、だんだんといつもの暮らしに戻っていくんだと思う。


そういう意味でも
「少し疎遠になっていた友人の葬式」だった。


初七日法要の「プロフェッショナル」を見てまた見に行こうと思う。


追伸:
ミサトさん、今までクソギャンブラーって言ってごめん。責任取ったね。

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