ドネーション制(お気持ち制)のライブを企画してみた【わくわく準備編】
「こぢんまりとライブできそうな場所を探してもいいですか?」
その一言から、すべてが始まった。
とりあえず聞いてみる
8月上旬のある日、その場の話の流れとノリと不思議な勢いで、大島ケンスケさんのライブを企画させてもらえることが決まった。
最後のライブから、実に9カ月近くが経とうとしていた。
ケンスケさんがライブをしなくなった理由はいろいろあるんだと思う。
私たちにも話してくれたが、根っこのところはわからない。
ただ、確実にいえることがひとつある。
ライブで収益を得ることはとても難しい。
その後、「ライブはやらないんですか?」と聞いたのは私だけではないらしい。
その都度「やらない」と答えていたらしい。
だから私もわかっていて聞いてみた。もう何回目だろう。
「ライブはやらないんですか?」
タイミングとはおもしろいもので、そのときの話の流れから冒頭の申し出となり、ケンスケさんにオッケーをもらった。
聞いてみるもんである。
運命の波に乗ってみる
さて、どんなふうに準備をしようか。
今回、ケンスケさんがやりたいイメージは、観客10人くらいのこぢんまりとしたライブである。
ぶっちゃけ10人規模のライブなら、裏方はひとりで十分だ。会場を押さえて集客するだけである。
しかも、観客はほぼ身内(コミュニティのメンバー)で賄えるはず。
それだけでも、ライブの成功は目に見えていた。
でも。
それだけではつまらない。
ちょっとおもしろくしたい。(←悪い癖)
ケンスケさんは、いつもいっていたではないか。
「奇跡は常に2人以上」
書籍『パズるの法則』(ひすいこうたろう・吉武大輔共著、大和書房、2019年)からの引用である。
その時点で、相談する相手は決まった。
算命学のTさん。彼女とはケンスケさんのクラウドファンディング以来のつき合いである。
これまで彼女の鑑定を側で見ていて(そして自分もやってもらって)その鋭さにうなること数知れず。
ライブの日は彼女に選んでもらおう。
実はその日、その話の前に別件で彼女とやりとりをしていておもしろいことがわかった。もともと私と彼女は、算命学的に見ると、いっしょに何かをすると「大盛り上がり」する関係にある。
そしてちょうどその日(ケンスケさんにライブを企画してもいいかと聞いた日)は、私たちにとってさらに大盛り上がりして「大きく未来に積み上がる」というひと月が始まった日だった。
彼女に助っ人を打診すると、二つ返事で引き受けてくれた。
そこからの流れはあっという間だった。
ライブのテーマは、
「Make Me an Instrument ──我を静寂の標としたまえ」
に決まった。
聖フランチェスコの祈りの一節である。
ケンスケさんにスケジュールを確認してもらい、ライブの日にちも10月某日に確定。
そして集客。最初の目標は10人である。
まずはケンスケさんのイベントやセミナー、リトリートに頻繁に参加するコアなメンバーに直接声をかけることにした。
といっても、決まったのは日にちだけ。時間も場所も金額も未定のなんとも強引な勧誘だ。
でも、そこはケンスケフリークな仲間たち。すぐに12名が参加の意思を示してくれた。
関東だけではなく、遠方からも、である。
場所は、グランドピアノのある白を基調にしたすてきな会場に決めた。
そして、ピアノ伴奏をAちゃんにお願いすることにした。
ケンスケさんの十八番であるカッチーニの「アヴェ・マリア」は、ぜひ伴奏つきで歌ってもらいたかったからだ。
たぶん仲間内でもあまり知られていないが、Aちゃんは音楽科出身のピアノの名手。Aちゃんにとっても青天の霹靂の依頼だったと思うが、即決で引き受けてくれた。
ところで、Tさんはちょこちょこおもしろいことを思いつく。
「今回のライブに寄せて、参加者からケンスケさんへのメッセージを募るのはどうだろう? それを匿名で読み上げるとか?」
うわー、ベタすぎる。
これはケンスケさんが苦手なやつだ。
ついでに、ケンスケさんはサプライズも苦手だ。
「それ、いい!」(笑)
お世話になっているケンスケさんに感謝の気持ちを言葉にして伝える。
すてきなことではないか。
オフ会の余興がひとつ生まれた。
発案からわずか4日で、ここまで決まった。
もうすぐにでもライブが開催できるレベルだ(笑)
「波に乗る」とはこういうことだろう。
なぜドネーション制(お気持ち制)なのか
ドネーション制はケンスケさんの提案だ。たぶんケンスケさんは、そもそもライブの利益をさほど見込んでおらず、ちょっと遊び心もあったのではないかと思う。
ライブで収益を得ることがいかに難しいかは、ケンスケさんが何度かブログやnoteに書いている。過去に1回お気持ち制をやってみて、収支がトントンだった話は、私もブログで読んだことがある(私はその当時のケンスケさんのことは知らない)。
ドネーション制の提案を聞いたとき、私は「おもしろそう」とすぐに賛成した。定額の会費制にするよりも、ドネーションの方がそれなりの額が集まるのではないかと直感的に感じたからだ。
ドネーション制は物販をする口実にもなった。最低でも会場費は稼がないといけないからだ。
だが、たとえドネーション制にしても、大半は勝手知ったる仲間が来るのはわかっていたので、その時点で赤字になる可能性はまったく考えていなかった。
私のなかで物販をする理由はただひとつ。
「演者(この場合はケンスケさん)のギャラをできるだけ増やすため」だった。
賽は投げられた
そして、うっかり思いついてしまった案は「ライブ記念Tシャツ」の販売。
ケンスケさんのライブではお目にかかったことはない。
その案に、Tさんがノリノリになってしまった。
でも、私もTさんも、そんなものはつくったことがないし、つくり方も知らない。
そこで、デザインはライブ用のバナーとともに元探求クラブのメンバーでデザイナーのHisashi Okuyamaさんにお願いすることにした。
さらには、製品のつくり方や印刷方法についてもアドバイスをいただいた。
Tシャツのデザインはおしゃれに仕上がったが、実はそこから少し手間取った。
ホワイトとブラックの生地でTシャツのサンプルをつくってみたところ、ホワイトの方はデザインがきれいに印刷されたが、ブラックの方は微妙な色合いが再現されなかった。
いっそのことホワイト1色にしようかとも考えたが、ブラックのデザインの彩度を調整して再度チャレンジし、2回目でようやくいい色味が出た。
物販のもうひとつの案として、ポーチのサンプルもつくってみたが、これもブラックの生地への印刷だったため、同様の問題が生じた。
こちらも2回目のサンプルで納得いくものができた。
この「印刷の色味問題」は、のちに絵はがきを製作する際にも生じた。
物販って意外と手間暇かかるのだな、と初めて知った。
予算についてまじめに考える
物販をやろうと決めてから、初めて予算というものについて考えた。
ただ会場を予約して、集客してライブをするだけならば、その概念はなくてもよい。
でも、物を売るとなると話は別だ。
絶対的に製作費がかかるのだから、その分は稼がないと意味がない。
というか、稼がなければ赤字だ。
私もTさんも商売には疎い。
とはいえ、最低でも製作費を補ってプラスにする必要があること、さらには物販の売上でその他の経費も賄えれば万々歳であることくらいは、素人でもわかる。
そこで、Tシャツやポーチをいくらで売るか、そして何枚、あるいは何個売る必要があるか、を真剣に考えることになった。
こんなときに頼りになるのが、某有名百貨店のマネージャー、Sちゃんである。
ケンスケさんのコミュニティは、とにかく人材が豊富なのだ。
彼女に電卓をたたいてもらって、Tシャツとポーチの販売価格が確定した。
1人分のドネーション額は、平均してこれまでのライブの参加費程度と見込み、ライブの収入を概算した。
そこでTシャツを10枚、ポーチを12個売り切れば、経費がすべてカバーできること、ケンスケさんのギャラが過去のライブと比べて多少プラスになるであろうことが試算できた。
Tシャツのクオリティには自信がある。
Hisashi Okuyamaさんのデザインはおしゃれで申し分ない。
材質はこだわりのオーガニックコットン100%。ケンスケさんのコミュニティメンバーは、繊細で敏感な感覚の人が多いからだ。
肌触りのよさは、サンプルを試着してもらったケンスケさんのお墨付きである。
ただし、その分定価もやや高めとなったのだが。
在庫を抱えないために、Tシャツは完全受注生産にした。
詳細な資料をつくって公開し、いざ受注開始。
さて、物販は吉と出るのだろうか、凶と出るのだろうか。
少しずつ注文が入り始めた……
つづく。
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