39歳からのスケート記録 #02 心躍る
これは40手前から、自分らしい人生を探しにいった男の備忘録。
前回は、スケートを始めるに至ったまでの心の記録。
一番の下手くそ
2023年2月、緊張しながら行った市の初級スケート教室の初日。
思ったよりも参加者が多い。そして、ある程度想定してはいたけれど、
男性参加者は見渡す限り一人(遅れて、一人年配の男性が来た)…。
みんなマスクとヘルメットをしているので、互いの顔はよく分からない。
恥ずかしさはそこまでなく、スタートすることが出来た。
恥ずかしかったのはここからだった。
なにせ、ペンギン歩きの練習から、みなさんの動きが違う。
「初級」じゃなかったっけ?と思いながら、焦る気持ちを抑える。
同じように、歩くのもやっとの状態の方もいたが、
リンクの中で一番の下手くそだろうと、予想していたことが実感できた。
ーーこりゃあ、挑戦し甲斐があるな。
なぜか、わくわくする気持ちが強くて笑えてきた。
頑張れば前に進むことは出来るものの、
止まる基本である「ㇵの字ストップ」も、
足を開いたり閉じたりする「フォアのひょうたん」も、全然できない。
それでも、とにかくやってみるしか無いことが心地よかった。
ゾーンに入る
あっという間にレッスンの30分は終わり、
個人それぞれがリンクで自主練をする時間になった。
自分の体がどう動いてるのか集中し、トライして修正していた、
生々しい感覚があるうちに少しでも出来るきっかけを掴みたい。
コーチにさっき教わったばかりのことを、ひたすら繰り返していく。
全身に意識を集中して、体の動きを俯瞰するイメージをもって、
教わった時の残像や、上手い人のすべりに近づけていく。
無我夢中。ゾーンに入っていく自分を心地よく許した。
一番の下手くそからの挑戦が楽しくて仕方がなかった。
気が付けば、2時間ぶっ通しですべっていた。
それでもまだ帰りたくなかった。
「あと少しで、何か掴めるんじゃないか?」という欲が、
全身にしみわたっている感覚。それ以外は何もない無の境地。
それは正しく、このトライに求めていたものだったし、想像以上だった。
しかし、体はその心より早めに限界を迎える。
リンクに入っても、すぐ足が攣ってしまってこけてしまう。
何度か「大丈夫かー?」とベテランスケーター達に心配され、
「あと少しで終わるんで。」なんて返していたけれど、
何度目かで、本当に自力ですぐには立てなくなってしまった。
何たる失態。。いい大人が、恥ずかしい。。
初めてのスケート教室の帰路は、心地よさとほろ苦さが入り混じった
特別な感情に包まれていた。もちろん、次回を楽しみにしながら。
ーー絶対に、出来るようになってやろう。