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だんだん近づいてくるんだって
娘のハトちゃんはある日、ぬいぐるみに恋をしてしまった。その日からずっと、私の周りをうろついて自分にも出来る家事を見つけてはすかさずお手伝いしてくれるようになった。
お風呂のお湯はりスイッチを押す
老犬をご飯の場所へご案内する
床に落ちた洗濯物を拾って私に渡す
倒れた植木鉢をおこす
私がやろうとするそばから風のようにさあーっと現れて片っ端からやってしまう。そしてふっくらした手をだす。
「お駄賃ちょうだい」
そうやって10円や50円、時には100円をもらってはコツコツと貯めてきた。毎日毎日、貯金箱から小銭を取り出して、お金を色ごとに分けて、さらに10枚ずつに積み上げて、いくらになったかを数えていた。そしてこの度、ついに目標額に達成した。
ポチってしたら、届く。
今のお買い物は、そうなっている。ハトちゃんと待ちに待った「ポチ」をした。
ハトちゃんが恋してるあのぬいぐるみを画面に呼び出して、金額を読み上げる。
「三千三百円です。」
「ハトちゃんの貯金箱にはいくらありますか?」
「三千三百二十一円です。」
「では、買えますか?」
「買えます。」
ハトちゃんは、緊張しながら私のスマホに表示されたボタンをそおっとポチしていた。こんなに心を込めた「ポチ」を私はしたことがない。
翌日さっそく宅急便屋さんからメールが来て、出荷したことと配達予定日を連絡してきた。(何しろ辺境にある我が家には翌日配達なんてありえない)ハトちゃんにもうすぐ届くってよ、と言うと、
「今、あのコ、どこにいるんだろう」
と聞いてきたので、配達の追跡サービス画面を見せてあげた。お店からでて、運送屋さんの配送センターに一回集められて、トラックにのせ替えて、我が家の近くの配送センターへ向かっている途中のようだ。
多分ね、どこかのサービスエリアにあのコがのったトラックはいるよ。今、運転手さんは休憩していて、運転席でコーヒーを飲んでいます。あのコはトラックの後ろの荷台で箱の中に入っています。そして、今から向かうお家はどんな所かなあって考えています。
「私を買ってくれたお友達は男かな女かな?」
「女の子です。」
「その子は優しいかな?」
「とても優しいです。」
「大切にしてくれるかな?放り投げたり、お尻にしいたり、しないかな?」
「大切にします。」
そんなやり取りを、寝る前にお布団の中でした。
大人の買い物はポチってして届くだけ。でも、ハトちゃんの買い物は、だんだんと遠くから喜びが近づいてくるのが、本人の興奮とともに伝わってきた。
ハトちゃんのぬいぐるみは、今日届く。
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