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何処にもない場所【essay】


JRの駅に降り立つと、頭の中にパノラマのように駅前の情報が展開する。
ペットボトルの水を買うのにちょうど良いコンビニエンスストア、少しキレイめなのに空いている公共のトイレ、目的地まで一度も傘を使わずに歩いて行ける地下道のルート。これらは、まるでVRのように目蓋の裏に再生される。

一方で、私の脳内にデータがまだ蓄積されていない場所もある。
駅から遠ざかり、行ったことがないゾーンに足を踏み入れるとそこは白地図のように何もない。でもさらに進んで、だんだんと私鉄の駅が近づけば、また賑やかにデータが再生され始める。

雑居ビルの2階3階を見上げるのが好きだ。

何かのバックヤードで、休憩部屋となっているような部屋。窓から見えているのは、黄色く変色したカーテン。または、破れても補修されていない障子。おそらくそこは畳敷きだ。トイレは他のお店と共同。簡単なキッチンはある。

私はそこに住んでみたい。

お店ではなく、バックヤードだから、地図情報には表示されない場所。電話番号も画像もない。Googlestreet viewに映らない場所。

私はそこで始まるドラマを書きたい。

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地中海性気候
ハトちゃん(娘)と一緒にアイス食べます🍨 それがまた書く原動力に繋がると思います。

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