愛でぬりつぶせ
『愛でぬりつぶせ』ってすごい良いタイトルだと思う。この世にある全ての曲の中で一番良いタイトルなんじゃないかとすら思う。
チバユウスケが亡くなっても、ありえないくらい普通の日々を送っている。
だけど発表されたばかりの訃報を知った時、同時に目に入ってきたR.I.P.には心底辟易した。
普段はそういうことを思うタイプではないんだけど、今回の訃報があまりにも大きなものだったせいでアウトプットされる感情も増幅してるのかもしれない。
手癖で何度もSNSでの個々人のR.I.P.を見たけれど、「涙が出た」とタイプしながらストーリーにSpotifyのリンクを貼っていることを思うとなんともなしに滑稽だった。
最悪だったのが、追悼文をしたためた末筆に、The Birthdayの詞をもじったものが添えてあったやつ。嫌気を通り越して、どういう気持ちで書いてるんだろうと純粋に疑問に思う。
チバユウスケに語りかけるような文体を見る度にため息の気分で無になってみたりしたけど、亡くなったのがチバユウスケじゃなかったら私も同じようなことしちゃってたかもしれないとも思う。
だから嫌いだなとは思ったけど、思っただけ。R.I.P.を何らかの形で表明するのは悪いことではないし、むしろ普通のこと。私の感情の反応が過剰なんだろうなと思う。
反対にすごく美しい言葉も見た。
The BirthdayのベーシストのヒライハルキさんのInstagramの投稿。ネットニュースになってしまったからなのか、もう削除されてしまったけれど。
これから死ぬほど関係者から追悼文が出ると思うけれど、これ以上に心に響く言葉は無いなと思う。
チバユウスケの訃報に救いなんか一つも無かったけど、この文章読んで初めてそれに近いものが欠片ほどでもあるのかもしれないと思えた。
The Birthdayのメンバーにしか書けない、優しくて綺麗な感情を簡潔に表した真摯な言葉だと思う。
この人がThe Birthdayに居てくれたことが本当に本当に嬉しい。
ヒライさんが投稿を消してしまった理由を色々と邪推したけれど、「そう書いてしまったけどThe Birthdayが終了することを正式に話し合っていなかった」くらいしか思い浮かばなかった。
たとえそうだとしてもメンバーは皆同じ気持ちなんじゃないかなと勝手に思う。愛しくて美しい投稿だったので本当に残念。
チバユウスケのことをチバさんと呼べないのは、自分にとってあまりにも遠い人だから。そんなにも遠い人なのに、彼が亡くなったことで精神がこんなに揺らいでいることに驚く。私はチバユウスケのことが本当に好きだ。
今それをこうやって言葉にすることが出来るのは、自分も癌の類を今現在やっているからという自意識に後押しされてるところが多分にある。
チバは私からのR.I.P.なんか欲しくないし、誰かに読ませるための追悼文なんか書きたくもない。
訃報が出たタイミングで「世界で一番すきなミュージシャンが亡くなった」と事実だけを投稿したフォロワーを私は大いに尊敬する。私も同じようなことを心で反芻し続けている。