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13文字の言葉で人が変わった話
常々、言葉は恐ろしいと感じている。
元はひらがなの羅列である。別にナイフで刺されたり熱湯をかけられた訳でもない。ただ言葉を見たり聞いたりしただけで、なんで人はこんなに傷つけられたと感じるのだろう。だから恐ろしい。言葉なんて限りなくあちらこちらに散らばっている。いつどこで自分がそれを目にして耳にして、心が砕ける思いをするかなんてわからないのだ。
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私は背が小さい。具体的な数値を上げるのも気が引けるので、まぁ『ミニモニ。』くらいの身長だと言っておこう。
生まれてから今現在まで人より背が高い!という経験をしたことがない。成長期も人より遅く、そんなに伸びもしなかったのでずっと小さいまま今日に至る。今でこそほぼ皆無だが、昔は背が小さい事で何故か上から目線で構ってくる輩も結構いて、私はよく弄られたりした。
『チビ』
小さい、と全く同じ意味なのになぜこう言われると嫌な気持ちになるのだろう。小さいというだけで何に対して勝った気でいるのか全く意味がわからなかったのだが、あまりにも『チビ、チビ』と言われるので気分が悪かった。背が小さいというだけで何でこんなに嫌な思いをしなきゃならないのだろう。私はたった2文字の言葉で自分自身に対して物凄く劣等感を持つようになってしまったのだ。
『チビ』
まるで言葉に呪いをかけられたように、私は何をやるのもすっかり自信がなくなってしまった。特に人前で何かをするなんて公開処刑のようだった。頭が真っ白になり、何をしたかほぼ覚えていない。それもこれも私が『チビ』だから。
だが、そんな価値観を覆す¨大事件¨が起こったのだ。
それは中学生の時。国語の授業で清少納言の『枕草子』の授業があったのだが、清少納言のみずみずしい感性に感銘を受け、もう少し枕草子について調べてみたのだ。そこで私はある言葉を見つけた。
【ちいさきものはみなうつくし】
私は衝撃を受けた。物凄く受けた。それまでずっと小さいものは駄目だと呪いのように否定され続けた自分にとっては大事件だった。
【なにもなにも、ちいさきものはみなうつくし 】
小さいもの全てを認めてくれている。小さいものは皆可愛いと。
私は嬉しかった。決して清少納言が私に向けて言った言葉ではない。意味合いも少し違うのかもしれない。だけど、私はそのたった13文字の言葉ですごく救われた気持ちになった。
言葉の呪いは根深く、私は完全に背が小さい事を気にならなくなった訳ではなかったが、あの時に、あの言葉を見たことで自分を認めてくれている人がいるような、不思議と心強い気持ちになれたのだ。
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常々、言葉は恐ろしいと感じている。
私は『言葉』という存在を、決して簡単なツールとして考えたくない。言葉ひとつで人を生かしたり殺したりもできるからだ。
ひらがなの羅列が人生を変えたりすることもある。私はそれをずっと忘れずに、人に優しい言葉を発信していきたいと思っている。
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