身体の軸と外反母趾
最近、左足の親指の根元がかゆくてたまらない。左右共、まがうことなき外反母趾で、特に左足がひどい。すっかり内側によじれているだけでなく、親指の根元部分は通常あるべき形の3倍くらいに膨れ上がり、瘤みたいになっている。軟骨が変形しているのだ。
10年ほど前だったろうか、整形外科で相談したことがある。「これって、歩き方とか、姿勢の問題もあるから、手術で削ることはできるけど、またなりますよ。手術の後もしばらく歩けないし。」「日常生活で差しさわりないのなら、気にしなくてもいいんじゃない」
痛い思いをするだけで、得るところはあまりないらしいので、そのままになった。長時間歩いたりすると痛むこともあったが、なんとフルマラソンでも、支障をきたすことがなかった。マメはできたが、外反母趾は邪魔にならなかった。
昨年の春頃、長年の右肩の痛みに嫌気が差して医者に行った。こちらも日常生活では問題ないのだが、クロールの掻きが引っかかる。以前、膝が痛んだ時、「年のせいです」「誰でもなります」「加齢による膝変形」と断定され、大した治療もなく放り出された経験から、病院に行くのは気が重かった。
診断は「インピンジメント症候群」だった。医者から、「五十肩じゃないですからね、グリグリ無理に回したりしないこと」野球投手によくみられる症状とのこと。肩関節の、上腕側の骨が前方にかぶさってくることから生じる痛みだという。レントゲン写真で見たら、なるほどカラーペンで示された本来の位置より大分ずれている。
「胸筋、背筋、肩甲骨回りの筋肉がないせいで、腕や肩に負担がかかったんでしょうね」思い当たる。仕事でも、右腕ばかり酷使していた。
医者の指示は、ホームセンターに行き、口径6mmのゴムチューブを2M買うこと、朝昼晩、両手でそれを引っ張ること。胸を張って肩甲骨を寄せる感じですね。中国系の先生だが、良い医者を見つけたと思った。
長年の蓄積の結果なので、一朝一夕に治るものではないが、少しづつ肩が楽になっていく。と同時に、重心の取り方が変わってきた。ふとした瞬間、母指球のあたりに体重を載せようとしているのを感じ、はっとする。なんだそんなことで、と思われるかもしれないが、長年の人生の中で経験したことのない感覚なので、身体、もしくは体を司る脳細胞が目をぱちくりしているのだ。
しばらくすると、右足の親指を動かせるようになった。秋口になると、凝り固まり、すっかり自立心を失っていた左足の親指が、他の指と離れて床に着くようになった。
体の軸がとても大切なものだと知った。義務教育で教えるべきだ。
いや、聞いていたのかもしれません。「背筋を伸ばして、正しい姿勢」みんな、耳タコだけど、聞き流しているよね。
外反母趾は大して治っているようには見えないけれど、後戻りすることもないようで、良かった。そして、最近になってのこの痒み。揉むと、赤紫の血が巡ってきて、大層気持ち良い。薄皮の内部で細胞の組み換えが行われているに違いない。
大丈夫、まだまだみみずは進化する。でも、あんまり時間ないんだけどなあ。