第一章 十字架と少女 #3(「精霊たちのいるところ」小説)
憑いてきちゃうこと。
よくあります。
ちょっとすれ違っただけで、おんぶお化けのようにどんどん人づてに移動してくることもあるし、角を曲がった瞬間に襲われることもある。
油断大敵だけど、神出鬼没だから対応も難しい。
特に都会は憑き物が多い気がします。
きっとみんなエネルギー不足でストレスを沢山抱えているからかな。
そうそう、ストレスってどんなふうに見えるか知ってる?
黒い影のように見えるんだよ。きっとみんなにも見えていると思う。鏡を見てみて。自分が少し黒くなったように、日に焼けたように見えるかもしれないから。
憑き物はそんなストレスを抱えた人が大好物なのです。
注意してね。
ストレスを溜めないように、自分のことだけを考える日、自分を大事にする日を作ってください。
そして、その黒い影が自分の意志を持って動き始めたら、本当の本当の要注意。
こうなってくると、取り憑いた人のエネルギーを吸ってくるので、どんなに寝ても疲れが取れない、どんなに食べても満腹にならない、どんなに動いても食欲が湧かない、なんてことが起こります。そんなときはお問い合わせください。
さて、今日は私の職場を紹介します。
横浜にあるとある美術館で月の半分くらい勤めています。非常勤の学芸員という雇用形態です。
ここの美術品の保管庫に一室を設けてもらって、そこでほとんどひとりで仕事をしています。
ほとんどの美術館は展示してある美術品の倍以上もある在庫を裏で保管しています。作品によっては温度と湿度ともに完全管理されているものもあるし、雑多な感じで高級品が無造作に置かれていることもあります。うん千万もする調度品が、かび臭いところに平気で横たわってるからびっくりです。皆さんから見たら、教科書で見たことあるような有名な作品も無造作に置かれているので驚くことでしょう。
うちの美術館ではないけれど、エジプトの出土品を保管している美術館はエジプトの気温湿度と同じ設定にして保管してあって、それはそれは純度を綺麗に保っています。圧巻なので、一度は見てほしいな。
ちなみに私のオフィスは雑多な保管庫の一部を区切ったものです。
でもま、そのほうが自分設定でエアコンを調整できるので便利なのだけど。
そこで匂いを頼りに、作品の浄化を日々行なっています。
では、匂いの話は、また次の回で
・・・つづく・・・