インサイドセールスの「その先」は~事業を支えるPMM編~
はじめに
こんにちは、note編集部の田口です!今回から、新シリーズ『インサイドセールスの「その先」は』をお届けします。インサイドセールスからどのようなキャリアパスが広がるのか、そして現在、インサイドセールスに従事しているメンバーがどんなビジョンを描いているのか。
Sansanのインサイドセールスの特色と共に、インサイドセールスの「その先」をインタビューします。初回のゲストは、SD部(インサイドセールス)出身の小池庄太郎。トッププレイヤーとして輝かしい成果を残してきた人物です。そんな彼が、かつてどのような思いで仕事に臨んでいたのかに迫ります。
業界未経験の転職、まずはインサイドセールスから
田口
Sansanに入社し、最初にインサイドセールスに配属されていますが、ご希望されていたのですか?
小池
希望ではないですね。もともと営業職(フィールドセールス)としての採用と言われていて、選考の途中で提案されました。業界未経験でしたし、インサイドセールスの人数を増やしたい時期だったそうです。
当初は半年くらいでフィールドセールスに異動する予定だったのですが、自ら「居座る」ことを希望して1年11ヶ月ぐらい在籍しました。
田口
そうなのですか。希望ではないとのことでしたが、インサイドセールスをやってみて継続していきたいと考えた背景を教えてください。
小池
プレイヤーとして活躍したいというよりかは、部の組織課題を何とかしたいという思いがありました。2019年当時、入社前に思っていたよりも「フィールドセールスとインサイドセールスの力関係」を感じたんです。
SansanはThe Modelというビジネスモデルを採用していて、インサイドセールス・フィールドセールス・カスタマーサクセスがそれぞれ専任部隊として向き合っていますよね。
「上下関係は存在せずに、強みを活かし結集している組織」だと聞いていたんですけど、実際に向き合ってみるとギャップを感じたんですよ。
田口
どのようなギャップを感じましたか?
小池
当時のインサイドセールスの指標は、フィールドセールスが追う受注金額とは異なり、もっと手前にピン止めされていたんです。幾つか指標があった中でも、最も重要視されていたのが「案件数」。
これは自身が取得したアポが案件として成立した件数。故にインサイドセールスは、フィールドセールスに受け渡したアポが受注までつながらなくても「とりあえずお客様の業務課題をお聞きして案件化できればOK」そんなコミットになっていました。フィールドセールスからすると「インサイドセールスはただのアポ取り部隊だ」と思われても仕方ないという状況でした。
そこで組織の課題だと捉えて、「もっとインサイドセールスとして受注に貢献する仕組みづくりが必要」と思いはじめて、残ることを希望したんです。
田口
なるほど。受注に貢献する仕組み作りで具体的な取り組みについて、お伺いしたいです。
小池
今では当たり前になりつつありますが、大きく2つあります。
1つ目は、既に初回商談を実施した案件について、インサイドセールス自身が2回目・3回目の商談をセッティングする仕組みです。フィールドセールスがキャパシティーを超えるほど多くの案件を抱えている時は、インサイドセールスが代わりに顧客にアプローチするフローを整えました。
2つ目は、マーケティング部から供給されるリードが多すぎてインサイドセールスの電話が追いつかない時に、新人のフィールドセールスが電話業務を行う仕組みです。新人研修期間を利用して、インサイドセールス業務を体験することで、The Modelの仕組みを学べると同時に、リソースに依存しないスピーディーなリードへのアプローチが可能となりました。リードは鮮度が命ですからね。
田口
ありがとうございます。それ以外に、組織課題に目を向けたきっかけはありますか?
小池
Sansanのインサイドセールスは、四半期とか半期のタイミングで目標達成率が高い人を表彰していますよね?僕も表彰された事があるんですけど、実はあんまり嬉しくなかったんです。「与えられた目標をやっただけだしな」そんな思いがあって。
田口
小池さんはハイプレイヤーだったと聞いていたので意外です。
小池
自分自身が個人目標を大きく超えて達成するということよりも、組織がどう変わったかとか、チームの目標を達成できたかみたいな方が、ワクワクするなという確信がありました。もちろん、もっと自分の数字を追いかけようと思いました。
ただ、100%の達成率を120%にしていくことに向き合うよりかは、「100%をやって、20%頑張るところに違う目線を向けて、全体がもっと上がった方が良くない?」という考えに変わりました。
誰も拾わないボールを集めて、パスを回す
田口
約2年後に、セミナー管理ツール「Seminar One」のカスタマーサクセス立ち上げメンバーに抜擢されて、異動されたのですね。
小池
そうそう。入ったはいいけど、全然セミナーやマーケの知見がなくて。
セミナーに関する理解度を上げるためにマーケティングチームと兼任をして、イベントディレクションの業務を覚えながら、セミナーの登壇もしていました。
田口
その後さらに異動され、今の役回りはPMMですよね。現在の業務のミッションは何ですか?
小池
PMMの本来持つべき役割というよりかは、営業組織に寄っています。OKRとしては、営業部長と全く同じですね。営業部の売上達成を目標としています。
田口
ええっ!そうなのですか!インサイドセールスで得られた経験は、今の業務に役立っていますか?
小池
そうですね。マーケティング、インサイドセールス、カスタマーサクセスを経験し、SansanのThe Modelというビジネスモデルの中で、それぞれの部門に求められる役割に向き合ってきたので、業務自体の解像度が高まりました。
各部門の本質的なところや、ボトルネックを理解できたんです。The Modelという組織で分業制を敷いている以上、どうしても各部署は部門最適の考え方になってしまいます。これって当たり前のことです。だから、部門と部門の間に誰も気付かないボールが落ちていることが往々にしてあるんです。
そのボールをだれも拾わないことがクリティカルな課題だと気づいて、Sansan事業部の組織を横串で見ながら、「これはA部門とB部門で解決する問題だから、こういうプロジェクトで向き合ってくださいね」って、推進していくということをやっています。
田口
具体的にはどんな事ですか?
小池
例えば、受注目標から逆算して、今の平均単価を考慮すると、必要な商談数が足りない状況だったとしますね。僕がPMMになる前までは、「インサイドセールスの商談獲得数を上げないと!」という思考になるだけだったんですよ。
しかし、インサイドセールスが商談を取れるのって、出力に限界がありますよね。例えば今月が20営業日なら、1日一人3商談獲得したとして、合計60商談くらいが限界じゃないですか。インサイドセールスのヘッドカウントが決まっていたら、どうしようもないわけです。
もちろん、現時点でもオペレーションの改善やイネーブルメントなどあらゆる施策でこの出力向上には向き合ってくれているんですが、そこだけに頼るのは違うと思っています。プラスアルファで、先ほどお伝えしたような2つの仕組みや、それ以外にもマーケティング部で新たなイベントを実施したり、展示会やイベントでフィールドセールスが直接商談を作る動きなど、本来の役割を飛び越えていかに受注目標を達成するかを、各部門責任者全員を巻き込んで推進しています。
インサイドセールスだけでなく、過去と現在、両方を知る立場から感じるインサイドセールスの魅力
田口
Sansanのインサイドセールスならではの魅力を教えてください。
小池
過去と現在で、かなり状況が変わっていますが、世間一般的にはインサイドセールスというものが「営業の教育機関」とか、「アポ取り部隊」と表現されている中において、Sansanのインサイドセールスが専門職であることですね。
他の部門よりも優れているとか劣っているとかではなく、自分の役割にちゃんと向き合っているスペシャリスト集団で、実感を持ちながら仕事ができるというところが、Sansanのインサイドセールスの良さだと思います。
田口
そういうカルチャーもあって、業務に向き合える環境が整っていますよね。
小池
自分の目標を追いつつも、組織やチームの課題に対して問題提起し、クイックにアクションを実行できるところも魅力の一つです。電話だけやるのではなく、通常業務以外でやりがいを見いだせるような取り組みを柔軟にやらせてくれる会社です。
もちろん、やる気があって目標を達成していれば、というのが前提ですけど!
ハイパフォーマーになりたい!ではなく、ハイパフォーマーを何人も作る、仕組み作り
田口
インサイドセールス組織の課題を解決したいと仰ってましたが、思うように解決できましたか?
小池
いや、「まだまだ伸びしろがあるな」と思っていて。目の前に落ちているボール、課題感がクリアになっていない状態のまま、異動するのが当時は嫌でした。ちゃんと仕組みが運用される状態にしてから、次に新しいことに挑戦したいと思っていたんです。
田口
ご自身がインサイドセールスの業務を極めることよりも、組織を強くすることに目が向いていたんですね。
小池
ハイパフォーマーになりたい、とかっていうのはあんまりなくて。分かりやすく例えると、「大谷翔平になりたい!」って言って頑張っても、一人が大谷翔平に近づくことしかできないけれど、大谷翔平のようなハイパフォーマーをたくさん育成できれば、大きなインパクトを生み出せるじゃないですか。ワクワクする。
自分がハイパフォーマーになるというよりかは、ハイパフォーマーになれる人をいっぱい作って、その仕組みで根底から組織を良くしたい。それが、自分の軸です。それは今の働き方においても一緒です。ずっと思っていることですね。
田口
今はインサイドセールスだけじゃなくて、フィールドセールスの中でも大谷翔平のようなハイパフォーマーを育てているって事ですよね?
小池
そうそう。面と向かってハイパフォーマーを育てるのではなくて、新しく入って来た人を将来のハイパフォーマーにできる環境や仕組みを構築することに向き合っています。でも、入社当初はいっぱいいっぱいでした。業界未経験でしたしね。こういうことを考えられるようになったのは、半年過ぎたくらいからでした。当時はまだまだで、インサイドセールスとして何ができるかというステージでしたけれども。
その考え方を持てたことによって、どの部門にいても、同じ軸を持ち続けて今がある。だからこそ、事業部全体の戦略っていう目線で捉えられるようになったのかなって、自分なりに分析しているところです。
小さいことでもいい。通常業務以外にやりがいを見いだして
田口
現役のインサイドセールスの方たちへ、メッセージをお願いします!
小池
仕事においてやりがいを感じるときって、自分なりに頭を使って何かを準備して、課題が解消したとか、成功したみたいな体験をした時ですよね。でも実際与えられた目標がある以上、どうしてもそういうことを考える余裕がなくて、キャパシティーいっぱいに電話などの通常業務をやり続けて、ようやく日々の数字が達成できるのが現実だと思うんです。
そうなるとどうしても苦しいし、このインタビューでお話ししてきた「チームとして自分が何できるか」とか「組織において何ができるか」とかって人それぞれスキルによって差がありますよね。だから、別に小さいことでもいいんですよ。なんでもいいので、自分自身で気づいて、自分の通常業務以外の、組織に向けて何かしらやっていくという目線を持つと、かなり気は楽になるし、やりがいも出てくるんじゃないかなと思います。
決められた目標の達成をより楽にするために、何かできることないかなという考えを、もっとみんな持った方がいいです。それは別にマネジャーだけの仕事じゃない。現場で頑張っている皆さんだからこそわかることがあって、その視点でみんなに向き合えばさらに強い組織になるし、自己成長もかなり加速するんだろうなと思っています。
とりあえず、「自分だけじゃなくてチームのため、組織のためにプラスアルファの何かをやろう」という視点で今の業務に向き合うっていうことが重要なんじゃないかなと思います。モチベーションを担保する意味でも。
さいごに
音声を丸ごと配信したいくらい、熱量のあるインタビューでした。
インサイドセールスとして目標を追っている以上、時にはうまくいかないこともあります。
「かけてもかけても、電話が繋がらない」
「お客様と通話できたけど、アポイントを頂くことはできなかった」
不安と焦りが大きくなっていく経験を、インサイドセールスを経験した方なら共感いただけるのではないでしょうか。私も通常業務プラスアルファの取り組みができるのは、圧倒的な成果を出している人だけだろうと考えて、閉じこもりがちだった時期があります。
くしくも、私はこのインタビューシリーズを始めたいという思いからnote編集部に加わったのですが、以前よりも明らかに通常業務へのモチベーションが上がったと感じています。インサイドセールスとして働いている全ての方の心に響くインタビューを連載予定です。
次回の更新もお楽しみに。またお会いしましょう!