壮絶なビジネスバトル 映画「エジソンズ・ゲーム」 #348
「明るいっ!!!」
現代から幕末へタイムスリップした医師・仁の依頼を受けて、電球を作った田中久重は、小さな電球が周囲を明るくする様子を見て驚きます。マンガ『JIN-仁-』の一場面でした。
昨日、6月21日は夏至。一年のうちで一番「昼」の時間が長くなる日で、電気を消して過ごす「キャンドルナイト」などのイベントも行われました。
電気がなければこうしてパソコンを使うこともできないわけですが、私の中でこうした便利な技術を作った人はエジソンだと思っていました。
だって、
「わたしは失敗したことがない。たんに、うまくいかないだろう1万の方法を見つけただけだ」
「天才とは、1%のひらめきと99%の努力である」
なんて言葉を残した人ですよ。「発明王・エジソン」すごい!くらいの認識しかない。
でも、夏至の日に観に行った映画「エジソンズ・ゲーム」は、「いかにしてエジソンは負けたのか」を描いた映画でした。
<あらすじ>
発明王エジソンとカリスマ実業家ジョージ・ウェスティングハウスは、電気の送電方式をめぐって対立。自分の発明が盗まれたと訴えるエジソンは、ウェスティングハウスの進める送電方式は危険だと、ネガティブキャンペーンを開始し……。
およそ「電気」についての基礎知識のないわたし。「エジソン? 発明王!」程度の知識では、まったく話についていけない。笑
わたしの勘違いも判明しました。
「白熱灯」を発明したのがエジソンだと思っていたのですが、白熱灯自体はイギリス人のジョセフ・スワンが発明したのだそう。ただ、寿命が短いという欠点があって、これを克服するべく6000種類のフィラメントを試して「持続時間」を伸ばしたのがエジソンだったんですね。
そこを、トム・ホランド演じる秘書に指摘されていました。赤いスーツの代わりにもみ上げを伸ばしたホランド。ライバル社からは「12歳の子」と嫌みを言われてしまいます。がんばれ、ホランド。
といった様子なので、この映画は公式サイトなどで予習してから行くことをおすすめします。
貧弱な頭で感じ取れたことは。
・発明王の猜疑心と孤独
・実業家の野心と変わり身の早さ
・人々の生活をよくするというテーゼに対するアプローチ
といったことでしょうか。自分のアイディアに固執して、追い詰められていくエジソン。「人を傷つける道具には使わない」ことをモットーにしているため、大統領からの依頼もむげに断るほどです。
なのに、ウェスティングハウスが進める「交流方式」の送電方法を貶める実験を公開し、「電気椅子」による処刑に手を貸してしまう。
一方のウェスティングハウスは、「人々の生活をよくする」という目標のためなら、気に入らない相手とも手を組もうという実業家です。そこに投資家のJPモルガン、もう一人の天才・テスラが絡んできて、という展開です。
シカゴ万博でテスラが手にしている光る棒は、彼が発明した「蛍光灯」ですかね。
演じているのはニコラス・ホルト。「マッドマックス 怒りのデス・ロード」で白塗りの兄ちゃんだったイケメンです。
天才と実業家。アイディアと事業化。ビジネスを育てるために必要なものはなんなのか。壮絶なビジネスバトルが繰り広げられる映画です。
邦題が「エジソンズ・ゲーム」なので、エジソンを中心に話が進む、「エジソンすごい!」という物語だと思っていると、大きく裏切られます。原題は「The Current War(電流戦争)」。自分が普段なにも考えずに使っている「電気」に、こんな歴史があったなんて。
夏至の夜。映画館からの帰り道は、19時を過ぎてもうっすら明るい。「夜を葬る」と宣言したエジソンの生き方に思いをはせて、あらためて「電気」のありがたさを感じました。
(※画像はIMDbより)
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