アイリッシュマン

映画「アイリッシュマン」 #174

劇場で観た“Netflixオリジナル映画”の良作。今日は巨匠マーティン・スコセッシとロバート・デ・ニーロが9度目のタッグを組んだ映画「アイリッシュマン」をご紹介します。

この映画、上映時間がなんと209分もあります。3時間半ですよ。家で観たらラストまでたどり着けないかもしれないという気がして、これも劇場で観ました。笑

<あらすじ>
老人ホームで暮らすフランク・シーランは、昔トラック運転手をしていた時代のことを語り始めます。肉の横流しをして逮捕されても口を割らなかったことを見込まれ、伝説的マフィアのラッセル・バッファリーノを紹介されます。より大きな稼ぎを得られることから、ラッセルの依頼を受けるようになるフランク。それはラッセルにとって邪魔になった人物の殺害でした。全米トラック運転組合の委員長ジミー・ホッファにも紹介され、懇意に。しかしジミーの運営方針が組織と対立することになり……。

現映画界で最も有名で、最も実力があって、最も高齢の監督と俳優が集合したんじゃないかと思われるこの映画。監督とメインキャストの平均年齢は77歳です!

マーティン・スコセッシ監督:1942年11月17日(77歳)
ロバート・デ・ニーロ:1943年8月17日(76歳)
アル・パチーノ:1940年4月25日(79歳)
ジョー・ペシ:1943年2月9日(76歳)

ロバート・デ・ニーロが一番若いんだ、というのはひとつの発見ですね。映画の中でパチーノ演じるホッファの暴走をたしなめる、好好爺然とした姿が印象的でした。めっちゃチャーミング!

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裏社会を生きた無法者たちの半生といった点でも、マフィアの掟といった点でも、じいさまたちの濃密な人間関係が描かれているといった点でも、ずっしりとしていて満足感のある、映画らしい映画です。

第2次世界大戦後のアメリカを、ひとりの殺し屋の目を通して描こうとすると、一番の難関は演じる俳優の年齢になりますよね。以前なら青年時代は別の俳優が演じたり、若い俳優に老けメイクを施したりしていました。

たとえばクリント・イーストウッド監督の「J・エドガー」では、レオナルド・ディカプリオがFBI初代長官のジョン・エドガー・フーバーの20代から70代を演じています。

この時、ディカプリオは、年齢に応じて白髪のヘアピースをしたり、鼻孔用増強剤で鼻の形を歪めるなど、張り切って特殊メイクをしたそうです。でも顔の筋肉が動かないため、観ていて違和感を持ってしまう。これは“演じる”上ではマイナスなんではと感じました。

ところが「アイリッシュマン」で使われたのは、“De-Aging Process”という俳優をCGで若返らせる特殊効果です。

おかげでフランクはずっとロバート・デ・ニーロのまま。ジミーもずっとアル・パチーノのまま。しかも顔の上に何かをのせているわけではないので、演技も自然ですし、年代が行ったり来たりすることで起きる「この人誰だっけ?」がなくなりました。

この技術が進化すれば、高齢の俳優ももっと幅の広い役ができるのかも、と思いましたが、やっぱり問題はあるようで……。

アル・パチーノがテレビに向かって叫んでいるシーンで、スコセッシ監督から注文がついたそうです。

「アル! 演技は全て良いんだが、ひとつ重要なことがある。椅子を立つ際、あなたは“49歳の設定”でいなければいけない」

79歳のおじいちゃんに、俊敏に動くようお願いしたのだとか。笑

映画は、練りに練られた脚本と俳優の確かな演技が基本であることが感じられますよ。

※画像はIMDbより

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