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ついに人間が出てきた

自分の備忘録のために書く出産レポート。

【38w5d】2023/12/11 おしるし(茶色)
【39w3d】2023/12/16 おしるし(鮮血)
このあたりの夜から前駆陣痛が始まる。陣痛アプリでカウント。鮮血にビビり朝方に産院へ電話。まだっぽいのでそのままカウントしつつ待機と言われる。

【39w4d】2023/12/17 破水の疑い
昼間に夫とピクニックへ。2人で過ごすのも最後かなと思いつつ色んな話をする。今となっては本当に最後の2人の日だった。夫よ、連れ出してくれてありがとう。
夜にまた前駆陣痛が始まる。水のようなものが出ている気がしてまた朝方に産院へ電話。破水かどうかは検査が必要なので、入院準備をしてすぐに来るように言われる。朝4時ごろ。夫の運転で病院へ。
結果的には破水ではなかったが、モニターの数値を見たところ、前駆陣痛のタイミングでの胎児の心拍が下がり気味なのが心配なのでそのまま入院となる。
昼間に自然陣痛が来なければ次の日の朝に陣痛促進剤を使って産む流れに。ただ、その日は緩い痛みだけで本陣痛は来ず。

【39w5d】2023/12/18 出産当日
0時から5時にかけて強めの前駆陣痛が来るがカウントしつつ耐える。朝、限界を迎えてナースコール。その日に促進剤投与の予定だったので、少し早いが準備することに。出産着に着替えて分娩台へ。
点滴から促進剤を投与。なんと1ml入れただけで激痛がはしり始める。モニターの数値もぐわんぐわん動く。どうにか呼吸で乗り切ろうと息を吐きまくる。鬼滅の刃を思い出す。朦朧とする中、呼吸の使い手はこういうことなのかと思ったりする。
数値の異常さと私の限界状態を見て助産師さんたちが焦り始める。モニターのエラー音と共に胎児の心拍が下がり始めたところで分娩室が騒然となり、私に酸素マスクが付けられる。

医師が到着。おそらく海外の先生で、少しカタコトだがテキパキした女医さんだった。ただただ痛い。とてつもなく痛い。色んな体勢にさせられて胎児の心拍を観察するがどれもだめ。医師が「帝王切開の準備!」と叫び、部屋の空気が更にピリつく。
痛みで震える中、帝王切開や麻酔の同意書類の説明が行われる。(もうなんでもいいから早く!)と思うが唸り声しか出ない。サインしないと進めないらしく、ミミズのような文字で署名をする。
光の速さで手術着に替えられ、分娩台からストレッチャーへ。ドラマでよく見る「1、2、3!」で体を移動させられる。暖かくて暖色系だった分娩室から高速でストレッチャーが移動し、冷たくて青白い手術室へ。なぜ色のイメージを変えているのだろう。
ここで麻酔科医が到着。ずんぐりむっくりの優しそうなおじさん先生だった。声が低くて少し安心する。冷たい部屋で全裸になり、よく見る緑か青の布をかぶせられた。おそらく腹部だけ穴が空いている。めまぐるしく進む状況に震えと涙が止まらない。
横向きにされて背中に麻酔を打つ。以前の説明で、脊髄の微妙な位置に打つと聞いて怯えていたが、その時はもうそれどころではなく、注射の痛みも感じなかった(というか陣痛が痛すぎてわからなかった)。
おじさん先生が冷たいコットンのようなものを体の何箇所かに付けて「ここは冷たい?」「ここはどう?」と聞いてくれる。肩や胸あたりは冷たいが、足やお腹は何かが当たっている感触しかなかった。
「ちゃんと麻酔が効いてるよ。大丈夫。」という言葉に、これが麻酔かと驚いた。

そこからはもう何が何だか分からないまま進んでいった。
首から下は見えないように布のついたてが立てられ、私は青白い天井しか見えなかった。よくドラマで見るような風景そのまんま(でかい照明の周りに手術着を着た数人の姿がある)で、「始めます」という声で全員が動き出す。私は怖くて怖くてただ泣いて震えていた。こんなに怖かったことは人生で初めてだった。

無痛分娩希望のはずだった。まさか陣痛を経た緊急帝王切開になるとは。しかし今はそれどころではない。頭の近くにはおじさん先生が居て「大丈夫大丈夫。ぐいぐい引っ張られる感覚があって気持ち悪いけど、痛みは無いからね」と励ましてくれる。
お腹付近が押されたり引っ張られたりする鈍い感覚だけある。おそらく内臓を切られて動かされている。見ていないのにその想像だけで恐ろしくて泣いた。私の震えと涙に気づいたおじさん先生が話しかけてくれる。「もう名前は決まっているの?」「元気そうだよ、楽しみだね」私は恐怖を紛らわそうと、その会話に集中して出来るだけ丁寧に受け答えをした。

体感10分ほど内臓を動かされた後、「出るよー!」という女医さんの声が聞こえた。今までで1番何かを引っ張られている。体が浮き上がりそうになる。「頭が出たよ!」の後、看護師さんたちが一斉に私の体をぐっと押し、多分何かが出た。何も見えないので全く状況が分からない。
素材で聞くような模範的な赤子の鳴き声がした。産まれた。
子が無事だという事実と、手術の終わりが見えてきた安堵で泣けてくる。終わった、やっと終わった。本当に産まれた。怖かった。

後の処置をされているであろう時に、産まれたばかりの生き物を持った助産師さんが頭のところまで来てくれた。正直感動というよりは「赤ちゃんだ」という感想だった気がする。私は「よかった、よかった」と呟いて、小さい手を少しだけ触った。いっぱいいっぱいでもうそれ以上のことは出来なかった。


夫の方にも連絡が入っていたらしい。処置を終えて運ばれる私を覗き込む姿が見えた。その瞬間に「生きててよかった」とやっと思えた。また会えて良かった。


2023年12月18日 午前10時44分
体重:3646g
身長:50.9cm
週数:39週5日

我が子よ、お疲れ様。
ようこそ地球へ。

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