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湯船と豆腐

メンタルが異常にぐらぐらする。
これが妊婦メンタルなのだろうか。豆腐のようである。
「体を冷やさないために湯船に浸かれ」との記載をよく見るので、基本シャワーの我が家も2日1回は湯を張るようになった。
ただこの湯船の時間が豆腐にはキツい。
色んな不安が体を巡り、結局泣けてきてしまう。
準備のこと、お金のこと、痛みのこと、体調のこと、仕事のこと、教育のこと、今後に待ち構えている多種多様な不安要素が浴槽に溜まっていく。
私の体と思考が正常に動く期間はあと1ヶ月もない。時間がない。
かつ、現状これを捌いていくのは暗黙の了解で私の役目となっている。
夫は忙しい。既に産休に入っている私にとって「仕事が忙しい」と言われてしまえばもうそれ以上どうしようもない。素晴らしい、仕方のないことだ。
ただ、私1人に何もかもの責任がかかっているようで、ずんずんと視界が重くなっていく。誰か助けてくれと毎日思う。

豆腐メンタルに勢いがつき、しゃくり上げて泣くレベルになった時は「酸素が届いてなくて腹圧がかかって苦しくなっていたらどうしよう」と更に不安になり、深呼吸をしながら泣く。
どうしたって私の一挙一動で赤子の状況が左右されてしまう。
深呼吸をして胎動を確認しながら泣くのはなんだか滑稽で情けなくて、それでまた悲しくなってくる。

今読むべきではないと頭では分かっていながら、どうしても展開が気になって、Twitterで話題になっている妊娠に関する漫画を読んでしまった。
臨月にも関わらず胎動が無くなり、死産になってしまう話。
読み終わって恐ろしくなり、お腹をポンポンと叩いた。いつも話かけたりはしないのだが、この時だけは「おーい」と聞いた。
「寝てたのに」と言わんばかりに面倒臭そうな「ウニョ」が返ってくる。
よかった、ああよかった動いた。
これ以降、胎動が少ないとかなり不安になるようになった。
常に健康でいなければ。せめてあと1ヶ月は。


「たまひよ」のアプリを活用しており、その中での「ルーム」という機能を重宝している。同時期に出産予定(私の場合は2023年12月ルーム)の全国の妊婦たちが集い、不安や進捗を報告して励まし合っているSNSのような空間だ。中にはパートナーへの愚痴などもあるため、最初一緒に見ていた夫にとっては辛かったようで、今は見るのをやめてしまったらしい。まあ仕方ない。どちらの気持ちも分かる。
ただ、妊娠初期の地獄から数ヶ月間、辛い時も嬉しい時も共有し合ってきた仲間たちの近況を知るのは本当に心強い。ここまでくると異常な一体感が出てきている気がする。
そのルームでも最近、出産報告が増えてきた。
切迫早産・多胎児出産・計画無痛分娩・緊急帝王切開などの場合は予定日より早めの出産となるからだ。赤子の写真が流れてくる度に気持ちが引き締まり、「ああこの人も無事に産めたのか、よかった」とホッとする。
「今から帝王切開に行ってきます!」
「破水しました!病院に行ってきます」
「陣痛がきているかも…カウントします」
「胎動が少なくて病院に来たら急遽産むことになりました」
などの緊迫した投稿もどんどん増えてきて、予定日まで1ヶ月ある自分も例外ではないなと感じる。
あと何日、あと何日…と数字を見る日々も、予定日計算だけでいうと残り32回となった。10日以上早まる人もいれば遅れる人もいる。毎日が怖い。

最近よく夢を見る。眠りが浅いからだろう。
昨日の夢が妙にリアルで恐ろしかった。
家に居ると破水してしまい、もう赤子の頭が股から見えている。
慌てて病院に行くと「あなたはまだ出産の覚悟ができていないから産めない、この部屋で待ちなさい」と謎の部屋に通される。
そこには大勢の妊婦が待機しており、自分で準備ができたと感じた人から「私、いけます!」と挙手して抜けていくシステムだった。

起きて夢だと分かってからも恐ろしくなった。
確かに私はまだ覚悟がない…気がする。
何かの深層心理だろうか。じゃあどうすれば覚悟ができるのだろうか。

他にも、
「発表会当日に舞台に上がっても何もできない夢」
「練習不足で試合に負ける夢」「テストで何も分からない夢」
とにかく本番で焦る展開が多い。起きてどっと疲れる。


早く走り回って好きなものを食べられる健康な体が欲しい。
そりゃあこんな長い間抑圧されて過ごせば豆腐にもなるだろうと思う。


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