小説 ファイナル M1
漫才が好きすぎて、漫才で頂点を決めるM1のお話を作ってしまいました。何も知らん小僧ですがお願いします。
俺は俺の面白いと思ったことで戦う。そうやってこの世界を生きてきた。学生時代別にクラスで目立つ方ではなかった。友達を笑わせるくらいで、キラキラ光る一軍では無かった。別にクラスでうけても意味がない、クラスで目立っている人がトップで走る芸人になることは多くない、と思っていた。先生や友達からは、養成所に行ってもすぐ辞めると言われ、入っても講師に華がないと言われ、目もむけてくれない。なぜこの世は、自分の夢を応援してくれず、勝手に才能がないと決めつけるのだろうか。最後まで突き詰めてやれれば、自分の中で整理がつくだろう。
数々のオーディションを受けてきて、審査員の人にも貶され、その度に相方にも 「評価されなきゃ意味がない。尖っていてもこの世の中じゃ生きていけない。この世界にあわせていかないなら解散だ」と言われ、自分を貫く俺に愛想をつき、皆辞めていく。相手も相手で売れなければ意味がないし、その人自身の人生もある。それはコンビでやる上で仕方のないことだ。笑いの価値観の差もある。しかし、コンビでやっていくにはある程度、お互いの面白いと思うことを合わせていかなければならないのだろう。
そう思っていたときに、今の相方と出会った。最初は、相方はお笑いに関して意欲的ではないし、こちらが主導権を握って自分のやりたいネタを押しきれそうだと思い、組んだ。しかし、そいつは目立ちたがらないが、話せば話すほど面白いやつだと思った。こいつの奥にある面白さを活かさない手はない、俺の人生をこいつに使いたい。今まで自分だけ優先で、自分が前に出ていけば良かった。そんな俺が相方に尽くそうと思えたのは芸人人生で初めてだった。俺は今まで自己中心的だったと気づくことができた。相方には感謝している。
そして、今に至る。十五年間同じ相方と漫才だけして過ごしてきた。そして今年はラストイヤーで最後の戦い、自分の漫才人生の集大成。漫才日本一を決めるM1グランプリ5回目の準決勝、俺たちの出番が今始まる。
『どうもーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーどうもありがとうございました。』
俺たちの出番は終わった。悪くはなかった。最後、最後の戦い。勝ちたい。どうしてもあの華やかな舞台に立ちたい。あの舞台に立てるだけでいい。どうかどうか。ギリギリで瀬戸際のラインだろう。後は楽屋で他の人のネタでも見て、結果を待つのみ。どうか。どうか・・・。
審査員の人が進出者の名前を挙げていく。
落ちた・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
俺たちのコンビ名が呼ばれることはなかった。俺たちのコンビ名を呼ばれることを何度期待したことか。
あぁ、あぁ。最後に夢の舞台に出られると信じていたのに。分かっていたけど、信じても叶はないこともあるのか。この世は無情だ。一生懸命やっても無理だったのか。一度はあの舞台に立ちたかった。その思いでいっぱいだ。そのために今までやってきたのに。その思いで、この世界に入ってきたのに。終わりか。やっぱり、俺には才能がなかったのか。
自分の逃げていたときのことがたくさん脳裏に浮かびだしてくる。なぜ、なんで、どうして、あの時にああしてこなかったのだろう。あの時にこうしてこなかったのか。今後悔してももう遅いのに多くの逃げを思い出す。後一歩、それが足りなかった。
M1が俺の人生を変えてくれた。生きがいを与えてくれた。夢を見させてくれた。世界を変えてくれた。自分の未来をワクワクさせるものに変えてくれた。M1がなかったら今の自分はどうなっていたのだろう。これほど情熱を持って取り組むことができたのは初めてだ。
残るは敗者復活のみ。これは視聴者投票。人気のあるコンビが勝ち上がる。俺たちは多分無理だろう。
最後には一番尖っていて、一番好きなネタでこの十五年間に終止符を打つ。
終わり
学校の文章書く授業で「私の異論」というテーマでみんな小論文みたいなものを書くんですけど、異論と言われたときに面白いことを貫く芸人を思い浮かんで、それなら異論であるし、小説描こうかなと思いました。とりあえず人と違うことがしたかったです。めちゃめちゃ痛い気もしますが、大丈夫です。
良かったらハートください。続きを書くかもしれません。