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映画感想戦『ラストマイル』

何か変わったかと思えば、根本的には何も変わらないのかも。これは静かな諦念と抵抗の話。

⚠️ネタバレ有り⚠️

好きなとこしか書かないし考察も何もないです笑

み、見ちゃったァ〜〜!!!
ドラマ『MIU404』『アンナチュラル』とのシェアード・ユニバース映画と聞いていてもたってもいられなくなってから早何ヶ月?忘れましたが本日2回目を鑑賞後、この本文を書いています。面白かったァ〜〜〜〜。

流石の野木脚本というべきか、素晴らしい伏線回収の数々でしたね。のっけからクライマックス。一番初めの、箱を開けるその手に違和感があったんですが、2回目視聴中よく見るとちゃんと女性の手で…結婚指輪映ってて…もう答えは暗示されてたんですね!と興奮してました。
先述した通りドラマの混合ゆえに各キャラクターも登場するんですが、その登場シーンもストーリーに違和感を与えず実に自然な入りで本当に良かった!!本筋はあくまでラストマイルにあり、少しの要素として徹底しつつも、重要な情報を提示する方法として組み込まれた世界観の混ぜ方、鮮やかでした〜〜!!手ェ叩いて喜びました本当に最高。

さて、本編の感想です。
エンドロール後、ほっと息をつきながら思ったのは「働いてる人みんなエラーーーい!!!」という大爆発感情。
日本の企業形態とか働き方からして、賃上げ交渉やストライキというのはほぼほぼ無いんじゃないかしらと思うんです。全然普通だよ、と言われるかもしれませんが、少なくとも私の周囲では聞いたことないです。
「働いている」=「働かせてもらっている」みたいな意識があるような。
や、もちろん雇われている以上その意識は前提としてあって当然かも。しかしそれを謙虚さとか真面目さと称するのは聞こえは良いだけ、「搾取」と同じじゃない?と思っちゃいました。
佐野パパのやっちゃんの話。「弁当10分、1日200件の宅配」日本人…特に昭和の24時間働けますか的なパワーみの強い話です。勤勉さは美徳でしょうけども、私は苦い気持ちになりました。佐野Jr.の言ったように、そんなに身を粉にして働いても誰も大切にしてくれないし、給料据え置きなんだよ、と泣きたくなります。精神論だけで元気に働けると思うな!!
私の働いてるとこも、もっとお給料上げてくんないかな〜笑

デリファスの東京支社の五十嵐、アメリカ本社のサラ。搾取する側と見せかけて搾取される側でしょうね。売り上げだとか稼働率だとか責任だとか…会社という組織に縛られて優先するものが分からなくなるのが可哀想だと思いました。
五十嵐は部下の山﨑が飛び降りたのを思い出して病む夜もあったでしょうし、サラもアジア統括の責任感やイタズラメールだと流してしまった後悔に苛まれることがあったかもしれません。物語においてヘイトが向きがちな二人ですが、でも完全な悪人ではないんですよね。

悪人と言えば爆弾魔の犯人たる筧まりか、爆弾製造のおじさん(名前わかんないですごめんなさい)の二人。筧は恋人の自殺未遂の原因が知りたかったし、やり場のない怒りや悲しみを持て余してしまったが故の犯行で同情を禁じ得ず。爆弾製造のおじさんのお金の使い道が借金返済と母親の葬儀代と、何もかも諦めてるような態度に心寄り添いたくなります。あのおじさん、言葉尻が可愛いですよね、好き。
野木脚本の良いところは勧善懲悪でないところです。
生まれてきてから死ぬまでずっと悪巧みをして、人を騙したり殺したり、悪辣非道な振る舞いがデフォなんて、漫画以外じゃほぼないでしょう。この人間味を丁寧に丁寧に書き出して、誰かには好かれて誰かには嫌われる、ちょうど良いキャラクターを作るのが上手すぎるんですよね…好きだ…!!

デリファスの派遣社員は日に700人前後、ブラックフライデーの繁忙期には800人。対する社員はわずか9人。前半に言われたこの情報だけでも「ワァ人件費削れてて草ァ」と思いましたし、配送もギリギリを買い叩き、シルバー雇用の運送会社も利用し…。その分買い物めちゃくちゃ安くできるんだろうな〜と思いながら、実質メリットってそこだけじゃない?
「Customer Centric、お客様のために」
マジックワードを多用するエレナ。本質的とは言い難いけれど、その言葉には納得してしまいました。彼らを忙しなくしてしまうのは、彼らを追い詰めてしまうのは、山﨑佑を飛び降りさせたのは。
「商品を安く買いたいお客様」だったし、「利便性を追求する社会」だったし、「利益至上の会社」だったんじゃないかな。
通販を使ってると、どうしても働いている人々の背景を見落としがちですよね。指先一つで商品をポンとカートに入れてお金を払えば終わり!商品を作る人々、売る人々、届ける人々、それぞれをサポートして円滑化させる人々、サイト作る人々、広告打つ人々、なんとかかんとか。買って終わりじゃない、数多働く人々のおかげで私は今日も生きてるし、社会の一部にいるし、お買い物してる。働いてる人みんなエラいし、働いているので私もエラい。

ラストで佐野親子が頑張って爆弾処理()して、少女たちが無事に誕生日プレゼントを渡せたところで爽やかな幕引き。
けれども事件の結果として死傷者は多数、賃金引き上げも正直微々たるもの。エレナは会社を辞めて、センター長を引き継いだ孔もこれからの進退が良いと確定したわけじゃない。通販をする人が居なくなるわけじゃないし、これからも山﨑や筧のような人はきっといくらでも出てくる。完全なハッピーエンドではない…。根本的な解決はされてないですが、現実的に考えれば往々としてある終わり方。だが、そこがいい…!!創作物なんだから都合よく終われよと思わないでもないですが、映画として、物語として、めちゃくちゃ面白かったです…!!

脈絡のない感動ポイント。
『MIU404』の綾野剛が見たすぎて映画館に足を運んだ節はあるんですが、テーレレーレテーレーレー(?)のBGMが流れた瞬間のあの盛り上がりとテンションの昂り、今後一生忘れません。伊吹の「拳銃出してくスタイル?」がまた聞けるとは思いませんでしたし、対する志摩の扱い慣れた感と「(手袋)持ってきた?」の問いかけに心中大騒ぎ。この興奮はドラマ視聴勢しか分からない尊み由来。
刈谷刑事がロジスティクスなかなか言えなくて言えた瞬間ガッツポーズするところで一緒にガッツポーズしました。かわいいね…。
というか聞いてください。ドラマ第3話で根強い印象を残した勝俣くんが登場し、その活躍ぶりに目を見張りました。き、機捜って言った…!?今初動捜査って言った…!?あの勝俣くんが立派に成長して警察官になっただけでも感涙なのに、404の隊員にもなっちゃってエラいね…!!
『アンナチュラル』ドラマ第7話にて迫真の配信を行った白井くんだって…!バイク便配送業者で…!頑張っててエラい…!社会に貢献してエラい…!!二人とも(中の人)、私と同じ年代のはずなんですが保護者目線で見てしまって感動しっぱなしでした。
中堂さんがクソって言わないように頑張ってたのも愛しかったし、歯形のデータ化実装しててそういや所長言ってたね!となった。両ドラマ未視聴でも映画は十分に面白いのはもちろんですが、やはりこうして要所要所にポンとネタを入れられると突然の供給過多に本編から振り落とされそうになったり脳内が忙しくなってしまいますね。嬉しいね。

そしてこれだけはいっぱい言いたい。
一番好きなのは阿部サダヲ演じる八木さんです!!かっこいい!!!誰よりも輝いてたよ!!!
上司と現場の板挟み、社員のフォロー、取引先からの無茶苦茶な要求、クレーム対応、あっちへこっちへマジでめちゃくちゃ忙しいところを頑張っててマジでエラいよ八木さん!!!
社長に直訴するシーンなんかもう泣きながら見てました。現場からも社員からも好感度爆上がりだと思うよ…!かっこいいよ八木さん…!早く妻と子供に連絡して…!美味しいものいっぱい食べな…!!
もともと好きな役者さんだったんですが、綾野剛目当ての私を無事阿部サダヲファンに昇華(?)させてくれました。本当に良かった…!!

ラストマイルとは「消費者が商品を手にするまでの最後の配送区間」という意味だそうです。(Google調べ笑)
その意味を調べた時、簡潔で響きも良いし、オシャレなタイトルつけるなーと思ってたんですが、本編ラストの佐野親子の全力ダッシュ・佐野Jr.の必死の救助シーンで「ア!ここかラストマイル!!お客様の手に渡る本当に最後の配送!!やばすぎ!!」と思いました。
このタイトルはデリファスの人も警察も配送業者もみんなが精一杯頑張って、血反吐吐きそうなくらい必死に、安全に届けるためにももちろん意味はついてくるでしょうけども、個人的には佐野親子の活躍に一番タイトル付随してると思う。
わたるくんさ…2回も爆発目の前で起こって大変だったね…生きててえらいよ……

社会問題がエンタメと化す現実に絶望は禁じ得ませんが、明日からもまた働かなくちゃいけないし、生きていかなくちゃいけない。
みんながんばろうね〜!!アハ
終わり。

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