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【家族のこと】自殺した父との不意の再会
小学生の時に司書の先生が紹介してくれた本を読みたいが、名前を思い出せない。ちょっと詩的な内容で、小さい女の子が主人公の話。
検索をかけてみたが、それらしきものは見当たらない。
ネットの質問サイトを初めて使ってみた。ログインすると、過去に60件の質問履歴。そこに父はいた。約15年ぶりの再会。新発見。
質問内容は多様だった。
自分の思いつきに共感を求めるもの。趣味の魚釣りについて。目的地への効率的な行き方について。ぶわわわわ、と記憶がよみがえる。
そうだ、当時はGoogleマップもなかったんだ。
きっとこれは、私の大学入試の同行のための質問だろう。初めての場所だったから。
一緒に、電車で行ったんだ。なぜか宿泊先を飲み屋街の真ん中に取ってしまって、入試日前日だというのに父はポン引きに誘われていた。
何とか引きはがしたが、ベビースターラーメンとビールは買っていた。そして飲んで食べて先に寝てた。
入試に手ごたえがなく落ち込む私に、父は普段通りのジャージ姿で「サービスエリアに寄ろう」と言ってくれた。
文章だが、父の話し方と表現が似ている。こんなとぼけた話し方だった。そうだった、そうだった。
父はこんなことを考えて生活していたのか。どれも取り留めもない質問。でも仕事関係のものも少し、あった。
不特定多数の場で業務内容を質問しているのは、職業人として疑問符が付くが、父も仕事をしていたんだなぁと思う。
自宅の自室兼事務所では、何をしているかよくわからなかった。デスクトップパソコンをカチカチやっているだけだったから。
悲しみより、人間の新しい一面を知る好奇心のほうが強かった。
最後の質問は死ぬ、その9か月前。私が第二志望で入学した大学への、車での行き方についてだった。
そのあと、年が明けて(もしくは大晦日に)父は自殺した。
死ぬ前日もパソコンの前に座って、年賀状の作り方がわからないとぼやいていた。
パソコンの前に座っていた父は、生きようと思っていたのだろう。遅れながらも新年のあいさつの賀状づくりに悩んでいたんだから。
こういった形で父親に再会するなんて思わなかった。
父が生きた痕跡は、まだ見つかっていないだけで、いろんなところにあるのだろう。
こうやってわたしが父についての文章を書くことも、「わたしの父」という人間の存在をどこかに残しておきたいからだ。
少し、父を語ることができた。
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