【私のこと】仕事に疲れたら、羽根がある二人が見えた
「余裕」という概念が全く消えてしまったある日、本当に突然ジャニーズにハマった。Kinki Kids。
新卒の会社で残業続き。
スーパーで割引の惣菜を買い、食べるというより消化する。何もかもあやふやな状態のまま日付を消費する毎日を続けていた。「余裕」が全く無い。誰にも弱音を吐けない。誰も助けてくれない。
そんな中、はっきり思い出せないが、夜中「僕の背中には羽根がある」の歌詞のフレーズを思いだし動画を観た。そこから始まった。
二人が、今の私より年下で、もちろん私以上に多忙だった頃、自分は思春期のただ中にいた。年代的には「ジャニーズを好きになる」通過儀礼の時期だ。でも、私はそうではなかった。周囲との体の違いやからかい。極端なくらい斜に構えて、世の中を敵対視していたから、「みんなが好きなもの=嫌い」という単純な思考で生きていた。
主題歌にもなっていたドラマ、「愛犬 ~ロシナンテの災難~」も、「動物もので感動させようと思ってるんでしょ」と心の中で毒づいて観ないでいたし、歌詞にも「人間に羽根なんてついてねーし」と難くせをつけていた。こうして文字にしてみたらあまりにも幼い。松本隆先生、本当に当時の私は単純でした。
十数年を経て、独り暮らしをして、仕事を始めた。色んな変化が押し寄せて孤立した心に、すさまじく響いた。
「二人に羽根、ついてるやん」と思った。
youtubeにニコニコ動画、Twitter。疲れて動けなかったのに、アドレナリンが止まらずあらゆる情報を吸収した。その時にはどんな現実も視野に入らなかった。動悸や不安感からも逃れられた。
疲れていたから逃避したいだけだったのかもしれないし、「ずっと一緒にいる」という2人の関係性に憧れたからかもしれない。家族で彼らの番組を観ていた幸せの記憶と結び付いているのかもしれない。
だが、最悪の状況を抜けて、余裕の出てきた今でも私はKinKi Kidsのファンでいる。さらに他のグループも応援している。
コンサートにずっと行きたい、という気持ちはリハビリのモチベーションになっているし、二人のファンとして恥ずかしくないように、と装うことの理由もできた。
きっかけは最悪だったが、今振り返ればあの日々があったから彼らに会えたのだ。そう思うと、本当にほんの少しだけ、砂を噛むような過去にも感謝できる。