感想

リリイ・シュシュのすべて (2001)岩井俊二

内容・構成・演出・音楽・キャスト、どれをとっても素晴らしい作品だった。


岩井俊二監督の最新作『キリエのうた』が公開される記念として、YouTubeで期間限定無料公開を行っていた。一定の層から絶大な人気を誇るリリイ・シュシュのすべて、勿論観た。鬱映画としてよく名前を挙げられている作品だったので、正直観るのは怖かったけど、この映画を観ることができて良かったと心からそう思った。無料公開を企画した方、岩井俊二監督、心からありがとう。

端的に言えば苦しい映画だったな。
なんでこうなっちゃったんだろう?どこで道を間違えたのか、いつに戻ればこの世界線を避けることができたかな?観終わったあとの脱力感が凄い。

キャスト陣は、今や中堅俳優(女優)に名を連ねている方ばかりだった。
市原隼人の少年時代、さすがに中島健人そっくりすぎる。可愛い。可愛くて余計に苦しくなったよ。

観る前は、主人公の、市原隼人演じる蓮見が壮絶ないじめを受けるのだと思っていた。しかし、蓋を開けてみると「加害者の言いなりになり、被害者を助けられず、ただただ傍観することしかできない」そういう主人公だった。ただの部外者・傍観者だったらよかったかもしれない。

加害者は忍成修吾演じる星野修介。蓮見と星野は同じクラスの同じ剣道部所属の友人だった。しかも割と結構仲良さげ。そんな星野は、夏休みまでは普通の中学生だったのに、新学期になった途端急にグレ始めた。仲が良かったからこそ、蓮見は星野と縁を切ることはなかった。また前の星野に戻るかもしれない、という期待があったんだろうね。ライブのチケットを渡してその場を離れたのも、同じリリイ好きなら、あの青猫なら、チケットを捨てるなんてことはしないという期待があったんじゃないかな。

そんな蓮見の淡い期待は、あっさりとふみにじられてしまったけど。


(これだから人は…。  人は分かり合えない生き物なのに…他人に期待なんてしちゃダメだよ❕)


何も行動を起こすことができなかった蓮見を見るのがしんどかった。友人たちが盗みを働き、同級生の蒼井優演じる津田詩織が売春を強要させられ、好きだった女の子伊藤歩演じる久野陽子も星野の仲間にレイプされたにもかかわらず、蓮見はただ、見ることしかできなかった。

中学生でこんな地獄味わうのきっつい。中学生なんてまだガキンチョでしょ😭
後半へ進むにつれて、目を背けたくなるようなシーンが続き…ァァ…。


いじめの被害者の苦しみとは違った、傍観者の苦しみってどれほどなんだろう。助けることができずに、ただ傍で見ているだけ。行動を起こせないことを不甲斐なく感じ、自分を責め続ける。

最後、蓮見は星野を殺すという行動を起こすんだけど、津田が自殺をしていなかったら…久野が坊主にならず売春を受け入れていたら……どうなっていたのかな。きっとこの地獄は卒業まで続いたのかな…卒業後も続いてたのかもしれない。殺すに至ったのはもちろん、これまでの恨みつらみが積み重なったのもあると思うけど、私は「行動」を起こした津田や久野に背中を押されたからじゃないかな。50/50。傍観者にしかなり得なかった蓮見が変われた瞬間だね。

続きはまたこんど

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